A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (823)
814話 はぐれた? いや逃げた
バルザードの一撃が効かないのであれば、殺虫剤ブレスか、愚者の一撃で仕留めるしかないが、空から降ってくる光の矢が厄介で近づく事が出来ない。
シルに『鉄壁の乙女』を使ってもらえばこの攻撃は防げるが、シルを抱えたままで素早いメタルスライムを捉えることは不可能だろう。
それなら……
「シル雷撃を頼む!」
「おまかせください。消えて無くなりなさい『神の雷撃』」
シルがメタルスライムに向けて雷撃を放ち、空から降ってきていた光の矢が消える。
やったか?
「マイロードまだです。まだ消滅していません」
「シルの雷撃でもダメなのか」
いくら速くても雷撃を躱すことはできなかったはず。ということはメタルスライムはシルの雷撃を耐え切ったということになる。
だが、敵の攻撃が止んだ今がチャンスだ。
俺は再びアサシンのスイッチを入れメタルスライムに迫り覚悟を決め攻撃態勢に入る。
『愚者の……』
メタルスライムに向けて必殺の一撃を放とうとモーションに入った瞬間眼前のメタルスライムが想像を超える速さでその場から消え去った。
「ベルリアどこだっ!」
「いえ、それがどこにもいません」
「いないはずないだろう」
「ご主人様、敵の気配が消え去りました」
「消え去ったってどういうことだ?l
「海斗、もしかして逃げたんじゃない?」
「えぇ…… 逃げたってモンスターだよ? 逃げるなんてことあるのか?
「私にもわからないけどいなくなったってそういうことじゃない? 消えてなくなったわけじゃないだろうし」
ミクの言う通り消えてなくなったわけじゃない。あの瞬間超速でその場から消えたのはわかった。
「多分ミクの言う通り逃げたんだろう。今までにないパターンだな」
「モンスターが逃げる事があるのですね。ダンジョンは奥深いのです」
納得はいかないが、そうなのだろう。あのメタルスライムは本当に俺たちの前から消え去ってしまったようだ。
それにしてもスライムのくせにかなり手強い相手だった。
ルシェの獄炎とシルの雷撃を受けて無傷。ベルリアと俺の攻撃も耐え、そして超速で逃げてしまった。
「マイロード、今度見つけたなら必ず仕留めてみせます」
「ああ、そうだな。次は速攻で全力の一撃を放つしかないかもな。このままいても仕方がないしそろそろ先に進もうか」
「海斗、ちょっと待て」
「なんだ? なにかあるのか?」
「お腹が空いた!」
「あぁ……」
メタルスライムを倒す事ができなかったので収穫はゼロ。
魔核の回収もなかったので忘れていたが、確かにルシェもスキルを使用していた。
「ご主人様、私もお腹が空きました」
確かにシルにもスキルを使わせた。
「もちろんわかってるよ」
俺はマジック腹巻きからスライムの魔核を取り出して二人へと渡す。
「マイロード、申し訳ありませんが私にもいただけないでしょうか?」
「あぁ、そうだな」
確かに今の戦闘で最もスキルを使用したのはベルリアだ。
俺は再度スライムの魔核を取り出してベルリアにも渡す。
今回は完全にマイナスになってしまったので、今度見つけたら絶対にしとめてやる。