A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (824)
815話 メタルスパイダー
メタルスライムの逃亡から昼食を挟んで、更に探索を進める。
モンスターが完全に逃げたのは、数年に及ぶ探索者生活でも多分初めての経験で面食らってしまったが、この階層は気を抜いて進める階層ではないので、昼食をとってから気を引き締め直した。
「ご主人様、敵モンスター五体です」
「五体か。多いな」
「大丈夫だって。わたしにまかせとけよ。もう逃したりはしないぞ」
「ああ、頼んだぞ。さすがに五体はルシェの力も借りなきゃ厳しい。期待してるからな」
「ふふっ、そんなに言われたら期待に応えないわけにはいかないだろ。うんやっぱりわたしの力が必要だな」
「シルも状況を見て頼んだぞ」
「おまかせください」
「マスター私は……」
「ティターニアはサポートを頼んだぞ」
「はい」
残念ながら、この階層ではティターニアにはサポートに回ってもらった方がいい。
ベルリアとあいりさんの三人で前方へと注意を払いながら進んで行く。
「マイロード、あのデカ物は私がもらってもよろしいですか?」
「ああ、頼んだぞ」
「海斗、私は一番手前のを相手にしよう」
「じゃあ俺は蜘蛛っぽいやつを!」
それぞれがターゲットを決め、走り出す。
残りの二体は後方のメンバーがどうにかしてくれるはずだ。
俺はナイトブリンガーの効果を発動し、大きなメタルスパイダーへと迫るが射程に入る前に感知され、その場から大きく跳ねて避けられた。
八本の太い脚がギシギシと音を立てながら瞬時に跳ねたが、高い。
俺は上空へと避けたメタルスパイダーに向けてバルザードの斬撃を放つが、そのタイミングでメタルスパイダーがこちらに向け糸のネットらしきものを放出してきた。
『ギイイイン』
斬撃がネットに当たり、硬質な金属音が響く。
「糸も金属なのか!」
バルザードの斬撃を受けてもメタルスパイダーの放ったネットは消えずにこちらに向かってくるのが見えた。
あのネットはヤバい。
捕まったらやられる。
俺は必死に足を動かし広がるネットから逃れるが、ネットが地に着いた途端再び硬質な金属音が響き渡る。
ネットと金属製の地面が擦れる音だ。
あのネットは硬質なワイヤーネットのようなもので捕らえるためというよりも、それ自体が完全に殺傷能力を持っているのがわかる。
ネットの攻撃を避け、上空のメタルスパイダーを視界に入れるが、今度は放出した糸にぶら下がり移動しているのが見える。
「海斗! フォローするわ! 『ライトニングスピア』」
ミクの放った雷の槍が上空の糸を断ち、メタルスパイダーはそのまま地表へと落下してきた。
ベルリアはトロールと思しき敵をスピードで押し、あいりさんも『斬鉄撃』で敵に斬りかかっているのが視界に入ってくる。
俺は地表へ落ちてきたメタルスパイダーへと意識を戻して集中する。
「くっそ〜、ちょこまか動くな! さっさと燃え尽きろ! 『破滅の獄炎』」