A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (825)
816話 メタルドッグの攻撃
俺の集中を乱すように俺の直ぐ横でルシェの獄炎が発動した。
「ルシェ! あぶないだろ!」
「あぶなくない! そのくらい避けれるだろ! そいつがチョロチョロと〜!」
どう考えてもあぶない。マント越しでも熱を感じる。
どうやらルシェは大型の犬のような相手に手を焼いているようだ。
ダメージは与えているようだが、獄炎で炙られる前に高速で移動してルシェの攻撃から逃れているようだ。
「ルシェ、俺と代わるぞ! ルシェはあの蜘蛛を頼む!」
この場はスイッチして当たった方がいいと判断してルシェに声をかけ、俺は犬型のメタルモンスターを追う。
「ちょっと待て海斗! あんな虫無理! おい海斗〜!」
後方からルシェの叫び声のようなものが聞こえてくるが、今は敵に集中し、犬型を追うが前方を走るモンスターのスピードは俺を上回る。
メタルスパイダーのようなイレギュラーな動きではないが、距離が詰まらない。
理力の手袋の力を解放するべく手に集中するのとほぼ同時に犬型モンスターが反転して動きを止めたので、俺は意識を切り替え犬型モンスターの動きに集中させながらバルザードの斬撃を放った。
「オオオオオオオオン」
犬型モンスターが声を張り上げるとバルザードの斬撃が干渉されたように揺らぎ消え、次の瞬間、俺は強烈に目が回るような感覚に襲われた。
やばいと思い、咄嗟にバルザードを地面に立て、倒れるのを防ぐが、我慢できずにその場に片膝をついてしまう。
なんだ?
敵の攻撃を受けたのか?
くっ……
頭の中が撹拌されたかのようにグワングワン回る。
その場から立ち上がる事ができない。
「海斗さん!! 『アイスサークル』」
強烈なめまいと耳鳴りのような感じで、周りの状況が良くわからないが、後方から誰かの声がしている気がする。
正面にいた犬型のメタルモンスターがこの隙を逃すはずはない。
必死に身体を立て直そうとするが、力が入らない。
「やらせないわ! 『バシュ』 『バシュ』」
「弾けて! 『ファイアボルト』」
前方から爆風が襲ってくる。
味方の攻撃によるものなのか敵の攻撃によるものなのかもわからない。
「ベルリアくん、私と代わってください。マスターを頼みます!」
「わかりました。マイロードの事はお任せください」
めまいが酷くて頭が働かない。
今すぐ敵に対応しなければまずいのに敵に意識を向ける事ができない。
片膝だけでは、身体を支える事が出来なくなり、手を突きほとんど四つん這いのような状態になってしまった。
このままだと、完全に倒れ込んでしまう。
「ご主人様を害することはこの私が許しません! 今すぐ消えてなくなりなさい! 『神の雷撃』」
もう目を開けている事が辛いが、閉じた瞼を通して閃光が走ったのがわかる。
一刻も早くこの場を離脱しなければならないのに一歩も動く事ができない。