A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (827)
818話 助かったけどハイコスト
「海斗、危なかったな」
「はい。音波と言われても正直何をされたのかよくわからなかったです」
「私がくらった精神系の攻撃に近いが、音波ならレジストリングがあったとしても防ぐことは難しいだろうな」
「たしかにそうですね」
レジストリングが効果があるのは精神系の攻撃のみなので、物理攻撃である音波には効果がないだろう。
「目に見えないだけに厄介だな。耳栓という手もあるが、連携が取れなくなるし音の情報が制限されるのは痛い」
「そうですね。攻撃される前に倒すしかないかもしれませんね」
「おそらく、海斗だけに効果が及んだところをみると、干渉はそれほど広範囲ではなく正面方向に限定されている気もするから、気配を感じたら正面から離脱する必要があるだろう」
「わかりました」
音も物理攻撃である以上『鉄壁の乙女』であれば防げるとは思うが、数がでれば各自戦う必要もあるので、可能な限り対策しておくべきだろう。
それにしても、今までにない攻撃で完全に戦闘不能に追いやられてしまったので、混乱して焦ってしまったがみんなのおかげで助かった。
メンバーには感謝だな。
俺が、メンバーへの感謝の念を浮かべているとルシェが大きな声で呼びかけてきた。
「おかわり!」
「おかわり?」
「そう、おかわり!」
いつもよりも多めに渡したにもかかわらずルシェが魔核の追加をねだってきたが『炎撃の流星雨』以外にも『破滅の獄炎』も使用していたし、このくらいは仕方がないな。
「これでいいか?」
「うん、うん、うん」
ルシェは俺の手から奪い取るように魔核を受け取り満足そうに吸収していく。
幸い、この階層のモンスターの魔核は十九階層だけあってかなり大きいので赤字になる事はないと思うが、今までの階層よりも魔核の消費ペースが早い。
「ご主人様……」
「シル、敵か?」
「いえ、私もお腹がすきました」
「ああ、これがシルの分な」
「はい、ありがとうございます」
シルも俺から魔核を受け取り、嬉しそうに吸収している。
魔核を吸収するのその姿は二人とも戦っている時とは全く違う表情で、ただの子供にしか見えない。
「マスター、あの‥‥私も」
「ああ、そうだなティターニアも頑張ってくれたもんな」
ティターニアだけ除け者にすることはできないのでティターニアにも魔核を渡す。
ルシェだけなら少しくらい多めに渡しても赤字は無いと思っていたが、三人に渡すとなると流石に怪しくなってくるが、やはり十八階層までと比べてもモンスターが強くなっているのでやむを得ない。
今までの感じでいくとやはり平日にもっと集中して一階層を回る必要があるな。
春香とのカフェ巡りもあまりできていないし、正直時間が足りない。
放課後潜る時間を少し延ばすか。だけど、もうすぐテストもあるし難しいところだ。
「マイロード、よろしいでしょうか?」
「ベルリア、どうかしたのか?」
「私にも魔核をお願いしてよろしいでしょうか?」
「‥‥ああ、そうだな。これがベルリアの分な」
「はっ、ありがとうございます。このベルリア次こそは敵を薙ぎ倒してご覧にいれます」
「うん、がんばろうな」
ベルリアも敵を倒してはいないが戦闘には加わっていたし、魔核が必要なのはわかる。
わかるけどベルリアもか。
やはり、ルシェに大技を使わせるのは無しだな。