A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (829)
820話 金属のトカゲ
「ご主人様、敵モンスターが三体います。この先を曲がったところです」
「わかった。前は三人であたるけど、シルとルシェもタイミングがあれば攻撃して欲しい」
「おまかせください」
「まかせとけって。バ〜ンとやってやるから」
「流星雨は無しだぞ」
「わかってるって」
「ヒカリンとミクは足止めメインで。スナッチは……まあ、いざという時に」
正直、この階層に入ってからスナッチは空気と化している。
『カマイタチ』も『ヘッジホッグ』もこの階層のモンスターには相性が悪すぎる。
おそらく『フラッシュボム』なら効果がありそうだが、半分自爆攻撃のようなものなので本当に危ない時以外は使えない。
警戒を強め、ダンジョンを左へと曲がると前方にモンスターの姿が確認できた。
俺は、集中力を高め、ナイトブリンガーの効果を発動し、アサシンのスイッチを入れる。
ベルリアとあいりさんの二人とアイコンタクトをし、敵モンスターへ向けて駆け出す。
幸いにも先程の犬型はいないようだ。
俺は中型のトカゲらしきメタルモンスターへと迫る。
4つ脚のその姿からは、それほど俊敏性は見て取れないので組みやすいようにも思える。
俺の後方から迫るベルリアとあいりさんに反応しているので俺の存在はおそらく認識されていない。
このまま側面へと回り込み断ち斬る。
モンスターの姿を正面に捉え更に距離を詰めようとしたその時、メタルリザードが声を上げ、ベルリアの方へと頭を向けると首の部分が瞬時に傘のように大きく広がった。
俺の直感がシグナルを鳴らす。
このままだとおそらく、何かのスキルが発動される。
傘のように開いた襟巻きが、小刻みに震え始めた。
まずい。
俺は更に速度を上げ、メタルリザードに迫り、バルザードを襟巻きに向けて振るう。
本当はもう少し奥まで踏み込んで胴体を切断したかったが、それよりも相手のスキル発動の方が早いと判断し、対象を切り替え広がった傘を斬り裂こうとするが、バルザードの刃が触れた瞬間硬質な皮膜に弾かれる。
俺は、即座に左手を添え再びバルザードに切断のイメージをのせ再度振るう。
今度は、持つ手に重い抵抗感を感じながらも、切断する事に成功した。
傘の部分は薄い皮膜のように見えたので、完全に油断してしまったがやはりこの階層のモンスターは硬すぎる。
切断により、傘の震えは止まったが、メタルリザードに認識されてしまった。
目の前にあるメタルリザードの顔が完全にこちらを向いている。
『ファイアボルト』
「ギュアッ」
「海斗さん! サポートします『アースウェイブ』」
ヒカリンの攻撃で顔が跳ね、動きの止まったリザードの首に向け三度目のバルザードを振るう。
強い抵抗感と共にバルザードの刃が首へと吸い込まれるが、威力が足りないせいで切断には至らない。
「おおおあぁぁ!」
俺はバルザードを持つ手に全身の力をのせて、刃を身体ごと押し込んだ。