A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (833)
824話 最善手
19階層を進み、既に昨日のポイントに近い所まで来ている。
昨日、思ったほど探索が進まなかったこともあるが、今日は昨日に比べるとモンスターとの交戦少なめで距離を稼げている。
張り切って今日の初戦を迎えたが、やはり相性の悪さもあり、いきなり苦戦してしまったので、みんなと相談した結果、シルにお願いして敵の数が多い場合は極力迂回しながら進むことに決めたのだ。
以前真司たちと潜った平面ダンジョンでは徹底して逃げたが、そこまでではなく、あくまでも数が多い時は避けるといった程度だが、それでも昨日よりはかなりスムーズに探索を続けることが出来ている。
「マスター、モンスターがいます」
後方からティターニアの声が聞こえる。
シルからの知らせは何も無い。
この感じは昨日もあった。もしかしてあいつか?
「マイロード、同じ個体かどうかはわかりませんがあそこにいます」
ベルリアの指す方をよく見ると確かに床と同化したようなメタルスライムがいる。
昨日、しとめ損なったアイツと同タイプのスライムに間違いない。
「昨日逃げたアイツか。また現れるとはいい度胸だな。燃やし尽くしてやる」
「ルシェ、ちょっと待て」
昨日の戦闘でルシェの獄炎が効果的で無いのは既にわかっている。
シルの雷撃でもダメだった。
炎と雷がダメなら物理攻撃だが、ベルリアの攻撃もダメであっさり逃げられた。
アイツをしとめるには、更に素早く高火力な一撃。
シルのラジュネイトを用いた一撃ならいける気もするが、より高い火力を求めるならタメが必要となる。
あのスライムは異常に素早い。
タメを必要とする攻撃は避けられる気がする。
スルーして先に進むのもひとつの手だとは思うが昨日しとめ損なっただけに可能なら倒したい。
スライムスレイヤーの俺がスライムを前にして逃げるという選択肢はない。
「ベルリア、俺がしとめるから注意を引いてくれ」
「おまかせください」
俺はベルリアに声をかけると、右手にバルザード左手に殺虫剤を持ちナイトブリンガーとアサシンの効果を同時に発動しスライムの方へと慎重に距離を詰めていく。
先に飛び出したベルリアが、反対側に回り込みメタルスライムの移動を限定する。
ベルリアの動きに合わせて、メタルスライムが高速で移動するがベルリアのおかげで俺に近い位置へときた。
俺は気配を薄めたまま速度を上げ、射程へと踏み込む。
『愚者の一撃』
昨日のことを考えても何度もチャンスがあるとは限らないので、俺は迷わず必殺のスキルを発動し左手に持つ殺虫剤のトリガーを引く。
メタルスライムに向け、必殺の殺虫剤ブレスが放たれる。
いつもと変わらない霧がスライムに向け伸びていく。
アサシンの効果で、ゆっくりと霧が伸びていくのを感じるが、その霧は確実にメタルスライムを捉えた。
今まで『愚者の一撃』が殺虫剤ブレスにまで効果が波及するのか試したことはないが、これが俺にできる最善手。
スライムスレイヤーのスキルと合わさり、殺虫剤ブレスは必殺の一撃へと昇華したはずだ!