A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (834)
825話 メタルスライムの最期
いつもと変わらぬ薬剤の霧が、特別な力を宿し必殺の攻撃へと変わった気がする。
ベルリアに気を取られ、俺の存在を忘れていたであろうメタルスライムは、再度のその高速移動を発動することなく、殺虫剤ブレスの餌食となった。
『愚者の一撃』を発動したせいで身体の力が急速に抜けていく。
どうだ!
俺は殺虫剤のトリガーを引き続ける。
いくら素早くてもメタリックなボディであっても、効いたはずだ。
殺虫剤ブレスが続く中、メタルスライムはその場から動くことなくその姿を消した。
「やった」
昨日は逃げられてしまったが、今回はやった。メタルスライムをしとめる事に成功した。
メタリックなそのボディとその異常とも言える素早さから、俺は密かに期待していた。
最初は違うと思ったが、もしかしたら形こそ違えど、シル達を残したメタリックカラーなスライム達と同種なのではないかと。
そしてメタルスライムの消えた跡を凝視すると残されていた。
いつもと変わらぬ魔核が……
「そうだよな。そんなうまい話はないか……」
気落ちした、俺の耳にベルリアの声が聞こえてくる。
「マイロード!!」
「うん? ベルリアどうかしたのか?」
スライムの魔核から視線を上げベルリアを見る。
「ベルリア! それって……」
「ご主人様!」
「シルも……いや、みんなか!?」
後方のメンバーに目を向けると、スナッチを含めたサーバントが全員光っている。
これはレベルアップ。
そういえば『愚者の一撃』で消耗したはずの俺の身体も倦怠感が消えている。
まさか、俺もレベルアップしたのか?
俺は慌てて自分のステータスを確認する。
高木 海斗
ジョブ アサシン
LV25→26
HP100→105
MP68→73
BP100→104
スキル
スライムスレイヤー
ゴブリンスレイヤー(微)
鬼殺し
神の祝福
ウォーターボール
苦痛耐性(中)NEW
愚者の一撃
不撓不屈
おおおお〜!
本当にレベルアップしている。
前回ジャグルと戦ってからほとんど時間が経っていないというのにレベルアップしている。
いくら19階層の敵が強いといっても、こんな短期間にレベルアップするのは異常だ。
となれば、考えられることはひとつだ。
さっき倒したメタルスライム。
あのメタルスライムの持っている経験値が異常に高かった。
それくらいしか考えられない。
しかもサーバントのレベルは俺のレベルよりずっと上がりにくいはずだ。
それが、全員レベルアップしているように見える。
ある意味レアアイテムを引き当てるに匹敵する出来事なのではないだろうか。
あまりに予想外の出来事に興奮を抑えきれないが、再度自分のステータスを確認する。
各ステータスは順調に伸びている。
そして新しいスキルが発現することはなかったが、苦痛耐性(弱)が苦痛耐性(中)へと昇華している。
苦痛耐性が明らかに他のスキルよりも昇華するのが早いのは、それだけ俺が苦痛に耐えているという事の裏返しなのかもしれないが、この瞬間、とにかく俺はレベル26に到達した。