A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (837)
828話 探索のお供はコーラ? スポーツドリンク? いや緑茶でしょ
レベルアップしてから何度かモンスターと交戦して楽勝とはいかないものの、慣れも相まって少しだけ攻略がスムーズになった気がする。
「あ〜疲れた〜。やっぱりモンスターと戦った後はコーラだよな〜」
俺はマジック腹巻きからコーラの入ったボトルを取り出して喉を潤す。
「海斗、ジュースを飲むにしてもそこはスポーツドリンクとかじゃない?」
「もちろんスポーツドリンクもいいけど、コーラの喉越しが疲れた身体にたまらないんだよ」
「海斗さん、仕事終わりのおじさんみたいなセリフですね」
「そうかな。みんなはスポーツドリンク飲んでるのか?」
「いえ、私はこの前からミクさんに勧めてもらってお茶を飲んでるのです」
「お茶?」
「はい、緑茶なのです」
「麦茶じゃなくて緑茶?」
「はい、緑茶なのです」
「そういえば海斗には勧めてなかったかも。あいりさんも今は緑茶よ」
「そうなんだ」
スポーツドリンクでも麦茶でもなく緑茶? あいりさんはキャラ的にわかる気がするけどミクが勧めたっていうのが意外だ。
「パパの取引先の人が送ってくれて飲んでみたら美味しかったのよ。それに今若い女性を中心に緑茶が流行ってるの知らない?」
「いや、全然知らなかったよ」
「春香とかも学校なんかで飲んでなかった?」
言われてみれば、春香も前澤さんも最近お昼休みとかにお茶を飲んででいた気もするな。
特に気にしてなかったけど、あれは流行りだったのか。
「これ信楽にある『茶のみやぐら』っていうお店の『朝宮茶』なんだけど。よかったら海斗も飲んでみる?」
「信楽って静岡だっけ?」
「全然違うわよ。滋賀県よ。日本最古の茶産地って言われてるのよ」
「え!? お茶と言えば静岡じゃないのか?」
「もちろん静岡も有名だけど、福岡の八女茶とかも有名だし、この朝宮茶は平安時代から続く伝統のお茶で、まろやかな甘みの中に爽やかな渋みがあって美味しいのよ」
「そうなんだ」
「小野小町とか清少納言とかも飲んでたかもしれない由緒正しいお茶なの。そう想いを馳せたら、時代を越えてロマンティックじゃない?」
俺は、コーヒーも苦手だが、実は苦味のある緑茶もあまり得意ではない。お茶と言えばいつも麦茶だ。
「緑茶には疲労回復効果があるし、口の中を殺菌してくれるから長時間の探索にはもってこいなのよ」
「緑茶に疲労回復効果? 知らなかった」
「カフェインで集中力が上がるしテアニンっていう成分でリラックスしたり疲労回復したりするのよ。殺菌効果のあるカテキンは知ってるでしょ」
「カテキンは俺でもわかるよ」
「暑い時には水出しで、ホッとしたい時にはあったかいのがおすすめよ。よかったら一杯飲んでみる?」
「じゃあ、せっかくだしいただこうかな」
ミクからもらったお茶を飲んでみる。
少し渋みを感じるが、それよりも爽やかな甘味が強い。思ったよりもずっと飲みやすい。
「は〜っ……」
なんか落ち着くな。カフェで飲んだコーヒーより随分飲みやすい。
「どう?」
「ああ、なんかいいかも。落ち着く。今まで飲んだことある緑茶よりも飲みやすい気がする」
「そうでしょ? 歴史ロマンに浸れるでしょ?」
う〜ん、正直歴史ロマンはよくわからないけど、疲労回復効果に口臭予防まであるなら確かにありかもしれない。
せっかくなので今度からコーラと併用してみようかな。