A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (838)
829話 魔法剣
俺はレベルアップを果たした事で試してみたい事があって、ミクに付き合ってもらっている。
「それで私はどうしたらいいの?」
「ミクのスキル『ファイアースターター』でバルザードに火を放って欲しいんだ」
「火を放つって刀身の部分にって事?」
「そう。19階層の敵が手強いから魔氷剣だけじゃなく、新たな魔法剣を使えないかと思って」
「バルザードって人が付与したのでもいけるの?」
「たぶん。試した事ないけど魔氷剣の事考えたらいけると思う」
「かなり熱いと思うんだけど、本当に大丈夫?」
「昨日のレベルアップで苦痛耐性が中まで上がったんだ。だからいける気がする」
「苦痛耐性中って、それだけ普段苦痛を感じてるって事?」
「まあ、主な原因はルシェだろうけど」
19階層の敵は硬い。
魔氷剣を多用する事になるが、それでも手こずっているのが現状だ。
そして、俺のMPはそれほど多くは無いので、魔氷剣の連発は正直かなりきつい。
そこで考えたのが、他のメンバーによるバルザードの魔法剣化。
ラノベとかによくあるエンチャント的な感じでいけないかと思っている。
今までは、自信がなかったけど、苦痛耐性が中になった今ならいけそうな気がする。
それになんとなくだがミクの『ファイアースターター』はその効果がエンチャントっぽい。
「それじゃあいくわよ」
「ああ、頼む」
ミクが『ファイアースターター』を発動させ、バルザードの刀身が炎を纏う。
「おお、いけた?」
俺は炎を纏ったバルザードを振るってみる。
バルザードの軌道に合わせて炎が残像を残し揺らめく。
バルザードを持つ手が徐々に熱くなってくるが、苦痛耐性(中)が仕事をしてくれているのか耐えられないほどでは無い。
「海斗、確かに火が弱点のモンスターには効果ありそうだけど、19階層のモンスター向きではないんじゃ無い?」
「たしかに」
炎を纏ったバルザードだが、強度や斬れ味が増したような感じはしない。
「おい海斗、今度はわたしの獄炎いってみるか」
「いや、それはやめておこう」
「なに〜、なんでミクのは良くてわたしの獄炎はダメなんだよ!」
「ダメなものはダメだ」
ルシェの獄炎は論外だ。
基本滅せない限り消えない上に広範囲の炎なので、バルザードに放ったら俺まで燃えてしまう可能性が高い。
「ケチ、せっかくわたしが手伝ってやろうと思ったのに」
「シル、最小の雷撃を落とせるか?」
「はい、もちろんです」
「おい、ちょっと待て!」
「本当に最小だからな。やりすぎると俺死ぬから」
「はい、もちろんです」
「おい!」
「じゃあ、やってくれ」
ルシェは信用ならないが、シルの雷撃なら可能性がある。
もちろん最小の威力じゃ無いと消し炭になってしまう恐れはあるが、ルシェと違ってシルなら信用に足る。
『神の雷撃』
シルが雷撃をバルザードの刀身に向け放った。
閃光が走り、バルザードが強烈な光を放ち、バルザードを手に持つ俺の身体に電撃が走った。
「あ、あ、あ、あ、あぁ」
全身がビリビリして特にバルザードに触れている手が痛い。
痛いがなんとか耐えられるくらいの痛みだ。
俺はそのままバルザードを振るってみるが、雷撃を纏ったバルザードはまさに雷神剣。
以前使っていた雷の魔刀とは比較にならない閃光を放ち空を斬る。
間違いなく今までの3種の中で最強の威力を持っていることがわかる。
だが、何度か振るっている間も絶えず電撃が襲ってくるため、ただの素振りなのに消耗が激しい。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「おい、やっぱり獄炎もいけるだろ」
「無理、絶対に無理」
使い所があるかはわからないが、この雷神剣とミクに手伝ってもらった炎熱剣がどうにか使えそうなのがわかったので、それは成果と呼べるだろう。
ただ、雷神剣を使用している間はずっと髪が逆立っているらしく、見ていたミクが大笑いしていた。