A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (844)
835話 凍る
順調に19階層を進んでいく。
「ご主人様、モンスター二体がこちらへ向かってきています」
「それって、こっちのことを認識してるって事か?」
「おそらく、そうだと思います」
「みんな、ここで迎え撃とう」
モンスターがこちらへと向かっているようなので、俺たちは、その場にとどまりモンスターを迎え撃つことにする。
武器を構え前方に意識を集中して待っていると、すぐに機械音を想起させるような敵モンスターの移動の音が聞こえてきた。
現れたモンスターはシルの言う通り二体。
ただ今までとは違うのが2点。
ひとつはモンスターのうち一体は空を飛んでいる。
メタリックなボディのくせに上空を鳥さながらに滑空している。
そしてもうひとつ。
地上にいるもう一体のモンスターだが、メタリックボディではあるが、今までのモンスターがシルバーメタリックだったのに対し、ブルーメタリックな体色をしている。
上空を舞う、メタルバードが上空からこちらに向け降下してくるが、途中から急加速し一瞬でこちらとの距離を詰めてきた。
「ベルリア!」
辛うじて目で追う事が出来たメタルバードは、ベルリアに向け更に加速して向かってきた。
『ギィイイイン』
ベルリアは、敵の急加速に反応して、メタルバードとの間に牛魔刀を滑り込ませた。
牛魔刀とメタルバードが接触した瞬間、接地したところからは火花が飛び散り、ベルリアが弾かれるように後方へと飛ばされるが、くるっと回って着地した。
メタルバードはそのまま上空へと昇り、体勢を立て直しベルリアへと再び降下し始めた。
ベルリアは牛魔刀を構え迎え撃つ。
「同じ攻撃が通じるとは思わない事ですね。まあ鳥に言っても無駄かもしれませんが。いい機会です。私の新しい技の肥やしとなってもらいましょう。『グラビティストライク』」
ベルリアの持つ牛魔刀の周りに揺らぎが発生したのがわかる。
ベルリアの新しいスキルだ。
そして次の瞬間ベルリアは氷漬けになってしまった。
「なっ……」
何が起こったんだ。
ベルリアのスキルは重力。氷系じゃない。
ベルリアが凍ったのは、ベルリア自身のスキルじゃない。
全く理解できない突然の状況に頭がついてこない。
「海斗さん、止まっちゃダメなのです。『アイスサークル』」
ヒカリンが出してくれた氷柱にメタルバードが追突し、氷柱を破壊したメタルバードの勢いが削がれた。
『斬鉄撃』
動きの鈍ったメタルバードをあいりさんの薙刀が捉えて斬り落とす。
「海斗、おそらくあの青いやつのスキルだ。止まるな。動くんだ」
あいりさんの声に反応し、俺はすぐさまブルーメタリックな狼へと蛇行しながら走る。
後方からミクが氷漬けとなったベルリアに向けスピットファイアで火球を放つ。
おそらくベルリアは悪魔だから、氷漬けになってもリカバリーできると思うけど、俺が氷漬けにされたら洒落にならない。
ただの人間に過ぎない俺が氷漬けになったら多分死んでしまう。
やばい。