A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (850)
841話 じゃれる
金属質な通路を進んで行くと広がった空間に出た。
「ちょっと今までと感じが違うな」
天井がかなり高くなりこの階層独特の圧迫感がかなり軽減している気がするが、やはり足下は濡れているので普通に歩くだけでもバランスを崩しそうになる。
そして今までと違い、ところどころ床が隆起して尖っている箇所がある。
万が一尖っている箇所に転んでしまったらただでは済みそうにない。
「ヒカリン大丈夫?」
「ミクちゃん、ちょっと手を借りてもいい? この靴滑るのです」
「そうね。転んだら大変だからゆっくり行きましょう」
「そうだな。あいりさんは大丈夫ですか?」
「ああ、私は大丈夫だ」
やっぱりあいりさんは体幹が優れているのか、この場でも姿勢が全く崩れていない。
感心しながら歩いていると突然後ろから押されて足を滑らす。
「ぐっ、いって〜。うぁっ、危なかった」
床が硬いので転ぶと結構痛い。だけど、それより転んだ俺の頭の30センチほど横の床が鋭利に隆起している。
「危なかったぞ。もうちょっとで転ぶところだったぞ」
「姫、私の手をお使いください」
「この程度、大丈夫、大丈夫」
まさか、さっき押してきたのは……
「ルシェ、お前なのか」
「なんのことだ。変な言いがかりはやめろ」
「ルシェ姉様、しっかり見えてましたよ」
「ティターニア、裏切る気か?」
「そんな凄んだフリをしてもダメです。マスターに謝った方がいいです」
「チッ」
「ルシェ、その舌打ちはなに? まさか逆ギレとかじゃないよな」
「ちょっと足が滑った、いや滑りそうになっただけだろ」
「それで俺を押したのか」
「押したというか、前に手を伸ばしたら海斗がいただけだぞ」
「ルシェ、ここを見ろ。もうちょっとズレてたらここに刺さってたかもしれないんだぞ」
「まあ、大丈夫だったんだからいいだろ」
「ルシェ姉様、それはダメだと思いますよ。あまりにひどいとご褒美もらえなくなりますよ」
「それは困る! 海斗、私が悪かったよ。だから魔核はちゃんとくれよ」
やっぱりルシェか。他のサーバント達は全くバランスを崩す様子もないのに、毎回ルシェだけやらかすのはなんなんだ。
それにしてもティターニアの方がずっとお姉さんに思えてしまう。
見た目は1番幼いけどルシェより精神年齢は高いのかもしれない。
「3人とも仲が良いのはいいことですが、敵が来ます。ルシェも甘えるのはそこまでです」
「シル! 甘えてるんじゃない。変なこと言うな」
「はい、はい。わかってます。それよりご主人様、ご準備を」
「ああ、わかった。敵の数はわかるか?」
「おそらく5体です」
「マイロード、今度こそおまかせください。蹴散らしてみせます」
ベルリアが張り切っているのはいいけど、数が多いな。
しかも開けた場所なので、守り難い。
「シル、敵が見えたら『鉄壁の乙女』を頼む」
「わかりました」
ベルリアを先頭にして敵が現れるのを待ち構える。