A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (851)
842話 赤いキツネとたぬき
ベルリアが突然前方に向け牛魔刀を振るう。
『ギイィイン』
周囲に激しい金属音が響き渡る。
「シル姫!」
「皆様、中へ! 『鉄壁の乙女』
シルがスキルを発動し、俺達は光のベールに包まれる。
なんだ!?
ベルリアの少し後方に身構えていた俺には見えなかったが、ベルリアの前方で小型のメタルバードが体勢を立て直し上空へと舞い上がるのが確認出来た。
「鳥型か」
どうやら鳥型のモンスターが超高速で襲って来たらしい。
「たぬきはいないようだな」
「あいりさん、冗談言ってる場合じゃないですからね」
「ああ、すまない.思わずな」
遅れて俺たちの前に現れたのは、先ほどと同じ青いオオカミ、そして青いオオカミに似た個体、大型の赤いキツネ。
鳥型が上空から急降下し、鋼鉄の弾丸と化したモンスターがシルへと一直線に向かってくるが光のベールに弾かれ、その動きを止める。
『ヘルブレイド』
ベルリアがバランスを崩した鳥型のメタルモンスターに向け斬撃を飛ばし、更に追撃をかけて消滅させる。
肉切り包丁から放たれた斬撃はその大振りの魔剣の刃の力を借りパワーアップしているように見える。
「所詮は鳥。私の敵ではありませんでしたね」
「ベルリア、まだ一体倒しただけだ。油断するな!」
一体倒された事で、一瞬引いて警戒するような素振りが見て取れたが、次の瞬間青いオオカミと赤いキツネ型のメタルモンスターが急加速して距離を詰めてきた。
左右に分かれこちらを挟むように展開した直後光のベールの半分を覆うように氷が発生し、残りの半分にはドロドロに溶けた溶岩のような物が覆いかぶさってきた。
「赤いキツネは溶岩か。それならたぬきはなんだ? マリモか?」
「だからあいりさん、冗談を言っている場合じゃないですよ」
「すまない.どうしても気になってしまったんだ」
あいりさんの場違いな冗談も『鉄壁の乙女』への絶対的な信頼があってこそだとは思うがやはりあの二体、ノーモーションでスキルを使って来た。
上空には二体のメタルバードが旋回しているのが見えるが、自分達の攻撃が通じないのが分かったからか距離を詰めてくる気配はない。
「上は私たちに任せて」
ミクとヒカリンが上空への攻撃を開始する。
「わたしもお手伝いします」
ティターニアがドラグナーの銃身を上空へと向ける。
「マイロード、あの青い犬は私にお任せください」
「大丈夫なのか?」
「問題ありません」
正直ベルリアの「問題ありません」は問題ありの事も多いので不安は残るが……
「あっ」
ベルリアは俺の返事を待つ事なく青いオオカミに向け飛び出して行ってしまった。
自動的に俺の相手は赤いキツネ。
「あいりさん」
「ああ、わかってる」
短くあいりさんと意思確認してから2人で光のサークルを飛び出し赤いキツネに向けて走り出す。
俺達は、赤いキツネの正面から外れるように左右へと散り距離を詰めていくが、突然前方の空中が赤く染まり、そのまま地面へと溶岩が流れ出し行手を防がれる。