A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (857)
848話 名案
どんなに探索が楽しくても、どんなに疲れていたとしても勉強を疎かにする事はできない。
もうすぐ模試も控えている。
どうしても、今のこのタイミングでいい成績を残して目処をつけておきたいところだが、俺にとって王華学院はスライムではなくボスモンスターのような存在だ。
簡単ではない。
残念ながら入試ではシルやルシェの援護も期待できない。
絶対に負けられない戦い。
それが近づいている。
俺にとってダンジョンボスに勝るとも劣らない戦い。
厳しいのはわかってる。
でも俺の想いは脳を活性化し、奇跡を起こす。
いや、真面目に頑張れば奇跡は必要ない。
きっとモブ神様が、俺の努力に応えてくれるはずだ。
宿題を終わらせた俺は、眠気を我慢してしっかりと勉強をこなした。
眠気が襲ってくる度に春香が天使のように舞い降りて、俺を支えてくれた……ような気がする。
翌朝目を覚ますと、まだ少し眠気が残っていた。
最近、土日は勉強もあって寝不足気味だ。
こんな時は、地上でもダンジョンでのステータスを引き継げればいいのにと強く思ってしまう。
きっとレベル25のステータスをもってすれば徹夜くらいなんでもないはず。
残念な事にダンジョンで眠くなる事はまずないが、地上での眠気がダンジョンに潜ったからといって覚めるわけではない。
せっかくシルバーランクまで到達したのに、試験での俺はただのモブ。
「いや、ちょっと待てよ」
よく考えてみると、ダンジョンでステータスが上がっている状態で勉強すれば滅茶苦茶捗ったりするんじゃないのか?
レベル25、BP100オーバーの俺のステータスは、当然戦いの中での判断力も上がっている。
ステータス表示はないが魔法を使うためにINT的なものも当然上がっているはずだ。
家の机で勉強するよりもダンジョンの床で勉強した方がはるかに効率があがるのでは。
昨晩苦労した英単語もスラスラ覚えることができる気がする。
「もしかして……」
可能性はある。
いや、これは間違いないかもしれない。
俺、やってしまったかもしれない。
もしかして勉強チート、いや入試チート!?
以前、軽く口頭であいりさんから勉強を教えてもらった事はあるが、本格的にダンジョンで勉強したことは一度もなかった。
ダンジョンで勉強する。
なんでこんな大切なことを思いつかなかったんだ。
探索者なら誰でも思いつきそうなこのアイデア。
誰からも聞いたことが無いし、勉強している探索者に出会った事もない。
なんでだ?
灯台下暗しというやつだろうか?
入試を控えている探索者の絶対数が少ないから誰も実践してこなかったのかもしれないが、もしかして他のダンジョンとかでは一般的だったりするのか?
善は急げだ。
早速今日探索を終えたら一階層で勉強してみよう。
俺は探索の準備と一緒に勉強道具一式をマジック腹巻きに入れてダンジョンへと向かう。