A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (860)
851 凍ってもたぶん死なない
そこからの決着は早かった。
一方的に緑のたぬきを叩き潰し、残りの2体も程なく消失した。
「ドロップは無しか〜。赤字だ、赤字。強いくせにケチくさいんだよ」
「八雲、いちいちうるさい」
「お! 戦闘で気づかなかったけど、他のパーティがきてたのか」
「ほんとだ」
どうやら戦闘を終えこちらに気がついたようなので、挨拶しておく。
「こんにちは」
「ああ、こんにちは?」
ダンジョンで「こんにちは」というのもおかしな気もするが、咄嗟に思い浮かぶ言葉が他になかったので仕方がない。
「すごい戦いでしたね」
「ああ、ありがとう。君たちは……随分若いな」
「幼女? 子供もいるのか? いや、サーバントなのか」
「いや、まあ」
「もしかして君、『黒い彗星』じゃない? 真っ黒な装備にかわいい女の子、それにサーバント。絶対そうでしょ」
「いや、まあ」
「おお〜君が噂の『黒い彗星』か。もう19階層なのか。さすがだな」
「いや、そうでもないです」
こんなガチ目なパーティの人にまで俺の事は知られてるのか。
俺も普通に答えてしまっているけど『黒い彗星』をいまだに受け入れ難い自分がいる。
「本当に、女の子ばかりのパーティなんだな。噂通りのリア充ぶりだ。羨ましい限りだよ」
「いや、そんなことは……」
「『黒い彗星』も19階層なんだな。よかったらしばらく一緒に行かないか? 戦闘は一緒でもいいし、交互でもいいから」
以前一度他のパーティと一緒にまわった事があるが、結構勉強になったし俺としては誘ってもらえて嬉しいところだ。
それにこの階層まで来ている人達にサーバントの事を見られたとしても問題にはならないだろう。
ただ勝手に決めるわけにもいかないので、メンバーに確認を取る。
「俺はいいと思うんだけど、みんなどうかな」
「いいんじゃないか」
「いいと思うのです」
「海斗の好きにすれば」
みんな賛成してくれるようなので、あらためてこちらからもお願いする。
「よろしくお願いします。19階層にきてから、結構苦戦してたりするんで勉強させてください」
「いやいや、俺たちも今見た通りこの階層には苦労してるんだ。硬いし特に色付きのやつには手を焼いてる」
「あ〜俺たちもです。特に青いのに」
「凍らせてくるやつな。あれはくらったらヤバい。あれをもろにくらったら生命はないだろう。回避一択だ」
「はは……」
それが、凍っても生命に別状はないんだよなぁ。ベルリアは2度凍ってるけどピンピンしてるし。
いや、ベルリアが悪魔だから大丈夫なだけなのかも。