A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (865)
856話 いい人?
「いや〜今日はいい経験させてもらったよ」
「こちらこそです。みなさんの戦い方勉強になりました」
「そうか。それならよかったが、そっちとは火力が違うからな。いずれにしてもやっぱりイイな」
「え? なにがですか?」
「ああ、気にしないでくれ、こっちの話だ」
「そうですか。それじゃあここで失礼します」
俺たちは英士さん達のパーティと19階層を探索し、いい時間になったので途中で別れて1階層へと戻ってきた。
「さすがベテランって感じでいい人達だったな〜」
「まあ、ベテランっていうのといい人達っていうのは否定しないけど」
「ミク、それってどういう意味?」
「海斗さん、あのリーダーの人ともうひとりの人のシル様達への視線がダメなのです」
「視線がダメ?」
「そう、ダメなのです。あれはダメな視線なのです」
「海斗、大人には色々な人がいるからな。趣味嗜好も色々あるんだ。海斗ももう少し人を見た方がいい」
「そう、なんですかね」
俺はそんなにダメな感じは受けなかったが、3人がそういうならそうなんだろう。
「それじゃあ、俺はこれで」
「海斗、これでって、これからまたダンジョンに潜るのか?」
「いえ、これから勉強しに行くんですよ」
「???」
「勉強しにって出口は逆だけど」
「ああ、今日はダンジョンで勉強してみようかと思って」
「嘘でしょ。ダンジョンで勉強? 海斗おかしくなったの?」
「ミク、おかしくなったはないでしょ。俺は普通だって」
「それじゃあなんで? それに勉強道具は?」
「もちろん、マジック腹巻きの中だよ。この前ミクの話聞いてもっと勉強頑張ろうと思ったんだ」
「それがなんでダンジョン?」
「いや、だってダンジョン内だとステータスの恩恵がある。当然、集中力や判断力も上がってるだろ。じゃあ、ダンジョンで勉強した方が能率上がるんじゃないかと思って」
「海斗さん、普通はそんな事思いつきもしないですけど、それってもしかしたらもしかするのです」
「確かにない話ではないな」
「2人とも本気で言ってます?」
ミクはやたらと懐疑的だったが、やってみればわかる事だ。
俺は3人と別れて一階層の奥へと進み、いつも使っているスペースまで足を運ぶ。
今のレベルならたとえスライムに不意をつかれても大丈夫だとは思うが、念のためにサーバント達を呼び出しておく。
「それじゃあ、頼んだぞ」
「おまかせください。ご主人様が安心してお勉強できるようしっかりと見張っておきますね」
俺は早速、マジック腹巻きから教材一式と今日の為に買っておいた折りたたみ式の小型テーブルを取り出して、勉強を開始した。