A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (866)
857話 勉強
床が冷たいので座布団かクッションを持ってくればよかったとは思うけど、ダンジョンは悪くない。
基本、俺たちの他には誰もいないので静かだし集中できる。
思いつきだったけど、これは当たりだったかも知れない。
あとは、ステータスの恩恵を受けて勉強が捗るかだ。
さっそく参考書を開いて問題を解き始める。
いつもとは違う環境に図書館とかに来たかのような感じで、いい感じだ。
「海斗、わたしは何すればいいんだ?」
「いや、別に何もしなくて大丈夫だぞ」
「ふ〜ん」
やはり俺の推論は正しかったかもしれない。
英単語がいつもよりスラスラ頭に入ってくる。
いつもは何回も書かないと憶えられないのに、今は2、3回書いただけでいけている。
これは明らかにステータスの恩恵。
ステータス画面に頭の良さを示す数字は存在しないが、探索中、普段にくらべて集中力や感度は明らかに上がっているのがわかるので数字外の能力にも影響を及びしているのは明白だった。
そしてそれは俺の脳細胞にも影響しているっぽい。
やった!
俺はやった!
やってしまった!
今年度に入ってから、去年に比べて学力の上昇が停滞しているのを感じて焦りを憶えていた。
昨年度の感じのままなら王華学院もいけると踏んでいたが、その確信が揺らぎ始めていた。
春香との夢のキャンパスライフに黄色信号が灯った気がして不安だった。
だが、俺はシルバーランクとなった探索者としての能力を勉強に活かす術を開発してしまった。
「いける。いけるぞ。憶えられる!」
1番のネックだった暗記ものが捗っていく。
「おい、海斗。そろそろわたしの出番だろ?」
「うん? 特にないぞ? そこらへんで自由にしといてくれ」
「ルシェ、ご主人様の邪魔しちゃダメ」
「はい、はい」
さすがはシルだ。
俺のことを考えて行動してくれる。
「ふ〜英語はここまでにするか。次は社会を勉強してみるか」
これで社会もいけるようなら……
「おい海斗、まだ終わらないのか?」
「まだ英語しかやってないんだからまだだって」
「ちぇっ、わかったよ」
さっきからルシェがブツブツ言ってくるが、退屈なのも理解はできる。
今度、ルシェ達のために絵本とか持ってきてやってもいいな。
ルシェなら青虫のやつとかいいかもしれない。
食いしん坊のとことか共感しそうだ。
ただ、いっぱい食べて大きくなるときれいな蝶じゃなくて凶悪な悪魔になってしまうのでそこは大きく異なるところだ。
それに大きくなるための食料が俺の生命力というのもいただけない。
たしかに大きくなるときれいになるのはおんなじだけど。