A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (869)
859話 隼人とダンジョン
「いや〜悪いな。さっそく付き合ってもらって」
「どうせ俺はそのつもりだったから問題ないぞ」
「おりゃ! それにしても海斗はすごいな」
「なにがだよ」
「やっ! 毎日1階層でこうやってスライム倒し続けてるって凄いな」
「まあ日課みたいなもんだ」
「普通は経験値ほとんどないし、単調だし続かないって。それを何年も続けてるだけである意味尊敬するよ」
「まあ、今の俺は子供を何人も養ってるようなもんだからな〜」
「そうだよな〜。今日はルシェ様は?」
「それが、ルシェのやつがうるさくて勉強の邪魔ばっかりしてくるから今日はいない方がいいだろうと思って」
「あ〜わかる気がする.ルシェ様は甘えん坊だもんな〜」
「ルシェが甘えん坊? 暴れん坊の間違いだろ」
シルにスライムを探してもらいながら隼人と2人で一階層に潜っている.ルシェはいないがこれはこれで新鮮でいい感じだ。
スライム相手なので一応隼人にも殺虫剤は渡してあるが、単調なのを嫌ってか普通に槍で攻撃している。
「やっぱりスライムは割に合わないな〜。急所つかないと倒せないから結構大変な割に落とすのはこの小さな魔核が一個だけだろ。普通の人には無理だって」
「普通の人に無理って俺は?」
「変人?」
「おい!」
「スライム狂?」
「隼人、今日は1人で勉強するんだな?」
「すいませんでした。嘘です嘘。一緒にいてくれ。頼むこのとおりだ」
隼人が大袈裟にこちらを拝んでくる。
それから1時間ほど集中してスライムを狩りながらいつもの場所へと辿り着く。
「隼人、ここだぞ」
「ここ? なんにもないけど、本当にこんなところで勉強するのか?」
「なにもないからいいんだろ」
「そんなもんか」
「ああ、それじゃあさっそくやるか。まだ色々買い込めてないから今日は地面に直座りな」
「まあダンジョンだしな」
「今度クッションとか照明とか買うつもりだ」
「ダンジョンのマイホーム化か」
その場に座り隼人とそれぞれ持って来た参考書を開いて勉強を始める。
やっぱり、ここは静かで落ち着く〜。
「海斗、なんか静かすぎないか?」
「なに言ってるんだよ。ダンジョンなんだから当たり前だろ」
「ああ、そうか」
やっぱり、ダンジョンでの勉強は捗る。
苦手の暗記が特に頭に入ってくる。
「どうだ? 隼人、捗ってるか?」
「ああ、最初は場所が場所だけに違和感がすごかったけど、悪くないな。いや明らかにいい」
「そうだろ?」
「これって完全にステータスの恩恵を受けてるよな」
「そうだな。完全に受けてるな」
「このままここで勉強したらいけるな」
「ああ、いける」
「海斗、ありがとうな。俺たち勝ったな」
「ああ、勝ったな」
「だけど、今まで誰からも聞いた事ない。サークルでも全く話題に上がったこともない。受験生だっているのにな」
「そうか」
「まあ、まともな探索者がダンジョン内で受験勉強しようとは考えないよな」
「それは俺がまともじゃ無いって言いたいのか?」
「いや〜レアというかオンリーというか。まあおかげで俺は助かったんだからいい意味だ」
「いい意味ね」
「当分一緒に潜ってもらっていいか? 頼む〜」
「別に1人でくればいいだろ」
「一階層とは言ってもダンジョンには違いないからな。流石にこの静けさの中、スライムに警戒しながら1人で勉強に集中する自信はない」
「わかったよ」
隼人の強い希望もあり、当分の間隼人の都合がつく日は一緒に一階層へと潜る事が決定した。