A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (870)
861話 火力はメンタル
「海斗、よかったら一緒に勉強しない? 中間テストも近いでしょ?」
「うん、一緒に勉強します」
「明日の放課後とかどうかな?」
「あ〜ごめん、隼人と勉強の約束があるんだ」
「そうなんだ。よかったら隼人くんも一緒にどうかな」
「ちょっと難しいかも。実はダンジョンで勉強してるんだ」
「ダンジョンで!? もしかしてダンジョンって自習室とかあったりするの?」
「いや、自習室は無いんだけど、勝手に自習してるというか」
「そんな事して大丈夫なの? 危なく無い?」
「一階層だから危なくは無いんだ。だから来週でもいいかな」
「うん、もちろん」
隼人と勉強するようになったのはいいが、突然の予定は入れ辛くなり、せっかく春香が誘ってくれたのに先延ばしになってしまった。
本来、高校最後となる今年はダンジョンへのペースも少し落として春香とカフェタイムなんかを楽しむ時間を増やすつもりだったのに、思い通りにはいかない。
もう少しダンジョンで勉強を頑張って目処が立ったら必ず春香と……。
とりあえず、来週は春香との勉強会があるので、それをモチベーションに週末のダンジョンを頑張ろう。
「あいりさん!」
「まかせろ! 『斬鉄撃』」
「チョロチョロうるさい! さっさと燃え尽きろ。『破滅の獄炎』」
これで決まったな。
今日も順調十九階層を進んでいるが、必要以上にルシェが張り切っている。
理由はわかっている。
最近平日のゴブリン狩りに喚んでないから溜め込んでいたフラストレーションを一気に発散しているんだ。
ほんの少しだけ申し訳ない気持ちもあるが、おとなしくできないルシェに問題がある。
「なんだ、もう終わりか? 全然歯応えがないな。おい、海斗お腹すいたぞ」
「はいはい、わかってるよ」
ルシェのお願いに応えて、一階層で集めたスライムの魔核を手渡す。
「シル、次はまだか?」
「ルシェ、そんなに急いてもモンスターは湧きませんよ」
「そんなのわかってるけど、今日の敵は弱すぎるんじゃないか?」
「いつもと同じですよ」
まあ、やる気がモンスターへと向いてるので、これはこれで良いとしよう。
「ねえ海斗、ルシェ様今日は絶好調じゃない?」
「いや、あれは絶好調というかストレス発散だな」
「そうなの? なにかあった?」
「いや、まあ後で話すよ」
それにしてもこの階層のモンスターとルシェの相性はそれほどいいとは言えないはずだけど、そんなの関係ないな。
ルシェのフラストレーションとやる気が獄炎の火力を引き上げているのか、メタルモンスターを次々と灰にしていっている。