A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (878)
オーバーキル
シルの一撃が炸裂し、当然のように敵モンスターが消滅した。
「がんばりました。ご主人様からのご褒美が楽しみですね」
「よし、次はわたしの番だな。ついでだからそっちのやつもやってやるよ。あいり、海斗感謝するんだぞ」
まさか……
「あいりさん! 下がりましょう!」
「わかった」
完全にスイッチを入れてあいりさんと戦う気だったけど、今はそんな場合じゃない。
あいりさんと二人でピンクのメタルモンスターに背を向けて全速力で後方へと駆ける。
「はっはっは〜。これで魔核十個だぞ〜。燃えて潰れろ! 『炎撃の流星雨』」
わかってはいたけどルシェのやつ本当に発動した。
残る敵は瀕死の一体と俺とあいりさんが相手にしている一体のみだと言うのに、現状でルシェの最大火力『炎撃の流星雨』を発動してしまった。
『ゴゴゴゴゴゴゴゴ』
大人バージョンの『爆滅の流星雨』より降ってくる火球の大きさは小さいとはいえ、超高火力の無数の火球がダンジョンの上空へと現れ一気に周囲の温度が上昇する。
「くらうがいい。わたしの糧となれて光栄だろう」
「ズドドドドドドオオオ〜ン」
モンスターに向け次々に上空の火球が降りかかる。
おそらくは二体とも数発当たった段階で敵は消失してしまっていたと思うが、上空の火球はとどまることなく、なにもなくなった地表へとその熱を伝えていく。
「ルシェ……」
確かに敵はいなくなった。
強敵であるピンクのメタルモンスターを全く寄せ付けないその火力は驚嘆に値する。
だけど、二体のモンスターにこれはやりすぎだ。
次々と降りかかる火球のせいで地面は焦げ、当然先に倒した二体の周囲も焼けている。
当然、ドロップしたであろう魔核も燃えて消えている。
「あ〜あ、もうちょっと骨のあるやつはいないのか? いや、わたしの攻撃が強すぎただけか。ふふふふっ。海斗どうだ? 褒めてもいいんだぞ?」
「いや、ルシェ……」
「一網打尽とはこのことだろう。感謝して褒めてもいいぞ?」
「ルシェ」
「ご主人様、私もがんばりました」
「シル……」
「ルシェ様もシル様もすごかったのです。圧倒的だったのです」
「ふふふっ、そうだろう。よくわかってるな」
「ルシェ様もシル様も最高でした」
「そうでしょうか」
「私が苦戦しそうなところを助けていただいてありがとうございます。さすがはルシェ様とシル様です」
「それほどでもあるけどな。ふふふっ」
「助けとなれたならよかったです」
「シル姉様もルシェ姉様もさすがです。この階層では私はあまり役に立っていないので羨ましいです」
「いいんだぞ.妹を護るのも姉の役目だからな」
「そうですよ。ティターニアの活躍できる場も必ずきます」
確かに二人の活躍は間違いないけど、この甘やかせ方は良くない気がする。
だけど、メンバーの表情から心からの言葉であるのがわかるし、本人達も満更でもなさそうなので俺が余計なことを言うべきではない気がする。