A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (88)
第88話 日曜日の攻防
俺は今8階層で戦っている。
シルとルシェと潜ってた時には、こんなモンスターには出会わなかったので対処が完全に後手に回ってしまった。一番前にいた俺はもろに攻撃を食らってしまい、多分胸骨を骨折してしまった。呼吸が苦しく、まともに動けそうにないので、すぐに低級ポーションを使いリカバリーした。
こいつは多分鉄砲魚の類ではないだろうか?未だに姿が見えないのではっきりした事は分からないが、スナッチの鳴き声で警戒していたにもかかわらず、突然、凄い勢いとスピードで水が飛んできて俺にヒットした。強烈な痛みと衝撃を受け、吹き飛ばされてしまったせいで呼吸ができなくなってしまった。
若干パニックになりながらも常備していた低級ポーションを使用して今に至る。
玉ではないがまさにウォーターボールを食らったらこんな感じだろうか。
「海斗、本当に大丈夫?休んだほうがいいんじゃないの?」
「いや大丈夫だ、それよりもあの水鉄砲に気をつけて極力後ろに下がって」
見ているとまた水の塊がこちらに向かって飛んできたが、今度は横っ跳びに避けた。
しかし相手は水の中から攻撃してくるだけで、姿を現わす気配は一切ない。
こうなったらあれしかない。
「みんな撤退しよう。前を向いた状態で警戒しながら後退して離脱するよ。」
「え?逃げるのか。」
「はい。悔しいかもしれませんがお願いします。」
「わかった。指示に従おう」
俺たちはそのまま戦線を離脱した。
「すいませんでした。今回の敵を想定していませんでした。あの場では対処法を思いつかなかったので、とにかく撤退することにしました。」
「いや。正しい判断だったと思う。私も対処法を思いつかなかったが、撤退を思いつけなかった。むしろあの場で撤退できる海斗を尊敬するよ。」
「私も海斗が攻撃を受けて危ないと思ったら、自分でポーション使って立て直して、冷静に撤退できるってすごいと思ったわ」
「私もです。みんな無事でよかったのです」
「そう言ってもらえると助かるよ。今後もあんな感じの敵が出るかもしれないから、水中からの攻撃も最大限注意して行こう。対処法も今のところ思いつかないから、とにかく出会ったら今後も撤退を一番に考えよう。」
ちょっと格好悪いが、自分で対処できない敵を無責任に他の3人に任せるわけにはいかない。安全が最優先なのだけは譲れない。
もしかしたら 『ウォーターボール』による氷槍の攻撃であれば水中の敵にも有効かもしれないが、場所が特定できない状態で放っても致命傷を負わせることは難しいだろう。
「ちょっと頼り無いところがあると思っていたが、ああいう判断がちゃんとできるとは意外だったよ」
「そうですよね。私も撤退って思いつかなかったんで、撤退って言われた時に戸惑ったんですけど、なかなか女の子の前で撤退って言えないですよね。逆にちょっと評価上がりました。」
「前から忍者っぽいと思ってたけど、行動も忍者っぽいのです。SHINOBIです。」
女の子3人がコソコソ何かを話し合っている。
おそらく撤退した事を非難しているのだろう。確かに男としては格好悪いが、こればっかりはどうしようもない。パーティメンバーから追放されないよう頑張るしかない。
「それはそうと来週も土曜日に待ち合わせでいいですか?」
「私、来週は土曜日用事あるから無理。」
「すまない、私も大学で用があるんだ。」
「そうですか2人が休みだと厳しいので、来週は日曜日に集合ということにしましょう。」
ミクも女の子だしプライベートの用もあるのだろうし、仕方がないので来週の土曜日はシルとルシェで潜ろうかな。
俺はこの時、あいりさんとミクが一緒に休みを取ることに何の疑問も持たなかった。