A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (882)
記憶がございません
「よし、それじゃあ探索を始めましょうか。その前に、ベルリア召喚」
「マイロード、ベルリア召喚に応じ参じました」
「ベルリア、大丈夫か?」
「なにがでしょうか? 私はもちろん大丈夫ですが。どういう意味でしょうか?」
まさかだけど、もしかしてベルリア昨日のあれ憶えてないのか?
「ベルリア、昨日の事憶えてないのか?」
「なにがでしょうか? 昨日なにかありましたか?」
「いや……いいんだ」
やっぱり酔っ払っていたような感じなのか? 時々飲み過ぎると記憶が飛ぶとか聞いた事がある気がするけどまさかそれか?
「海斗さん、ベルリアくん憶えてないみたいなのです。あんなだったのに」
「海斗教えてあげた方がいいんじゃない。また同じことになったら大変だし。今度は本当に燃やされちゃうじゃない」
「そうだな。ベルリアちょっといいか?」
「はいなんでしょうか?」
「昨日、紫色のメタルモンスターと戦ったの憶えてるか?」
「そういえば、そのようなモンスターと戦ったような」
「実はな………」
「なっ! バカな! 私に限ってそのような失態を犯すはずが……」
「それがな………」
「くっ……ルシェ姫の前でそのような……。このベルリア一生の不覚。この腹を掻っ捌いて……」
「いや、お前武士じゃなくて悪魔だろ。腹を掻っ捌いても自分で治せるから」
「ですが、このままルシェ姫やシル姫に会わせる顔がありません」
「いや、主人の俺に会わせる顔があるから大丈夫だ」
やっぱりベルリアの判断基準がおかしい気がするけど、今日は失敗を繰り返さないようにしっかりと言い聞かせておくことにする。
「ベルリア、ヤバそうな敵に単独で突っ込んでいくのはちょっと控えるか」
「このベルリアにとってヤバそうな敵などいません」
「ベルリア、毒とか精神攻撃してくるモンスターには要注意だ」
「この私に毒など……いえわかりました」
「わかればいいんだ」
本当にわかったのか怪しいけど、とにかくシル達も召喚して19階層を進む事にする。
「ご主人様、この先に敵モンスターが二体います」
「よし、今日はシルとルシェは後方で休んでおいてくれ。昨日は大活躍だったから今日は俺達が頑張る番だ」
「ちぇっしょうがないな〜。そんなに言うなら今日は大人しくしといてやるよ」
「ああ、俺達が危なくなったらフォローは頼んだからな」
「おまかせください。ご主人様」
「よし、行くぞ!」
眼前に捉えたメタルモンスターへと俺とあいりさんが走り出す。
すぐにメタルモンスターとの距離が詰まるが、途中でおかしい事に気がついてしまった。
敵は二体。
そして俺とあいりさんがそれぞれに相対し交戦しようとしている。
おかしい。
俺達の前衛は3人だ。
ベルリアがいない!
いつもであれば先陣を切って1番に交戦に入るベルリアが前方にも横にもいない。
ベルリアはどこに行ってしまったんだ!