A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (883)
脳ある鷹は爪を落とす
ベルリアはいないけど、そんな事を気にしている間もなくメタルモンスターと交戦に入る。
前衛は俺とあいりさんの二人だけなので、当然メタルモンスターそれぞれに一人であたる。
「やああああああっ!」
あいりさんが気合いを込めた一撃を放つが、メタルモンスターも後方へと急加速して攻撃を避ける。
俺も眼前の敵へと集中を高め、アサシンのスイッチを入れる。
メタルモンスターと相対し、この至近距離で気配を薄める効果は期待できないのはわかっている。敵の攻撃を知覚できる事を期待して踏み込み白麗剣を振るうがこちらもあっさりと躱されてしまう。
「あいりさん! いくのです。『アースウェイブ』」
ヒカリンがあいりさんのフォローに回ったようで、俺の敵にはミクのスピットファイアの炎弾が襲いかかる。
メタルモンスターが炎弾を避ける動きを見定め、再度白麗剣を振るう。
メタルモンスター相手に白麗剣では致命傷を与える事はできないが、バルザードよりも長い刀身を活かし刃を当てる事で一瞬敵の動きを止める。
いける。
そう感じバルザードを振りかぶった瞬間、メタルモンスターはその場から前方の俺を目掛けて急加速して突進してきた。
アサシンの効果で僅かに遅く感じるその突進から避けようとするが、身体はイメージ通り動いてくれない。
白麗剣でメタルモンスターの体当たりを滑らせ後方へと流すが、衝撃で弾き飛ばされそうになるのを必死に耐える。
すごい力だ。やっぱり、このモンスターは強い。
すぐに後方へと向き、モンスターの動きを追うが、敵は前足を上げるとその状態から爪を放ってきた。
金属製の爪が放たれ、銃弾のようにこちらへと向かってくるのが見える。
見えるけど、本数が多すぎて全部を躱すのは無理だ。
避ける事を諦めバルザードと白麗剣で急所を隠し着弾に備えたが、その爪が俺に届く事はなかった。
俺の前に黒い影が割って入り、剣でその全ての爪を薙ぎ払った。
「マイロード、危ないところでしたね」
「ベルリア!」
「このベルリアが来たからにはマイロードには指一本触れさせはしません」
「いや、それよりお前なにやってたんだ」
「マイロード、今は交戦中です。戦闘だけに集中してください」
ベルリア……。
ベルリアが何をしていたのかはわからないけど、飛んでくる爪の全てを叩き落としたその動きはさすがとしか言えない。
「ベルリア、二人で倒すぞ」
「おまかせください」
メタルモンスターはベルリアと俺に向け、再び爪を放ってきたが先程同様、ベルリアが肉切り包丁で叩き落とした。