A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (888)
十九階層主
立派な扉は金属製だ。
力を込め押し開こうとするが、かなりの重量感だ。
「ベルリア、手伝ってくれ」
「はい、おまかせください」
重量感はあるけど、今まであったようなトリッキーな感じはなく押せば徐々に開いてきた。
ベルリアの力を借り更に力を込め押し込むとゆっくりと扉が開き中がうかがえる。
真っ暗だ。
「みんな、中は真っ暗で何も見えない.もしかしたら暗視スコープが必要かもしれない」
「ああ、問題ない.以前使った物はマジックポーチにしまってあるからな」
中の状況をメンバーに伝えるが問題なさそうなので、武器を手にして扉の隙間から順番に中へと入って行く。
最後にティターニアとヒカリンが入った瞬間部屋の両サイドに松明と思しき灯りが順番に灯っていく。
「どうなってるんだ?」
「完全にダンジョンのファンタジー仕様なのです」
まさにヒカリンの言葉通りだ。
何度も使用されているはずなのに今この時も稼働する、ファンタジー仕様としか言いようのない仕掛けだ。
真っ暗だった部屋も徐々に明るくなり部屋全体の状況が確認できるようになる。
それは部屋のほぼ中央にいた。
どうやら十九階層主は一体だけのようだ。
十九階層主のその姿は俺が見慣れた姿をしている。
スライム……。
ただいつも倒している普通のスライムとは明らかに異なる点が2つ見て取れる。
ひとつはその大きさだ、普段倒しているスライムは大きくてもバスケットボール程度の大きさしかないが、目の前のスライムはクマよりもはるかに大きい。
以前戦ったビッグスライムよりも更に大きい。
そしてその質感。
明らかにメタル系に見える。
この階層で戦ったメタルスライムを想起させる。
「海斗、どう戦う?」
「どう見てもスライムなので、俺が前に立ちます」
普通のスライムとは明らかに異なるが、スライムである事は間違いない。
だとすれば、スライムスレイヤーである俺にとっては最も与し易い敵だ。
ボス戦でスライムに当たるとは運がいい。
「海斗さん、いきます。『アースウェイブ』」
ヒカリンがボススライムに向けて先制攻撃を放ち動きを封じにかかる。
俺とベルリアがそれに合わせて走り出そうとするが、ボススライムはヒカリンの『アースウェイブ』の影響を受ける事なく移動し始めた。
「スナッチ!」
ミクの指示でスナッチがボススライムの前を走り抜け、すれ違い様に『ヘッジホッグ』を放つ。
鋼鉄のニードルがボススライムの身体を傷つける事はなく、そのまま弾かれてしまった。
やはりあの身体は見た目通り金属製のようだ。