A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (894)
19階層主戦6
「おい、ベルリア!」
再度呼びかけるが、反応はない。
これは……。
「みんなベルリアを守るんだ!」
まず間違いなく、ベルリアはあの濃紫の霧の影響を受けている。
このままじゃ無防備となってしまったベルリアが危ない。
『アースウェイブ』
「スナッチお願い!」
後方の二人がボススライムを足留めにかかり、あいりさんがベルリアの方へと走る。
俺もボススライムに向け斬撃を飛ばし、ベルリアとあいりさんのフォローをする。
「やああああああ〜! えっ!?」
「ベルリア!?」
ボススライムへと斬りかかったあいりさんの前に今まで反応を見せなかったベルリアが立ち塞がり、肉切り包丁で薙刀の一撃を防いでしまった。
え?
どういう事だ?
目の前の状況に理解が追いつかない。
ベルリアなにやってるんだ。
「くっ!」
更にベルリアは薙刀を払い、あろうことかあいりさんへと斬りかかってきた。
あいりさんが、薙刀の柄の部分でベルリアの一撃を防ぐが、その表情から冗談などではなく本気の一撃であることがわかる。
『ファントムステップ』
ベルリアが高速移動しあいりさんの背後へと回り込み斬りつける。
「くああっ」
あいりさんが薙刀を背面へと滑り込ませ直撃を防ぐが、勢いを殺しきれずに弾き飛ばされてしまった。
間違いなく本気の斬撃。
「ヒカリン!」
「わかったのです。『アースウェイブ』」
ヒカリンがベルリアに向けスキルを発動するが、ジャンプして効果範囲の外へと逃げられてしまう。
間違いない。
ベルリアは酩酊してはいない。
だけど、完全にボススライムのスキルに影響されてあいりさんへと攻撃してきた。
操られているのか、ミクのスキルのように幻覚を見せられているのかはわからないけど精神系の攻撃にやられてしまっている。
『ヘルブレイド』
ベルリアの黒い斬撃が迫ってくる。
俺にあれを撃ち落とすような真似はできない。
斬撃の軌道を必死に見極め回避に全力を注ぐ。
「おあああっ!」
やばい。
くらえばタダじゃ済まない。
それにボススライムが、あいりさんの方へと移動しているのが見える。
「シル! あいりさんを頼む!」
「おまかせください」
あいりさんをシルにまかせて俺は目の前のベルリアに集中する。
シルが動いた事で『戦乙女の歌』の効果が切れたのを感じるが、それはベルリアにも当てはまる。
ベルリアは俺がどうにかしなきゃならない。
「海斗、ベルリアをカードに戻して!」
ミクの声にハッとさせられる。
あまりに想定外の出来事を前に完全に頭から抜けていたけど、カードに送還すればいいだけだ。
俺はベルリアに向けカードをかざし命じる。
「ベルリア戻れ! ベルリア送還!」