A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (897)
19階層主戦9
「ギイイイイィィン」
『ドラグナー』の銃声の直後、金属が擦れる高音が響いた。
「ベルリア……」
ティターニアの放った銃弾は確実にベルリアを捉えた。
膝をついていたベルリアは、『ドラグナー』の銃弾に向かい肉切り包丁を振るい、銃弾がベルリアに届く事はなかった。
ベルリアは超高速の銃弾を手負いの状態であるにも拘らず、正確に一刀両断してしまった。
悪魔なので当然だけど人間業じゃない。
ボススライムを前によそ見をしている場面じゃない。
だけど、ベルリアの神業に目を奪われ、その身の無事にほっとしてしまっている自分がいた。
次の瞬間膝をつき肉切り包丁を前面に構えたベルリアの姿が消えた。
そして俺の耳には再び金属質な音が聞こえてきた。
「駄犬、そこまでにしておけ。これ以上は悪魔の恥だ。死んで地獄で詫びろ」
消えたベルリアの姿はティターニアの前にあり、斬りかかっていたが、既のところでルシェが割って入りトルギルで打ち返していた。
『アクセルブースト』
加速した肉切り包丁がルシェを襲う。
「わたし相手にいい度胸だ!」
ルシェがベルリアの一撃に合わせてトルギルをフルスイングした。
「ギイィイボギイイイン」
今までとは違う衝突音が響き、ベルリアの持つ肉切り包丁が半ばから折れ、剣先が飛んでいった。
「あ〜折れちゃったか。剣の無い駄犬はなんだ? ただの無駄か?」
『アクセルブースト』
「折れた剣で足掻いても無駄だ。死んどけ。『黒翼の風』」
ベルリアが折れた剣を構え直し斬りかかるが、ルシェは打ち返し、近距離からのスキルを発動する。
『ファントムステップ』
「ちょろちょろ避けるな! もういい。潰れとけ! 炎撃の流……」
「ルシェ! 待て〜〜!! それはダメだ! やめるんだ〜〜!」
「は〜? じゃあどうするんだよ。こいつ」
どうするって言われても、殺虫剤ブレスを使いながらそこまで頭が回らない。
けど、あれを使えばほぼ確実にベルリアは死んでしまう。
ちょっと燃えるくらいなら後でどうにかなるけど、燃え尽きたらベルリアでも無理だ。
「マイロード、ベルリア召喚に応じ馳せ参じました。永遠の忠誠を誓います。この剣が折れるまで必死で頑張ります」
ベルリアの事が走馬灯のように脳裏をよぎる。
いやいやいや、ベルリアは死んでない。
まだ死んでない。
だけど、このままじゃ……。
「マスター、ルシェ姉様、ここは私におまかせください」
ティターニア?
まさか『ドラグナー』で蜂の巣にするんじゃないよな。
「ティターニア、本当に大丈夫か!」
「もちろんです。おまかせください」