A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (904)
スライムの不思議
片手にロングジェットもう一方にいつもの強力殺虫剤を携え残りのオレンジスライムへと向かう。
あいりさんも同じスタイルで別の1匹へと臨む。
使い慣れたいつもの殺虫剤の射程は目を瞑ってもわかるほどにこの身に染み付いている。
狙いを定め、まずは右手のロングジェットを放つ。
一直線に伸びたブレスが避けようとするスライムを捉え動きを留める。
ここからだ。
ロングジェットを放ちながら更に踏み込み、左手の殺虫剤の射程まで一気に詰めてトリガーを引く。
ロングジェットの効果で完全に動きの止まったスライムに向けダブルブレス。
脳内でイメージした通りの動きをトレースし完璧に実行する。
「邪魔はさせないのです。『アイスサークル』」
ヒカリンが残り1匹の動きを阻害してくれる。
あいりさんを見ると、多少ぎこちなさは感じるものの俺と同じやり方でオレンジスライムを捉えダメージを与えている。
殺虫剤を渡した時に、手短に説明しておいた通り実行に移してくれている。
流石はあいりさん。
右手のロングジェットが先に切れるが、想定内だ。
左手に殺虫剤を浴びせている事で、動きは止まったままだ。
マジック腹巻から2本目を素早く取り出し、右手に持ちダブルブレスを継続する。
ロングジェットに比べると、勢いと範囲は劣るがスライムに対しての特効は十二分に発揮してくれている。
威力が少し落ちたとしても、まだまだ残量はある。
スライムは殺虫剤ブレスを浴びその姿を徐々に崩し小さくなっていく。
間合いが近くなっているし、ここでマグマを出されたら避けられない。
油断せず、スライムの動きを注視して神経を張り巡らせる。
時間にして数十秒の戦いの末、スライムを倒す事に成功する。
あいりさんの相手はまだ消滅には至ってはいないけど、完璧に捉えているので時間の問題だろう。
あいりさんの相手を除くとあと2匹。
1匹は完全にルシールが抑えてくれているので、残りの1匹へと向かおうとするが既に高速移動を繰り返し距離を取られてしまっている。
スライムの造り的に考えたり状況判断するための器官があるのか不明だけど明らかにこちらに合わせての動きに思えるのでゼリー状の物体のどこかが脳なんだろうな。
そもそも目とか無さそうだけど。
いつも相手にしているスライムもどちらかというとリアクション的な動きが多いとはいえ普通に徘徊してるし、今まで深く考えた事は無かったけど、モンスターの中でも1番不思議なのはスライムだよな。
スライムって何か食べたりするんだろうか。
こんな、くだらない事が頭をよぎるのは少し余裕が出てきたということだろう。ただ今それを考えてる場合じゃない。