A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (905)
換気は大事
目の前のオレンジスライムに意識を集中する。
高速移動を繰り返すその移動速度は完全に俺を上回っている。
追わないとしとめられない。
ただ短くなってしまった殺虫剤ブレスよりもスライムの放つマグマの射程の方が長いので、悠長に追い回していたら狙い撃たれる。
この短時間動きを観察した限りでは動きに規則性は見られない。
「やるしかない」
先回りするため予測した地点へと全速力で駆ける。
スライムと数千回、それ以上戦ってきた経験を総動員して予測地点へと走るが、当然のようにスライムも俺の動きを見て動きを変える。
だめだ。
距離が詰まらない。
俺1人じゃオレンジスライムの動きを追い切る事が出来ない。
「海斗、私が追い込もう」
「あいりさん」
あいりさんも相対していたオレンジスライムを倒したようだ。
手にはスプレー缶ではなく薙刀を携えている。
射程とスピード重視。
あいりさんが追って、俺がとどめをさす。そういう事だろう。
あいりさんは一直線にオレンジスライムへと走る。
やはりオレンジスライムの方が速い。
ただ、俺の時とは違い、直線的に向かってくるあいりさんを見てスライムがマグマを放ってきた。
「遅い! それはもう見切ったぞ」
あいりさんが、その場から踏み切りスライムへとジャンプし攻撃をかける。
「『斬鉄撃』 海斗!」
「わかってます」
あいりさんの一撃がスライムを捉え、一部を削るが致命傷とはならない。
ここまでは想定内だ。
「やあああああ〜! 『斬鉄撃』 『ダブル』」
あいりさんが連撃を加えている間に俺はオレンジスライムの背後を取った。
無言でトリガーを引きダブル殺虫剤ブレスをお見舞いしてやる。
「これで決まりだ〜!」
至近距離からのダブルブレスに一瞬ブルッと震えてオレンジスライムが動きを止める。
完全に捉えた。
背面からオレンジスライムの中心目掛けて殺虫剤ブレスを浴びせかける。
「早く消えろ!」
声をあげ、息を吸い込んだ瞬間、俺は咽せた。
「ゴホッ、ゴホッ、ゲホッ、ゲホッ、ウゥウッ」
手元がブレるのを、腕に力を込め必死に抑える。
ボス戦もラスト2匹となり、作戦通りにはめた事で、いつも以上にテンションが上がってしまい柄にもなく大きな声をあげたのが良くなかった。
既に20本もの殺虫剤を使い切ったボス部屋は有毒ガスで充満していると言っても過言ではない。
これが通常のダンジョンであれば風が通り上方へと抜けそれほど問題ではなかったかもしれない。
ただ、ここはボス部屋。
通常のフィールドに比べ広さも限定されおまけに風の通りがほとんどない。
そこで大きな声をあげて息を思いっきり吸ってしまった。
当然のように漂う殺虫成分を大量に吸い込んでしまい咽せてしまった。
俺のステータスで即、どうにかなるのは考え難いけど、肺がくるしい。
HPが減っているのがわかる。
それでもこのスライムだけは倒す。