A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (907)
19階層主終戦
終わった。
いや、まだ復活する可能性もある。
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」
あいりさんは、まだ咳き込んでいるしこの場は殺虫剤濃度が高い。身体を支え一旦後方へと二人で離脱する。
「あいりさん、大丈夫ですか?」
「ああ、ゲホッ、いや大丈夫とは言い難い」
俺自身もかなりの殺虫成分を摂取してしまったせいか、頭痛もするしなんとなく気持ち悪い。
「ティターニア、俺とあいりさんに『キュアリアル』を頼む」
「おまかせください。マスター達の身体を癒して『キュアリアル』」
即効性は少し弱いけど、これで状態異常も回復するはずだ。
殺虫剤の過剰吸入って状態異常だよな。
殺虫剤は散々使ってきたけど、これだけの量をこの短時間で使い切ったのは初めてかもしれない。
後半ルシェを控えさせたのは正解だった。
これだけの濃度だしルシェが何も考えずに獄炎を使っていたら引火していた可能性が高い。
「海斗様、私はここまでのようです。またお会いできる事をお待ちしています」
「ああ、ルシール助かったよ。ありがとう」
召喚限界を迎えたルシールが還っていった。
どうやらスライムも復活しなさそうだ。
「終わった〜」
19階層主がスライムだったのはある意味俺にとってはラッキーだったな。
苦戦はしたけど、最終的にはほぼノーダメージで終わる事ができたし。
いや、ノーダメージじゃなかった。
「ティターニア、ベルリアは!?」
「息はあるのですが、まだ、目を覚ます様子はありません」
今回1番ダメージがあったのはベルリアだ。
階層主の攻撃だけあって、通常の精神攻撃よりも強力だったのかまだ意識を取り戻してはいないようだ。
ベルリアだから大丈夫だとは思うけど……。
「主人に噛み付いた駄剣は、やっぱり燃やすか」
相変わらずルシェが不穏な言葉を口にしているけど、流石に口にしてるだけだよな。
「おい、起きろ! 起きないのか? 『破滅の……』」
「待て! ルシェ! 待つんだ!」
「なんだ? どうかしたのか?」
「いや、いや、今本当に燃やそうとしただろ」
「それがどうかしたのか?」
「どうかしたのかって、どうかしすぎだって。燃やすのはダメだからな! 絶対ダメだから!」
危なかった。
悪魔に人間の感覚を求めるのは無理なのかもしれないけど、ベルリアが永遠の眠りについてしまうところだった。
「しょうがないな〜。じゃあこれしかないな。おい起きろ〜! 『バチ〜ン』」
ルシェが思いっきりベルリアの頬を張る。
「まだ、ダメか。『バチ〜ン』」
「ルシェ……」
既にベルリアの両側の頬は赤く腫れ上がっている。
容赦ないな。ルシェの力で思いっきりやるとベルリアの頭が取れてしまうんじゃないかと心配になってしまう。