A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (917)
節約家
正直、ちょっと拍子抜けした部分もある。
20階層という節目の階層に過度なイメージが膨らんでいたこともあって、今までよりも豪華なお店やひょっとしたら温泉もあるかもなんて期待したりもしたけど、そんな事はなかった。
自動販売機も今すぐ使う必要性がないので確認だけにとどめる。
これで、明日からは直接20階層へと来れるので目的は果たした。
ちょっとこの先を覗いてみたい気持ちはあるけど、なんとなく無理をするべきタイミングでもない気がする。
「ここから、ちょっとだけ進んでみるのもありだけど、今日はここまでにしてもいいかと思うんだ。どうかな」
「まあ、焦ってもしょうがないし、どうせ何度も来るんだから別に今日はいいんじゃない?」
「私はもうBP85だから今日は満足だ」
「おふたりがこう言ってますし今日はもう引き上げるのがいいと思うのです」
メンバーのみんなも同様の意見のようなので、ここで引き上げる事にする。
「え〜っ、もう帰んのか? わたしはまだ全然いけるぞ? 魔核もまだ全然いけるからな」
「ルシェ、もう魔核は無理だから。また明日な」
「ちぇっ、け〜ち」
「ルシェ姉様、マスターはけちではありません。節約家なだけです」
ティターニアもその言い方……。
それにしても、ルシェの強欲さと飽くなき食欲には困ったもんだ。
シルとティターニアを見習って欲しいものだ。
「あれ? シルどうかした?」
「いえ、また早く階層主と戦いたいなと思っただけです」
「え? なんで?」
「それはもちろんいっぱい魔核をいただけるからです」
シルが階層主と戦いたい理由が不純すぎる。
2人ともティターニアを見習って欲しいものだ。
1番幼いのに色々欲しがってもないし偉い。
「シル姉様、今度こそ以前お聞きした赤い魔核が出るでしょうか?」
「階層主であれば十分可能性はあります」
「わたしだけまだ赤い魔核をいただいた事がないので、今度こそは食べてみたいです」
「あれは、本当に素晴らしいですからね。ティターニアにも是非味わってもらいたいものです。あの芳醇で深みのある味わいは他の魔核では比べる事も適いません」
「そうだぞティターニア。あれはいいぞ〜。やばっ、思い出したら涎が出そうになる.だけど海斗はケチだからな
「マスターは倹約家なだけです。大丈夫です。しっかりお願いしておきますから」
「そうですねご主人様は優しい方ですからきっと大丈夫です」
ティターニア、お前もか。
なんでうちの三人は魔核の事になると目の色が変わるんだ。
大丈夫って何が大丈夫なんだ?
赤い魔核はもう無理だぞ。
あれは何百万円もする代物なんだから。
頼まれたって無理なんだ。
無理なものは本当に無理だ。