A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (921)
忘れられた約束
「いや〜夏休みのこと考えると、テンション上がって勉強も捗るな」
普通、他のことを考えてると勉強は滞るものだと思うけど隼人はそうではないらしい。
確かにシャーペンを持つ手の動きは滑らかだ。
「夏の北海道って水着の女の子っているのかな」
「いったいなんの話だよ」
「だから、夏といえば女の子。女の子といえば水着だろ。水着といえばあれだろ。ムフフ」
隼人、お前の頭の中はどうなってるんだ。
ムフフってリアルで初めて聞いたかも。
それに、そんなわけのわからない方程式聞いたことがない。
「茜ちゃんとも海行きたいな〜。海には夢がいっぱいだよな〜。海にはミネラル豊富だし、育つよな〜」
育つってなにが?
その理論が成り立つなら海女さんとかすごい気がするけど、そんなわけはない。
「そもそもダンジョンに篭るんだから関係ないだろ」
「いや、関係ある。ひと時のアバンチュール。それこそが活力となって探索にも身が入るってもんだぞ。勉強も捗るはずだ」
アバンチュール!? アバンチュールってなに?
「北海道なら1週間は欲しいな。予算は3万くらいあればいけるよな」
「それって、飛行機代は別だよな」
「海斗、なに言ってる? もちろん込みだろ」
「え〜っと、北海道までの飛行機代っていくらかかるんだ?」
「最安LCC片道5000円てのがあった」
「5000円!?」
「まあ、流石に夏休みはもう少し高いだろうけど、往復15000円てとこだろ」
「そんな金額で行けるのか!?」
「そうだぞ。そこからダンジョンに潜るわけだから、移動の交通費を5000円と考えて1人一万円もあればいけるだろ。食料だけだし。なんなら海斗のマジック腹巻にカップ麺詰め込んでいけばもっと安くあがるな」
確かに隼人の計画を聞いていると三万円でも十分いける気がしてきた。
北海道1週間で三万円か。
これなら親にもプレゼントしてあげてもいいかな。
北海道も温泉いっぱいありそうだし、大自然の中露天風呂とか最高だろうな。
いや、よく考えたら、これには宿代が含まれてなかった。
両親に野宿しろってわけにはいかないのでこれに宿代をプラスか。
それでも、近場の高級宿に泊まるのと比べてもありだな。
そういえば隼人が海だって言うから思い出した。
ヒカリンが良くなったら、メンバーで沖縄とか行って泳ごうって約束してたな。
お魚さんと一緒に泳ぐんだとか言ってた気がする。
ヒカリンが元気になって、頭から完全に飛んでたけど、あの約束ってどうなったんだろう。
ミクが春香も誘ってとか言ってたと思うんだけど。
みんな、忙しくて無くなったのかな。
まあ、俺は泳げないからいいんだけど。