A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (929)
それが問題
「ふ〜〜」
おっさんがくれたDVDを見終わった。
「ご主人様すごかったです」
「ああ、そうだな」
シルの言う通りすごかった。
密林の王者ターさん。あらゆる耐性値がマックスだった。
ある意味人間離れしていた。
それもヴァルキリーであるシルがみてもそう思える程に。
結局、この映画が何だったかと言えばコメディタッチのサバイバル映画とでも言えばいいのか特にストーリー性のある話ではなかった。
ただ、ジャングルという非日常の世界でターさんが色々な脅威に晒されながらも、強く生き抜く。
そんな話だ。
ストーリーの評価は難しいけど、サーバント達も最後まで見る事が出来たし、ファミリー向けの映画としては悪くなかったかもしれない。
問題は、オッサンがこの映画を20階層の参考にと渡してくれた事だ。
本当に20階層でこの映画のようなアクシデントが頻発するのか、それが問題だ。
さすがに蔦のロープでジャングルを駆け巡るようなシーンはないだろうけど、ジャングル未体験の俺ではイメージが湧き辛い。
むしろ、このDVDを見てしまったせいで、頭の中をターさんが駆け巡っている。
たとえジャングルであってもベルリアだけは問題なくいける気もするけど、後のメンバーはかなり厳しいかもしれない。
ターさんは映画の主人公だから、劇中で死ぬような事はなかったけど、普通に死ぬ。
本当にこれが全て降りかかってきたら俺なら普通に死んでしまう。
「海斗、まかせとけって。わたしがいればこんなところ焼き払ってやるぞ?」
うん、やっぱりルシェはあてにならない。
これは一度他のメンバーにも見てもらった方がいいかもしれない。
そう思い、地上に戻ってからすぐ連絡を取って都合のついたミクにDVDを渡しておいた。
もしかしたら、俺の感じ方とは違う感想を持つかもしれないのでメンバーの反応を待ちたい。
できれば、その上で今後の対策を練りたいところだ。
いずれにしても今の段階で俺にできる事は特にないので、家で晩御飯を食べてから、部屋でゆっくりしているとミクから電話がかかってきた。
「海斗! あれはなに?」
「え? なにって」
「この映画本当に20階層の参考になるの?」
「武器屋のオッサンがそう言ってたけど」
「う〜〜ん。今までの中でも厳しくない? 砂漠も結構キツかったけど、それ以上ね」
「まあ、そんな気もする」
「ターさんだから死んでないけど、普通死んでるわよ?」
「やっぱりそうだよな〜」
ミクも俺と同じ印象を受けたらしい。
DVDの内容が真実だとすれば、これから挑むのがとんでもない場所だと思い、慌てて電話をくれたみたいだ。
「ところで海斗、武器屋のおじさんって信用できる人なの?」
「…………」
そうなんだよな〜。
そこも大きな問題ではある。