A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (930)
20階層
ミク経由であいりさんとヒカリンにもDVDをみてもらったが、当然のように反応は良くなかった。
ただ、ミクとも話した通りターさんが本当に20階層をモデルにしているのかどうかも怪しいので、とにかく20階層に行ってみてから考える事になった。
週末に向け、1階層で魔核を集めつつ、イレギュラーにも対応できるようにイメージトレーニングも重ねておく。
土曜日を迎え、いよいよ20階層の探索だけど、今日と明日は早めに帰らないといけないのでサクサク進みたいところだ。
念の為に虫除けスプレーをかけておいたけど、俺の場合スーツを着ているので露出部分は首から上と理力の手袋に覆われていない手の部分だけなので、通常の虫であればまず問題ない。
「それじゃあ行きますよ」
俺達は一階層のゲートを潜り20階層へと跳んだ。
ここまでは前回来たことがある。
問題はここからだ。
周囲の様子を窺うが、俺達の他に探索者は見当たらない。
このタイミングでシルフィー達を喚び出す。
「今日もよろしくな」
「はい、ご主人様」
「ここは20階層か?」
「そう。この先は言ってた通り獄炎は禁止だからな」
「わかってるって。どうせなら全部焼いてもいいんだぞ」
「はい、はい」
「マスター、サポートはおまかせください」
「ああ、ティターニア頼む」
しばらく進むと情報通り、眼前には密林と呼ぶのふさわしいフィールドが広がっていた。
そして、そこに踏み込んだ瞬間周囲の空気が変わったのを感じる。
「蒸し暑いですね」
「ああ、想像以上だな。以前海斗が使っていた空調マントが役に立つんじゃないか?」
「あれカーボンナノチューブのスーツと相性がイマイチなんですよね」
気温は高く、湿度も高い。
あっという間に身体からはじっとりと汗が滲み始める。
そして匂いも違う。
湿った木々の匂いが鼻をつく。
今までのどの階層とも違う。
そしてもっとも違っているのが、通路の幅がぱっと見では判断できない。
完全なオープンフロアでは無いようだけど今までのようなあからさまな通路という感じではない。
つまりは、単純に通路に沿って進めばいいという訳ではないので、進むペースは格段に遅くなる。
そして足元もよくはないので歩く速度も少し遅めだ。
「ヒカリン、マッピング頼んだ」
「まかせてください。がんばります」
これは今までの階層よりもマッピングの正確さを求められる。
マッピングを担当してもらっているヒカリンには、いつも以上に慎重を期してもらう。
「ご主人様、敵モンスターです」
「一体だけか?」
「いえ、おそらくは3体です」
「方向は?」
「三方に散ったようです」
20階層初めてのモンスターは3体。
三方というくらいだから前方からだけとは限らない。