Ascendence of a Bookworm: I'll Stop at Nothing to Become a Librarian RAW novel - Chapter (160)
それぞれの言い分
「ヴィルマ、ここまでありがとう。もう戻ってください」
「ですが、マイン様……」
ヴィルマはフランとデリアの二人を気にしたように、ちらりと視線を向ける。けれど、この二人の言い分をすべて聞き終わるまでヴィルマがここにいたら、孤児院の方に支障が出るだろう。
ヴィルマを孤児院へと帰らせた後、わたしは二階へと上がる。寝起きなのか、どこかぼんやりとした雰囲気のロジーナがゆるりと椅子から立ち上がった。
「おかえりなさいませ、マイン様」
「ロジーナは事情を知っていて?」
「いいえ、デリアの声に起こされましたので、詳しいことは存じません」
休息を取るために、昼寝をしていてもらったのに、それを中断させられたらしい。口数が少なくなっているロジーナは、表情に出さないものの、多分とても機嫌が悪い。
「もう少し部屋で休んでいてちょうだい」
「そうさせていただきます」
ふらりとした足取りでロジーナが部屋へと下がっていく。その後姿を見送った後、わたしはテーブルへと向かい、デリアにお茶を入れるように言った。お湯を沸かし、ゆっくりと丁寧にお茶を入れる過程で少しでも心を落ち着けてくれればいいなぁ、と淡い期待を込めて。
「悪いけれど、全く話が理解できないわ。フラン、詳しく聞かせてちょうだい」
デリアが厨房へと向かって静かになったので、わたしは先にフランから事情を聴くことにした。フランは小さく頷いて、口を開く。
「孤児院から戻ってくるデリアと神官長からの伝言を持ってきたアルノーが途中で会ったようで、二人が一緒に部屋へと戻ってきました。その時、私はちょうど休憩中だったのですが、デリアに呼ばれて、急いで身支度してアルノーと会ったのです」
どうやらフランはロジーナと同じように昼寝していたところを叩き起こされて、アルノーの対応をしただけではなく、デリアが吹っかけてくる口論に付き合っていたらしい。
わたしが部屋にいれば、フランを起こすことなく、デリアとわたしで何とか対応できたはずだ。
「不在にしていて悪かったわ」
「いいえ、マイン様がいらっしゃっても、アルノーが来た場合は呼んでいただかなくては困ります」
フランは軽く首を振った。神官長からの伝言ならば、フランはきちんと話を聞いておかなければならないらしい。
「それに、アルノーの用件は本当に伝言だけでしたから、別に面倒はなかったのです。デリアが激昂したのが予想外だったのです」
フランが厨房の方へと視線を向けて、軽く息を吐く。それだけで、デリアに突っかかられるのがどれほど大変だったのか、よくわかった。
「それで、どのような伝言をいただいたのかしら?」
「神官長がディルクの養子縁組を探してくださったそうですが、やはり難しいようです」
フランの説明によると、どうやら神官長がディルクの養子先を探してくれていたようだ。そして、結果としては残念な結果となったけれど、気を落とすことなく孤児院で養育するように、との連絡をアルノーが持ってきたらしい。
……神官長が律儀すぎる。
男子で養子縁組は難しいだろうと言われた時点で、わたしはほとんど諦めていたし、自分が貴族の養女となってから、ディルクと契約しようと思っていた。そのため、養子先を探す話をしたことさえ、半分ほど忘れていた。
お茶の準備を終えて、わたしの前へとカップを出していたデリアが眉を吊り上げて、フランを睨んだ。
「どうしてディルクを養子にやるというお話が出てくるのです!?」
フランからの話を聞いた分では、ディルクが身食いだという情報はアルノーもフランも持っていないように思えた。現に、デリアの怒りは自分の知らないところで、ディルクの養子話が進行していたという一点に集中している。
わたしはそっと目を伏せた。ディルクが身食いであるという情報は伏せろと神官長から言われている。魔力を持っているため、養子先を探していたという事情を伏せて、何とデリアに説明すればよいだろうか。
「マイン様とご家族といい、あたしとディルクといい、神官長は家族を引き離す趣味でもおありなの!?」
「そのような趣味があるわけがない。神官長には神官長のお考えがあるのです」
どうやらデリアの頭の中では、神官長は家族を引き離す悪い人になっているようだ。このような言われ方をすれば、神官長を尊敬しているフランがうんざりして、少しばかり語気が荒くなるのも仕方ない。
「デリア」
わたしは深呼吸するようにゆっくりと息を吐いて、デリアを見た。
「ここには子供を育てられる灰色巫女がいませんから、もし、ディルクを養子にほしがる方がいれば、養子に出した方が、ディルクは幸せになれるのではないかと思って、わたくしが神官長にお願いしたのです」
「なっ!? マイン様があたし達を引き離そうとお考えですの!?」
デリアの怒りの矛先がわたしへと回ってきた。わたしは首を振って否定する。
「違うわ。デリアも最初はディルクの面倒を見たがらなかったでしょう? 誰も面倒を見たがらないならば、と思ったのです」
自分の発言を一応覚えていたのか、ハッとしたように目を見開いたデリアがほんの少し口籠る。
「そ、それは、ほんの最初のことではないですか」
「えぇ、わたくしが神官長に相談したのも、ほんの最初のことですわ」
デリアがぐっと言葉に詰まって、怒りの勢いが止まった。
「子を育てられる灰色巫女がいなくて、どのように面倒を見ればよいのかわからない。乳母を雇おうにも、孤児院へと来てくれる者はいませんもの。夜に面倒を見てくれるフランやロジーナの負担も大きいですし、養子としてくれる者がいれば良いと思ったのです」
今は一応昼寝の時間を取ったり、デリアが面倒を見る時間を増やしたりすることで、ディルクの面倒が見られているけれど、何もかもが手探り状態だった最初の数日間は本当に負担が大きかった。
それを見て、知っているデリアは不満そうにわたしを睨むけれど、口をむぐむぐさせるだけで、言葉にはしない。
「神官長は律儀に養子先を探してくださったのでしょう。おそらく見つからないだろう、と最初に言われておりましたので、わたくしは期待しておりませんでした。けれど、神官長は尽力してくださったのです」
「……そうだったのですか」
デリアが納得したように肩の力を抜いた。
「わたくしはこれほどデリアがディルクの面倒を見てくれるとは思いませんでしたから、今となっては、養子縁組のお話が流れて良かったと思います。このまま孤児院で育てるように、とアルノーは伝言を持ってきてくれたのでしょう?」
「はい、気を落とすことなく養育に励むように、と神官長がおっしゃったそうです」
フランの口添えにデリアは何度か瞬きをした後、わずかに残る不安を打ち消したいというような顔で、わたしを覗き込んできた。
「……では、マイン様があたしとディルクを引き離すことはないのですか?」
「えぇ、デリアがディルクを大事にしてくれていることはよくわかっているし、家族と離れたくない気持ちは、わたくし自身がよく知っていますから」
「……よかった」
ホッと安堵したようにデリアが自分の胸元を押さえて、息を吐いた。
「あたし、ディルクと離れたくないんです。初めての、家族だから」
デリアが納得してくれて、十日ほどの日が過ぎた。
ヨハンに頼んでいた中で、一番わかりやすかったのか、創作意欲を刺激したのか、アイロンができあがってきた。そこで、二冊目の絵本の印刷を始める前に、版紙を蠟引きして強化してみた。ガリ切りするのでなければ、ロウが多少厚くても問題ない。
「これでいっぱい印刷できるはず!」
蠟引きして耐久性が増した版紙を前にわたしが胸を張ると、ルッツは腕を組んで首を傾げた。
「……なぁ、マイン。神官長からは細々と作れって言われたんじゃなかったか?」
「蠟引きしておけば、再利用できるようになるから。細々と、長く使えるようになるよ」
「目ぇ逸らすな!」
ルッツには怒られたけれど、わたしは絵の版紙に関しては譲る気はない。字の方はいずれ活版印刷を使うことができるけれど、絵は描き直しになるのだ。
「ヴィルマの労力を減らすためだよ。何度か使えるならその方がいいでしょ?」
絵を描いて、繊細に切り込むヴィルマの絵を知っているルッツは苦虫を噛み潰したような顔で、眉間を押さえた。
「……絵だけだからな」
絵の版紙だけすべて蠟引きして、わたしは版紙をギルに預けた。マイン工房での印刷は、もうギルと灰色神官達に任せられるようになっているのだ。
ギルに工房を任せられるようになってきて、ルッツの手が少しだけ空いた。そのため、わたしはルッツとダームエルと一緒に工房やギルベルタ商会へと出入りする日と神殿に行く日を交互にしている。
ドアや窓枠が入り始めたイタリアンレストランの完成も近く、ベンノと一緒に見に行ったり、インク工房へ行って、ハイディの研究結果を教えてもらって表にまとめたり、忙しい。
「マイン、急に黙り込んだけど、何を考えているんだ?」
「カミルのこと」
「またか」
忙しいわたしの頭を占めているのは、カミルのためのおもちゃ作成である。
木をくり抜いて作ったガラガラはディルクが気に入っているけれど、自分で持とうとしては、自分の顔に落としてよく泣いているらしい。カミルの可愛い顔に木のおもちゃが落ちたら痛くて可哀想なので、痛くないおもちゃを作ってあげたいのだ。
「ルッツ、わたし、『鈴』が欲しいな」
「突然、何だ?」
「そうしたら、手に握れるぬいぐるみタイプのガラガラが作れるんだよ」
鐘やベルと言われるタイプの音を出す金属製の物はあるけれど、日本でよく見ていた丸い鈴をここで見たことがない。
綺麗な音を出すことは難しいかもしれないけれど、構造は難しくないので、ヨハンに頼んでみよう。
「よし、鍛冶工房に行こう」
インク工房から鍛冶工房は遠くない。わたしはうきうきと鍛冶工房へと向かう。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ。おーい、グーテンベルク! マイン様が来たぞ!」
顔を見たこともない職人が普通の顔で奥に向かって「グーテンベルク」と呼びかける。もうからかいの種にもならないほど完全に浸透してしまったようだ。奥から出てきたヨハンが「グーテンベルクって呼ぶな」と力なく言っても、「はいはい」と軽く流されている。
「マイン様、今日はどんな御用で? まだ鉄筆はできていないんだけど」
ガリ切りに使う鉄筆は数種類頼んであるので、完成にはもう少し時間がかかるらしい。
「あのね、ヨハンから他の見習いに仕事を回しても良いから、こういう『鈴』を作ってほしいのです」
わたしが鈴の設計図をその場で描き始めると、ヨハンは興味深そうに覗き込んできた。やはり、作るのはベルタイプの物ばかりで、丸い鈴は無いようだ。
「マイン様、この切り込みは飾りかな?」
「音を響かせるために必要なのです。この形でなくても構いませんけれど、必ず切り込みは入れてください。中玉が落ちない大きさでお願いします」
多分、切り込みの大きさや金属の厚み、中玉の大きさや素材で、鈴の音が全く違うのだと思うけれど、そこまで詳しくは知らない。形がそれらしくなっていれば、音は鳴るはずだ。そして、できた小さい鈴を中玉にしてもう少し大きい鈴を作ってもらう。二重の鈴にすると響きがとても良いのである。
「……確かに、これならそれほど難しくはないな。これも印刷に?」
「いいえ、これは赤ちゃんのおもちゃに使おうと思っているのです」
わたしだって、たまには印刷以外の物も注文するよ、と唇を尖らせると、ヨハンはとても嬉しそうに笑った。
「本や印刷に関わりのない注文なんて、初めてじゃないか」
本にしか興味がない子だと思っていた、とヨハンがどこか安堵したように言った。今はカミルのことで頭がいっぱいだが、基本的にわたしは本にしか興味がない。せっかく嬉しそうなのだから、このまましばらく放っておこうか、と思っていると、
「マインは本にしか興味がないぞ。グーテンベルクの称号から逃れられると思ったら大間違いだ」
ルッツがさくっとヨハンを落とし込んだ。
わかりやすく落ち込んで、「わかってるけど、儚い希望を持ってもいいじゃないか」と嘆いているヨハンに、「ヨハンも早くマインに慣れないとな」とルッツはさらに追い打ちをかける。
「そうそう。ルッツはわたしの扱いに長けた、立派なグーテンベルクだもんね?」
わたしの言葉を聞いたルッツがヨハンと一緒に落ち込んだ。ルッツのことを褒めたつもりなのに、何故だろう。解せぬ。
「今日はこのまま帰宅します」
鍛冶工房から出て、直接家へと帰ろうとしていると、カンカンカンと非常事態を知らせる鐘が鳴り始めた。直後に、東門の上に魔術具を使った救援信号のような赤い光が立ち上がる。
鐘の音と光に一番に反応したのは、騎士であるダームエルだった。眉を寄せ、東門の赤い光を一睨みすると、即座にわたしを担ぎ上げた。
「急ぐぞ」
ダームエルはそれだけ言って、家までの道を直走る。ここ最近、わたしに付き合って下町をうろうろさせられているせいか、入り組んだ路地を迷いなく進んでいく。
わけが分からないと言うように、ルッツが目を白黒させながら、それでもダームエルについて走ってきた。
「もう道はわかる。お前は帰宅するなり、店に戻るなり、好きにしろ」
ついてくるルッツにそう言い捨てて、ダームエルは走っていく。
普段ならば、井戸の広場で解散するのだが、今日はわたしを担いだままダームエルは階段を駆け上がっていき、ドンドンと玄関の扉を叩いた。
「はい、どなた?……マイン!?」
出てきた母を半ば押しのけるようにして、ダームエルは家の中に入り、わたしを下ろした。そして、驚きに目を瞬く母とわたしを厳しい表情で交互に見つめる。
「東門で騎士団の助けを要する事態が起こったようだ。巫女見習いの安全が確認できるまで、しばらくここで待機する」
突然の騎士の来訪に母はぎょっと目を剥いていたが、事態を呑みこめたのか、すぐに頷いた。
「マインをよろしくお願いいたします」
ダームエルはすぐに対処できるように玄関扉の前に立った。カミルが泣き出したので、母は寝室へと向かっていく。わたしは少し息を切らせているダームエルのために水を汲んだ。
「あぁ、巫女見習い。すまないな」
一気に水を飲み干すと、ダームエルはゆっくりと呼吸し、息を整えていく。
これ以上、ダームエルの周りをうろうろしても邪魔になるだけなので、わたしは物置へと布を探しに行った。鈴入りのぬいぐるみのガラガラを作成するために、どんな布があるのか知りたかったのだ。
「白が多いし、うさぎにしようっと」
触り心地のよさそうな布を見つけた後、台所のテーブルで、型紙作りをしていると、以前に見たことがある魔術具の鳥が壁をすり抜けて飛び込んできた。
突然部屋の中に現れた鳥にわたしがビックリしていると、ダームエルは鳥に向かって腕を差し出す。その腕にバサリと降り立った鳥が口を開いた。
「ダームエル、巫女見習いを神殿か自宅に送り届けた後、騎士団に合流するように」
低い男性の声で同じ言葉が三回繰り返され、直後に鳥はぐにゃりと形を崩して、黄色の魔石に戻る。ダームエルは神官長がしていたように、どこからか光るタクトを取り出して、石をコンコンと叩きながら、何か唱えた。魔石はまた鳥へと形を変える。
「現在、巫女見習いの自宅で待機中。すぐに戻ります」
そう言ってダームエルがタクトを振ると、鳥は壁に吸い込まれるように消えていった。
「巫女見習い、私は情報を得るためにも騎士団に合流してくる。君は私が迎えに来るまで絶対に家から出るな」
「はい」
井戸の広場にも出ないように、と念を押し、ダームエルは家を出ていった。
一体どのような緊急事態だったのか、情報が全くないのでわからないけれど、騎士団からダームエルが合流を要求されるということは、わたしに関係がある事態なのではないかと思う。
「マイン、騎士様は帰られたの?」
カミルの授乳を終えた母が不安そうな顔で寝室から出てきた。騎士がいれば、安心していられたのだろう。今、この家にいるのは、わたしと母とカミルだけだ。何かあった時に対処できる人がいない。
「騎士団の人に呼ばれて、帰って行ったよ。ダームエル様をここに残す必要がないと、騎士団の方が判断したわけだから、多分、大変な事態は回避されたんだと思う」
わたしの言葉に母が少し安心したように笑った。
「終わったから帰られたのね。よかったわ」
ダームエルからの情報を待つより早く、その夜、父が情報を持って帰ってきた。春から父は東門で勤務しているので、まさに今日の騒動の中心にいたのだ。
「父さん、今日は一体何があったの?」
「マインには話しておいた方がいいだろうな」
夕食後、父は舐めるようにゆっくりとお酒を飲みながら、ゆっくりと息を吐いた。
「余所の貴族が街へ入れろと騒ぎを起こしたんだ」
今日、起こった緊急事態は余所の貴族が無理やり街に入ろうとしたものだったらしい。
春から貴族の出入りについて、色々と規則が変わった。その中に領主の許可なき貴族を入れてはならないというものがある。今までは貴族同士の紹介で入れていたものが入れなくなったのだ。
この領地の貴族ならば、冬の集まりの中で領主の言葉を直接聞いているが、別の領地の貴族は規則が変わったことなど知らない。平民である門番に止められて怒り爆発したらしい。
「そのような事態が起こることは、当然予測済みだったようで、門で貴族絡みのトラブルが起こった場合は、騎士団が出動することになっているんだ」
「へぇ、領主様も色々と考えてくれているんだね」
本日、騎士団から預けられた救援信号用の魔術具を動かして騎士団を呼んだのは父だったらしい。赤い石の埋め込まれたハンマーで、預けられていた赤い石を叩いたら、救援信号が上がる仕組みになっている魔術具だ。春の祈念式の時に馬車に置かれていた魔術具と同じものだろうと思う。
平民相手にはどんな振る舞いでもできるが、その街の貴族が相手になると、余所者では分が悪い。領主の許可がないと街に入れないと騎士団から説明された余所者貴族は、ブツブツと文句を言いながら、帰って行ったようだ。
「貴族の起こす問題は、貴族に解決してもらうのが一番だ。正直非常に助かった」
「それにしても、ここの貴族の招待状を持っていたんでしょ? 領主の許可がなければ入れないって、わかっているのに、何で招待状を出したんだろうね?」
「さぁな」
春になる前に預かった招待状を持っていたということだろうか。首を傾げてみても、正解などわかるはずがない。
首を傾げるわたしに、父は真面目な顔を向けた。
「マイン、身の回りにはくれぐれも気を付けるんだ。前に神官長が言っていただろう? 余所の貴族がお前を狙っているかもしれない、と」
父からの注意にわたしは神妙な顔でゆっくりと頷く。
「危険な貴族が入れないように、入ろうとした場合はすぐにでも騎士団を呼んで、父さんは門を守る。マインも護衛からは離れないように気を付けるんだ」
門と街と娘を守る、と言った父の言葉が嬉しくて、わたしはこんな事態なのに、思わず笑顔になってしまった。