Ascendence of a Bookworm: I'll Stop at Nothing to Become a Librarian RAW novel - Chapter (165)
騒動の責任
ジルヴェスターとカルステッドは素晴らしい反応速度で盾の中に飛び込んで、即座に扉を閉めた。
光るタクトから飛び出した魔力が渦巻くようにして、ぶつかり合う。勢いには大きな違いがあり、神官長の魔力に押されて、伯爵がぶっ飛んだ。
父と同じような火傷を負って、伯爵が床をゴロゴロとのたうつ。ぐえぇっと言っている声が本当にガマガエルっぽい。
神殿長は神官長が光の帯でぐるぐる巻きにしていたせいで、死ぬことなく生きている。強大な魔力のぶつかり合いを間近で見るのは、かなり恐怖だったようで、目を見開いたまま、完全に顔が固まっている。
けれど、魔力の爆発に巻き込まれて、自衛さえできなかった灰色巫女と倒れていた男達は、影も形もなかった。
「マイン、証拠隠滅とはこうするのだ。どうせならば、これも隠滅するか。本来、この街にいるはずもない者だからな」
神官長は冷たい目で、グケグケ言っているガマガエルを見下ろしながら、油断することなく光るタクトを突きつける。
ぐひぃぃっと叫びながら、伯爵は必死で後ずさるが、神官長はできた距離を数歩で詰めていく。その容赦のなさは味方の時は本当に心強いけれど、絶対に敵に回してはならないものだ。
「フェルディナンド、もういいだろう。マインもこの盾を消せ。もう必要ない」
そう言いながらジルヴェスターがバサリとマントを翻して風の盾から前へと進み出た。くいっと軽く顎を上げて、神官長へ下がるように、と指示を出す。
わたしはジルヴェスターの指示通り、指輪に魔力を流すのを止めて、風の盾を消した。わたしと同じように神官長は光るタクトを消すと、数歩後ろに下がり、胸の前で手を交差させて跪く。
「……え?」
わたしは神官長が跪いたのを見て、ポカンと口を開けた。青色神官は建前上身分差がないことになっているから、神殿内では跪く必要はない、と教えられてきた。神官長の取った態度は明らかに青色神官であるジルヴェスターに対するものではない。
……ジルヴェスター様って、神殿長より実家の身分が高い青色神官じゃないの? 偽物神官?
祈念式の道中で見た親しげな雰囲気から、神官長とジルヴェスターが長い付き合いであることはわかっていたけれど、このような明確な身分差を感じさせる言動を神官長もジルヴェスターも取ってはいなかった。
祈念式で見せた関係が私的なやり取りだとすれば、今は公的な場であるような振る舞いだ。
つまり、ジルヴェスターは青色神官ではない上に、騎士団において一番身分が高いと言い放っていた神官長が跪く身分を持っているということになる。
……もしかして、わたし、とんでもない人の養女になるんじゃない?
つつーっとこめかみを冷汗が伝う。
神殿長を押さえられる身分の持ち主で、神官長を跪かせる人だ。そうでなければ、わたしを含めて、周りの人を助けることなどできないのかもしれないけれど、予想外の展開に心臓がバクバクと大きな音を立て始めた。
「おぉ、ジルヴェスター。良いところに来てくれた。この戒めを解くように、その無礼者に命じてくれ」
神殿長はぐるぐる巻きで転がったまま、神官長とジルヴェスターを交互に見上げる。ジルヴェスターはちらりと跪く神官長を見ただけで、戒めを解くように命じはしなかった。
「騎士団からの要請により急ぎ戻れば、これは一体何の騒ぎか?」
「……だ、誰だ?」
ガマガエルが目をきょどきょどと忙しなく動かしながら、ジルヴェスターと神殿長を見た。状況の変化に全くついていけていない。
ジルヴェスターの一歩前に出たカルステッドが仁王立ちし、ぎろりと伯爵を睨んだ。
「こちらは、アウブ・エーレンフェストである」
「な、ななな……」
ガクガクと体を震わせて、ガマガエルがジルヴェスターを指差して「まさか、そんな、嘘だ」と呟く。全くわけがわからなくて首を傾げるわたしの斜め後ろで、父がザッと跪いた。
わたしが、すすすっと父に近付いて、こっそりと小さな声で「父さん、誰かわかったの?」と尋ねると、青ざめた父は小声で口早に答えをくれた。
「この街の名前を持つ方なんて、一人だけだ。領主様に決まっている」
わたしは叫びかけたけれど、必死に口を押さえて、驚きを呑み込んだ。
中身小学生男子のジルヴェスターが領主様? 初対面の女の子に「ぷひっと鳴け」って言ったり、簪を取りあげてみたり、祈念式でアクロバットを披露したり、護衛も連れずに下町の森に狩りへ行っちゃうような人が領主? え? この街、大丈夫?
「相手が誰かわかった上での、その態度は何だ!? 無礼千万! それが領主に対する態度か!? 控えよ!」
「ははーっ」
内心、この上なく失礼で失敬な事を考えていたわたしは、伯爵に向って投げられたカルステッドの叱責に飛び上って驚き、即座にその場に平伏した。
「……マイン。お前は一体何をやっているのだ?」
カルステッドの驚きと呆れが混じった声にわたしがそろそろと顔を上げると、皆が跪いて胸の前で手を交差させている中、わたし一人が平伏していた。奇異なものを見る視線が痛い。
「ひ、控えよって言われたから……つい」
かなり大事な場面でやってしまったようだ。わたしが慌てて姿勢を正して跪くと、ジルヴェスターが辺りを見回した。その表情はわたしが見たことがないような真剣で厳しい表情だった。最初からこの顔だけ見ていれば領主だと言われても納得できただろう。
ジルヴェスターは神殿長に視線を止めて、目を細める。
「さて、事情を聞かせてもらおうか、叔父上」
なんと、この二人は親戚だったらしい。つまり、ジルヴェスターの養女になれば、神殿長がもれなく親戚としてついてくるということだ。こんな親戚いらない。
「おぉ、聞いてくれるか、ジルヴェスター」
そして、神殿長の口から語られたのは、実に自分にとって都合の良い、盛りすぎた話の数々だった。ガマガエルをこの街に呼ぶことになった理由も、この騒動の原因もおとなしく捕まらないわたしのせいで、自分が苦しい思いをしているのもわたしのせい、神殿内で何か起こった時はわたしのような平民が青色の衣をまとっているせいだ言う。
八割はわたしのせいで、あとの二割は神官長のせいだった。居留守を使って、騙したのだそうだ。神殿長をはめようとしたらしい。馬鹿じゃないか。帳簿をほとんど全部計算させられたわたしは知っている。神官長が神殿長をはめようとしているのは居留守なんかではない。断じて違う。神官長はもっと怖いのだ。
「ビンデバルト伯爵、其方の意見も同様か?」
神殿長の話が同じことの繰り返しになってきたことにうんざりした顔を見せ、ジルヴェスターは伯爵に視線を移す。ガマガエルの主張は神殿長と同じで、ほとんどわたしのせいだった。
「では、フェルディナンド。証言及び証拠品の提出を」
「かしこまりました」
神官長は淡々と偽装書類で伯爵が街に入ってきた件を述べる。それに加えて、わたしが下町で襲われた事件についても報告した。問題のあった東門に勤める父が意見を求められ、神官長の証言を更に門番の視点から補強していく。
「他領の貴族である私が新しく決まった規則や偽造書類か否かを知るはずがない。招かれたので、来ただけだ。それが大きな罪となりますか?」
下町で起こった襲撃事件は無関係だと主張して、伯爵は自分が被害者だと言い募る。
「アウブ・エーレンフェスト、私はこの書類が偽造だとは知らなかったのです。許可をいただいたものだとばかり……」
ガマガエルはふぇっふぇっとへつらうように笑いながら、懐から書類を取り出した。それをカルステッドが押収して、ジルヴェスターに渡す。ジルヴェスターは偽造書類を見て、ほんのわずかに唇の端を上げた。「証拠品ゲット」と言いそうな顔にわたしはハッとした。伯爵から押収してほしい書類は他にもある。
「伯爵は養子縁組だと騙して、ディルクと従属契約を結んでいますけれど、それは書類の偽造には当たらないのですか?」
「この子供は嘘を吐いています。私は最初から従属契約を結んでいた。貴族たる私が平民の孤児と養子縁組などするわけがない」
ガッと目を見開いてわたしを睨んだ伯爵は、即座にわたしを嘘吐き扱いした。わたしの後ろでディルクを抱きしめたまま、跪いていたデリアがキッと強い瞳をガマガエルに向ける。
「神殿長も伯爵も養子縁組だとおっしゃいましたし、書類はある項目だけ二重になっていましたわ」
「黙れ!」
「……その契約書を見せてもらおう」
すでに二重になっていた部分が外された書類はいくら見たところで、ただの従属契約の契約書にしか見えない物だ。伯爵にとっては痛いところがないのだろう、あっさりと書類をカルステッドに向けて差し出した。
「どうなんだ、フェルディナンド?」
「私が目を通したのは、養子縁組の書類でございました」
神官長がすぅっと目を細めて、伯爵を見る。平民であるわたしや灰色巫女見習いであるデリアの証言ならば、身分差で簡単に潰してしまえても、貴族である神官長の意見は潰せない。
神官長をただの神官だと思って、すでに色々やらかしていたらしい伯爵の顔色が変わっていく。
「見間違いではないですか? それに、相手はどうせ身食いの孤児です。養子縁組でも従属契約でも大して変わりはしない。違いますか?」
変わらないわけがないけれど、変わらないことにしたいらしい。自分の形勢が良くないことを察したらしいガマガエルは、わたしを指差しながら、いきなり話題を変える。
「それより、あの平民に罰を与えていただきたい!」
「平民とは?」
ジルヴェスターが軽く眉を上げて、話題に食いついた。そこに勝機を見出したのか、ガマガエルは唾を飛ばすような勢いで訴え始める。
「あのマインという小娘は、温情により青の衣を与えられているだけの平民だときいています。それなのに、ずいぶんと傲慢でやりたい放題ではないですか。貴族に向って魔力を打ち、私を守ろうとする私兵をずいぶんと減らしてくれた。危険で凶暴極まりない。一体何を考えているのか……」
次々と出てくるあまりの言い分に、わたしはびっくりして、目を瞬いた。このガマガエル、脳に欠損や障害があるようだ。
「捕えろとおっしゃって、私兵をけしかけてきたのは、そちらではないですか。まさか、覚えていないんですか?」
「平民が貴族に逆らうな!」
わたしを睨んで激高した伯爵に、ジルヴェスターがニヤリとした笑みを浮かべる。
「ビンデバルト伯爵、お言葉だが、其方が言う平民の小娘は私の養女だ」
「なっ、何だと!? 領主が平民と養子縁組!?」
「養子縁組の契約が済んでいる。マイン、こちらに来い」
「はい」
わたしは手招きされるまま、立ち上がってジルヴェスターのところへと向かう。ジルヴェスターが首元の鎖を引き、ネックレスをするりと引き出した。
「これがその証拠だ」
「この小娘が領主の養女、だと……?」
「そうだ。マインが平民であれば、其方の言い分が全て通ったが、すでに私の養女となっている。つまり、其方の罪は禁止された街に知らずに入っただけではない。領主の一族に対して攻撃したことになる。護衛は重傷、本人にも魔力で攻撃を仕掛けたのだろう?」
ジルヴェスターはフンと鼻を鳴らしながら、わたしに向って「何をされたか述べろ」と言った。
「魔力攻撃だけではございません。下町で襲撃も受けましたし、従属契約も無理やり迫られました。ほら、この傷はこの方にナイフで付けられたのです」
わたしは手のひらを広げて、やっと血が止まってきた傷を見せる。顔色を変えたガマガエルを見ながら、わたしは自分が得ている情報を開示していった。
「それから、春の祈念式に襲ってきた男も、この方と従属契約をしている人だったようです。春先といい、今回といい、わたくしに攻撃を仕掛けたせいで、多くの手駒を失ったと嘆いておりましたから」
平民の証言には何の力もなくても、領主の養女ならば通る。そして、春の祈念式にはジルヴェスターが同行していた。ガマガエルは知らなかったのだろうが、彼は領主一行に強襲をかけたことになる。
「ほぉ? 罪状は他にもありそうだな。ビンデバルト伯爵、其方の身柄を拘束する。確定している罪状は、街への不法侵入と、領主の養女とその護衛の騎士に対する攻撃だ」
そこで一度言葉を切って、ジルヴェスターは目を細めた。
「疑わしきは祈念式一行への襲撃だが、これに私が同行していた以上、そちらの領主からの宣戦布告と見做すことになる。領地を揺るがす可能性のある犯罪者として、其方の全ての罪状を詳らかにし、其方の領主に宣戦布告の意図を問い、その上で沙汰を言い渡す。捕えろ」
カルステッドが光るタクトを取り出して、ブンと振るうと光の帯が飛んでいった。ぶくぶくと口の端から泡を吹いて目を剥いているガマガエルは抵抗することなく、捕えられる。
つかつかとカルステッドは貴族門のある扉の方へと向かうと、扉を開け放ち、魔力の光を打ち上げた。すぐに貴族門が開き、騎士団が伯爵と意識のないダームエルを回収していった。
騎士団の作業を横目で見ていたジルヴェスターは、騎士団が撤退していった後、残された神殿長へと視線を向けた。
「ジルヴェスター、どこの女が生んだかわからぬようなフェルディナンドの意見など聞き入れる必要はない。それから、マインのような愚かな平民を養女にするなど、一体どのように騙されたのだ。領主を誑かそうとするなど、何という恐ろしい子供だ。すぐに縁組を解消しなさい。これは叔父としての忠告だ」
床に転がされたままだが、神殿長は偉そうに忠告する。うんざりとしたようなカルステッドと神官長の表情を見れば、いつもの言葉だとわかる。
「フェルディナンドは母が違えど、私の弟です。優秀で実によく働いてくれています。侮辱しないでいただきたい」
「異母兄弟など信用ならぬ! 姉上は……」
「それは、其方の家の事情です。我々は違う」
……領主の異母弟って、前領主の息子ってことだよね? そりゃ騎士団が跪くわけだよ。
わたしは知らなかった神官長の身の上話に目を瞬いた。異母兄弟の二人が仲良くするには、神殿長やジルヴェスターの母親が邪魔な存在だったに違いない。もしかしたら、神官長が神殿に入っているのも、その辺りの事情が関係あるのだろうか。
「其方は儂の可愛い甥だ。姉上の大事な息子だ。……不幸なことにはなってほしくない。儂の忠告を聞き入れてくれ、ジルヴェスター」
哀れな老人のような雰囲気ですがるような声を出した神殿長を、ジルヴェスターは冷たい視線で見下ろした。
「私はすでにアウブ・エーレンフェストだ。今回こそ、私は領主として、肉親の情を捨て、裁定する」
「なっ!? そのようなことは姉上が許さぬぞ」
どうやら、今まで神殿長がやらかしたことは、領主であるジルヴェスターの母親が肉親の情で揉み消したり、口を出したりしていたようだ。横暴で傲慢で偉そうな人だと思っていたが、領主の母が味方ならば、身分差が何もかもを覆すようなこの街ではやりたい放題だっただろう。
「叔父上、其方はやりすぎた。もう母上にも庇うこともできない。母上もまた公文書偽造と犯罪幇助の罪に問われるのだから」
ジルヴェスターは神殿長を裁くために、自分の母親も共に裁くことにしたらしい。多分、母は神殿長を庇って口を出してくるだけで、隔離できるほど罪を犯したことがなかったのだろう。
今回は実の息子とはいえ、領主の命に背き、余所者を入れるために公文書を偽造という明らかな罪を犯した。母と叔父をまとめて一掃するつもりなのだろう。
「ジルヴェスター、其方、実の母を犯罪者にするつもりか!?」
「其方のせいだ!」
非難して叫んだ神殿長をジルヴェスターが怒鳴りつける。
「其方がこれまで犯した罪は、多すぎて数えきれないほどだ。弟可愛さに母上が庇い続けたから、このようなことになった。思いつく限りの罪を挙げ連ね、其方は処刑し、母上は離宮に幽閉する。私の統治に其方は必要ない」
はっきりと言い切られ、神殿長は燃え尽きたように虚ろな表情でジルヴェスターを見つめる。しかし、領主の沙汰は覆ることはなかった。
「神殿長、及び、その側仕えを捕えて連れて行け」
「はっ!」
わたしが罪を犯せば、わたしの家族や側仕えに累が及ぶように、神殿長が罪を犯せば、側仕えも共に処罰されるらしい。
カルステッドに呼ばれて騎士達が入ってきて、ぐるぐる巻きのままの神殿長を初め、神殿長の部屋へと向かい、側仕えを捕えてきた。扉の近くにいた灰色巫女も捕えられ、デリアにもその手が伸びる。
デリアが顔を上げて、すがるような視線を向けてきた。
わたしと目が合ったのは、ほんの一瞬。
デリアは諦めた笑みを浮かべて目を伏せると、ディルクを差し出した。
「マイン様、ディルクをお願いいたします」
苦い物を呑みこんだように、眉を寄せて視線を逸らした今のデリアの顔は知っている。孤児院の改革をした時に「助けてほしかった」と訴えてきた時の顔だった。
ずきりと胸が痛む。あの時、わたしはデリアに約束したはずだ。「今度困ったら助けてあげる」と。
「ジルヴェスター様、お願いがございます」
わたしはぐっと顔を上げると、ジルヴェスターに声をかけた。
「言ってみろ」
「デリアの処刑はお許し願えませんか?」
「何故だ?」
ジルヴェスターの深緑の目が面白がるように輝いた。
「デリアはあの『ガマガエル』伯爵と神殿長に騙されただけなのです。色々と行動がまずかったのは確かですけれど、処刑されるほど悪いことはしておりません。それに、神殿長の側仕えであった期間はごくわずかで、この幼さですから、悪事や花捧げにもほとんど関与していないと思われます」
「……ふむ。では、お前がどのように裁くのか、見せてもらおうか」
気に入らない裁きをすれば処刑直行だと、その目が雄弁に物語っている。面白がる中にある厳しい光にわたしはコクリと息を呑んだ。
「デリアには二度と戻りたくないと言った孤児院に戻ってもらいます」
「それだけか?」
「そ、それに、誰の側仕えにもさせず、孤児院で一生を過ごしてもらいます」
孤児の出世先を完全に潰したようなものだ。ジルヴェスターは青ざめたデリアの表情を見て、軽く頷いた。
「罰になるようだから、まぁ、良いだろう」
「恐れ入ります。デリア、貴女には孤児院で過ごしてもらいます。ディルクを初め、孤児達の面倒を見るのが、これからのデリアの仕事です」
「……かしこまりました」
デリアはディルクを抱きしめて、俯いたまま小さく笑った。