Ascendence of a Bookworm: I'll Stop at Nothing to Become a Librarian RAW novel - Chapter (179)
久し振りの再会
神官長から鍵をもらって、すぐさま図書室へ飛び込もうとしたわたしだったが、フランに阻止されてしまった。
「ローゼマイン様、長らく留守にしていたのですから、報告することも話し合わなければならないこともたくさん溜まっているのです。軽くとはいえ、新しい神殿長の威圧を受けたのですから、図書室は荒らされることも、逃げることもございません。急ぎの案件を片付けてから、ごゆっくりと読書をお楽しみください」
わたしが部屋の扉とフランを見比べ、味方になってくれそうな人がいないか、部屋の中を見回す。
フランの後ろに控えるモニカ、我関せずと言うようにフェシュピールを磨いているロジーナ、そして、巻き込まれてはならないと視線を逸らすダームエルと、少し眉を寄せながら難しい顔で成り行きを見ているブリギッテ。誰も当てにならなそうだ。
「でも、明日はルッツ達が来るから、今日の内に少しでも読みたくて……」
神官長が同情するほど、ギルベルタ商会の面々が忙しいのならば、わたしも必然的に忙しくなるはずだ。ゆっくりできるのは今日しかないと考えて間違いない。
時間がないことを訴えると、フランはまるで神官長のような笑顔を浮かべた。
「ご安心ください、ローゼマイン様。図書室に行かなくても、読むべきものはあります」
「え?」
「図書室の本より先に、こちらをご覧ください」
どどん、と積み上げられたのは、木札だった。なんと、フランとモニカがまとめた儀式の手順と祈り文句の数々らしい。
「これを星祭りの儀までに覚えてください」
積み上がった木札の数にひくっと頬を引きつらせたのは、わたしではなく、ブリギッテだった。
「待ちなさい。これを全部ですか? いくら何でも多すぎる。幼いローゼマイン様には……」
洗礼式を終えたばかりの子供に課す量ではない、とブリギッテがわたしを庇う。
貴族に詰め寄られたフランはぐっと苦しそうに眉を寄せて、それでも、じっとブリギッテを見て、静かに言った。
「ローゼマイン様は星結びの儀において、神殿長として出席しなければなりません。神殿長として初めての儀式で失敗すれば、それが後々のローゼマイン様の評価としてずっと残ります。貴族社会でそのような評価を抱えればどうなるか、貴族階級であるブリギッテ様にはご理解いただけると存じます」
神官長の側仕えをしていたフランは、貴族社会のやり方を神官長の間近で学んでいる。神官長がどのようなことに注意して行動するのか、他人に対してどのように評価を下すのか、わかっている。
「なるほど、理解しました。差し出口であったようです」
ブリギッテはそう言うと、すっと下がった。フランが明らかにホッとした顔になって、わたしに木札を差し出してくる。
「どうぞ、ローゼマイン様」
「これ、わたしが書きました。ローゼマイン様のために頑張ったのです」
きらきらとした眼差しでモニカがわたしを見下ろしてくる。フランの主を思う気持ちとモニカの邪気のない笑顔の後押しには勝てない。
「……お、覚えます。気合い入れて、二人の努力に報いるためにも、努力します」
「ローゼマイン様のためにまとめた物が無駄にならなくて本当によかったです。ねぇ、フラン?」
「モニカの努力をローゼマイン様が無にするはずがございません。では、まず、こちらの手順からお願いいたします」
モニカの後ろでにっこり笑っているフランから逃げられる気がしない。やっぱり、フランは神官長に教育された側仕えだ。影響、受けすぎ!
わたしは図書室を諦めて、泣く泣く木札を手に取った。ふーんだ、嬉し泣きだもん。主思いの側仕えで嬉しいなぁ。ハァ、図書室……。
こうして、星結びの儀の流れや神殿長の仕事について話をして、一日は終わりを告げた。
今日は、印刷業に関する仕事の進み具合を確認するため、神官長も一緒にギルベルタ商会の者と会うことになっている。文官に
改竄
される前の報告が欲しいらしい。
ギルベルタ商会の面々は3の鐘に合わせてやってきて、昼食も一緒に食べることになっている。そのため、エラとニコラは朝食の準備を終えた後、院長室の厨房で昼食の準備をするために移動したし、フランもわたしの世話や案内をモニカに任せて院長室に向かい、お茶の準備をしている。貴族の食事には音楽が付き物なので、朝食の後はフェシュピールを抱えてロジーナも院長室へと向かった。
ギルは朝食を食べ終わった後、「神官長がいらっしゃると、連絡してきます」と言って、すぐに部屋を飛び出していった。文官と一緒の視察はとても大変だったようで、ベンノやルッツに強い仲間意識を持つ結果となったらしい。
ギルはしばらく留守にしていた間に、字もかなり上達していたし、報告の仕方も様になっていた。商人と文官の中に放り込まれて、必死に努力したのが、結果に表れている。
ギルの頭を撫でて、褒めていたら、「側仕えにそのような態度は……」と、ものすごく言いにくそうなブリギッテに注意された。……やっぱり上級貴族の娘が側仕えの頭をなでなでするのはダメみたいだ。
「ローゼマイン、そろそろ行くぞ」
アルノーではなく、ザームという側仕えを連れた神官長が部屋へとやってきた。移動の準備はできていたので、モニカと一緒に部屋を出る。
「ローゼマイン、久し振りの再会で興奮するかもしれないが、私の話が終わるまでは、おとなしくしていなさい。……その代わり、あの部屋の中に入った後に関しては、目を瞑る。存分に心の平穏を得てくると良い」
神官長が院長室へと向かう途中で、ぼそりとそう言った。多分、自分がぎゅーから逃れるためにルッツを人身御供にするつもりなのだろうが、わたしにとっては望むところだ。
「はいっ!」
回廊を通り、孤児院の院長室に着くとモニカが扉を開けてくれた。久し振りに入った自室がひどく懐かしくて、落ち着く気がする。
「こちらは変わっていないので、安心できますね」
見慣れた家具が置かれたままの部屋にホッと息を吐き、約束の時間になるまで、二階のテーブルで神官長と星結びの儀について話をしていた。星結びの儀では午前に下町の結婚式、午後からは貴族街での結婚式があるので、忙しいらしい。
それから、今年の孤児達をどうしようかという話もした。色々な交渉の結果、ルッツに余裕があり、ヴィルマを責任者として残すならば、去年くらいの遊びは構わないと言ってくれた。
3の鐘が鳴るとすぐに下町の方の門で待機していたギルが、ギルベルタ商会の面々を連れてくる。ベンノとマルク、それから、ルッツが一緒だった。
ルッツは少し見ない間にちょっと背が伸びた気がする。顔立ちも大人びたかもしれない。ギルの成長にも驚いたけれど、ルッツもぐっと成長した。
久し振りのルッツに飛びつきたいのを我慢して、わたしはルッツに小さく手を振ってみようと手を上げかける。ピクリと手が動いた時点で「ローゼマイン」と神官長に低い声で名前を呼ばれて、睨まれた。ごめんなさい、おとなしくしています。
「では、ベンノ。視察について見たこと、思ったことを率直に述べてもらいたい。私は文官以外の報告が欲しいのだ」
「かしこまりました」
ベンノの話で初めて知ったことだが、神殿があるのはエーレンフェストの街だけらしい。「そんなにたくさんの青色神官があちらこちらにいるわけがなかろう」とは神官長のお言葉である。だって、神殿は神様を祀る所なのだから、麗乃時代の教会のようにどの町にも一つはあるのだと思っていた。
街ではなく、領地に大きな神殿が一つあり、それ以外は、各自が信じる神をそれぞれ祠や祭壇を作って祀っているのだそうだ。
街においては、店には商売の神や水の女神が祀られているし、鍛冶工房には火の神や鍛冶の神が祀られている。門には旅人の守護神や風の女神が祀られているらしい。
農村においては、冬の館に小さな礼拝室のようなところがあって、神殿のように全ての神が祀られているが、その代わり、小さな祠は特にないそうだ。
そんな中でどのように孤児院が運営されているのかというと、町長や街の有力者による運営だった。治安維持のために町長の屋敷の離れに孤児院を設け、孤児を発見次第、収容することが何代も前の領主によって定められているらしい。
そして、町長は孤児達に食事を与える代わりに、孤児達を奴隷のようにこき使う権利を得ているとのことだ。青色神官が町長や街の有力者に変わっただけで、そういうところは灰色神官や巫女も同じだな、と思う。
「孤児院は酷い状態でした」
ベンノの言葉の後に、ギルが立ち上がって、その惨状を工房ができる前の神殿の孤児院と比較して報告し始めた。
他の町の孤児院は神殿と併設されているわけではない。そのため、神の恵みもなく、貴族ではない町長も低予算の中で困っている。全員が汚い不衛生な環境で過ごしているが、地階の子供達のように完全に世話を放棄されているところは見当たらなかったようだ。
「子供達が孤児院に閉じ込められているわけでもなく、森で採集しながら食い繋いでいるので、夏から秋にかけて工房を軌道に乗せることができたら、少しはマシになると思います」
ギルがそう言って報告を終えた。
あの生意気で口の悪かったギルがなんて立派になって……と、わたしは授業参観を見て感動に打ち震える親の気分を味わいながら、ギルを見て笑顔で一つ頷く。へへっ、とやり切った満足感たっぷりの笑顔でギルが頷き返してくれた。
ギルが席に着くと、今度はルッツが立って報告を始める。
「神殿の孤児院と違って、神の恵みがない分、生活を向上させるために必要な金額は高めになります。そして、一番難しいのは、全て平等という考え方を持っていないので、ここの孤児院ほど平和に生活が向上するとは思えません」
家庭内においても弱肉強食が当たり前だったルッツから見ると、この神殿の孤児院の平等が徹底された様子は不思議で仕方がないものだったらしい。そのおかげで平和に全てが向上したが、それが他の孤児院に当てはまるとは思えないと言う。
「それに、あそこの孤児院長はここの青色神官みたいな感じでした。孤児達が利益を上げたとしても、上前をどんどんはねていくと思います」
「……でしたら、工房を作る前に孤児院ごとわたくしの名義で作って、最初からこちらの決まりを叩き込んだ方が良いかもしれませんね」
弱肉強食の世界で生きてきた者は、強い者に従うことを知っている。権力を使って、最初の土台を作り上げた方が楽かもしれない。
わたしにとっては、横から茶々を入れてくる街の有力者なんて、印刷業の邪魔者だ。つまり、本作りの敵である。権力を使って排除することに大した躊躇いはない。
「ローゼマイン工房にするのでしたら、初期投資に必要な金額はある程度、わたくしが出しても構わないと思っています。けれど、領地の事業として行うなら、領地の予算からも出ますよね?」
「それは当然だろう」
そう言った神官長とは逆に、ベンノは眉を寄せて首を振った。
「……難しいかもしれません」
「それは何故だ?」
「文官達は、この印刷事業を潰したいのではないか、と考えられるからです」
ベンノの目が厳しい光を放った。隣でマルクも静かに頷いている。
「文官達に全くやる気が感じられませんでした。どのように伝達されて、どのように仕事をするように言われているのか存じませんが、本当に嫌で仕方がない仕事を無理やり割り振られたようでした」
ルッツとギルが、うんうん、大きく頷いている。同行した文官のせいで、ずいぶんと嫌な思いをしたらしい。
「率直な意見をお望みだと伺ったので、口にさせていただきますが、あれが本当に領主主導で起こそうとしている新しい事業の担当者なのか、と思わざるを得ません。当人の意識が低いだけなのか、領主の意思が通じていないのか、故意に事業を失敗させたいのか、一介の商人である私にはわかりません。ですが、あの担当者では確実に計画は頓挫します」
マイン工房孤児院支店を作る時でさえ、「また面倒なことを」と言われて、根回しや進め方について注意は受けたけれど、ダメだとは言われなかった。今回は儲けの匂いや損得に敏感な商人であるベンノに頓挫すると言われる程ひどいらしい。
印刷業が頓挫する可能性の高さに、ひぃっと息を呑んだわたしと違い、神官長はにんまりとした笑みを口元に浮かべる。
……あぁ、この邪悪な黒い笑顔。脳内で何か罠を張り巡らせている気がする。視察に行った文官が餌食になるに違いない。印刷業の頓挫は困るので、わたしは心の中で神官長を応援しながら見守るだけだ。
「ふむ。君達の意見は参考にさせてもらおう。わざわざ足を運んだ甲斐があったようだ。それから、星結びの儀が間近に迫っているが、食事処の件は一体どうなっている?」
領主、領主の異母弟、領主の養女、騎士団長と
錚々
たる顔ぶれが集まる食事会だ。ジルヴェスター様の期待値を考えると、頭が痛い。
けれど、ベンノはフッと余裕の笑みを浮かべた。
「順調です。食事処自体は完成しましたし、料理人の腕も上がっていますし、教育された給仕も増えました。貴族のことをよく知っている者が主となって、動かしておりますので、食事会はそれほど大きな問題もなく開催できると思われます」
「そうか。他に問題は?」
「……神官長にご報告するものは、それで終了です。イタリアンレストランに関してローゼマイン様にお伺いしたいことが数点ございます」
ちらりとこちらに向いたベンノの視線が鋭く刺さる。なんでそんなに怖い目をしているんでしょうね? 連絡が取れなかったのはわたしのせいじゃないですよ?
「では、報告のまとめや初期費用の計算などに関しては、ローゼマインにも手伝わせるとよいだろう。一つの事業を起こす大変さを知っておくのも、領主の養女として必要な経験だ」
仕事を振り分けられた下の者の苦労を思い知って、ジルヴェスターのように無茶なことを言うな、ということですね。わかります。わかるけれど、本を得るためには自重なんてしない。
「ローゼマイン、この後はあの部屋を使っても良い。護衛はダームエルだ。ブリギッテはここで待機し、先に昼食を終えよ」
「はっ!」
神官長の指示に、モニカはブリギッテの昼食の支度を始め、フランは退室しようとする神官長とザームを見送りに行く。
神官長が一階へと降りていくのを見送った後、わたしは隠し扉に手を当てて、軽く魔力を流した。
指輪から魔力が流れて、認証が終わると隠し部屋が開く。神官長の部屋の工房と違って、ここは魔力がない者でも入れるようにしてあるので、わたしが許可した者ならば誰でも入れるのだ。
「ギルベルタ商会の方々はこちらへ入ってくださる? 神官長がおっしゃったように護衛騎士はダームエルで、側仕えはギル。モニカはブリギッテの食事の給仕をお願いします。用があれば、扉の魔石を押してちょうだい」
「はい」
モニカにそう言いおいて、わたしは皆が入ったのを確認してゆっくりと扉を閉める。
隠し部屋はそれほど広くはない。8畳くらいの広さで、テーブルと椅子がある応接室のようなものだ。広さは魔力量によって変えられるらしいが、側仕えにも聞かせたくないようなことを話すための部屋なので、それほどの広さは必要ないと思っている。
パタリと隠し部屋の扉を閉めて、わたしはハァと息を吐いた。我慢は終了。
わたしはくるりと振り向いて駆け出すと、ルッツに飛びついた。
「うわあぁん、ルッツ、会いたかったよぉ!」
「おわっ!?」
頭をぐりぐりと押し付けながら、わたしは溜まりに溜まった
鬱憤
を晴らすように、ぎゅーっとしがみつく。
「もうお貴族様なんて嫌だよ! ずーっと行儀作法の練習と勉強ばっかりで気が滅入った。ホントに疲れた。ぶっ倒れたら薬で無理やり体調を治されて、後で頭がくらくらするし、周りの人は腹黒い人が多いし、癒しがないし、ルッツもいないし、お父様もお母様もこうやってぎゅーってしてくれないし……それから、それから」
わたしがルッツに抱きついたまま、つらつらと貴族街での生活について不満を述べていると、ルッツはどうすればいいのかわからない、というような顔で、眉を寄せた。
「……あ~、マイン?」
「ルッツ、そこは間違えたらダメだよ。ちゃんとローゼマインって呼ばなきゃ」
久し振りに呼ばれた「マイン」という名前に目の奥が熱くなるのを感じながら、わたしはゆっくりと首を振る。
「ねぇ、ルッツ。ちゃんとぎゅーって、して。全然足りないよ」
わたしの要求にルッツは慣れた動きでぎゅーっとしてくれる。わたしは満足の笑みを浮かべるが、周囲にいる人達の表情は非常にしょっぱい顔になっていた。でも、止めない。わたしはまだ満足していない。
ルッツにぎゅーっとしてもらいながら、わたしはベンノを見上げる。
「ベンノさん、ベンノさん、お願いがあります」
「……何だ?」
呆然としていた顔から、やや警戒したような顔になったベンノがわたしを見下ろした。
「ちょっとでいいので、叱ってください」
「はぁ!?」
ベンノの声が裏返り、完全に貴族相手の表情が掻き消えた。それがわかって何とも嬉しい気分になる。
「貴族の館に行ったら、身分が違うせいか、誰も叱ってくれないんです。何しても褒められて気持ち悪いんですよ。わたし、そんなに褒められるようなことしてないのに!」
行儀作法の先生も勉強を教えてくれる先生も、気持ち悪いくらいに持ち上げてくる。それに、お父様もお母様も基本的に叱ることをしない。何か失敗した時は笑顔で切り捨てられそうで、正直怖い。
わたしがそう訴えると、俯いてぷるぷると震えていたベンノがガッと顔を上げて、特大の雷を落とした。
「気を抜きすぎだ、この阿呆! ただでさえ、お前はうっかりぼんやりしていて注意力散漫なのに、足元をすくわれるぞ!」
「そう! それ! そういうのが欲しかった! あぁ、ホッとする~」
ベンノの雷さえ懐かしくて嬉しく感じるなんて、ずいぶんとわたしは我慢していたようだ。
ハァ、と満足の息を吐くと、ルッツは逆に疲れ果てたような息を吐いて、がっくりと肩の力を抜くと、いくらかわたしに体重を預けてきた。
「なぁ、お前さ、全然中身が変わってないんだけど……」
「人間の中身がそんなに簡単に変わるわけがないでしょ? ルッツ、何言ってるの?」
そんなに簡単に変わったら、ビックリだ。この短期間で猫を被るのは上達したし、立ち居振る舞いも洗練されたと思うが、中身に大した違いはない。
わたしの言葉に、ベンノが肩を竦めた。
「だから、言っただろう? 平民から上級貴族の娘になったところで、本質はそう簡単に変わらない、と」
ルッツが悔しそうに歯を食いしばって、ベンノとわたしを睨む。
「くっそぉ……。マインにはもう会えないんだって思ったオレの涙を返せ!」
「わかった。ぎゅーで倍返しにしてあげる」
とてもいいことを思いついたのに、ルッツには溜息を吐かれてしまった。おかしいなぁ。
何はともあれ、ルッツ分の補充ができて満足、満足。
「満足したなら、話を進めていいか? イタリアンレストランの売りにするふわふわパンのことだが……」
ベンノが商売人の顔になって、ギラリと目を光らせた。