Ascendence of a Bookworm: I'll Stop at Nothing to Become a Librarian RAW novel - Chapter (185)
領主とイタリアンレストラン 後編
「これは『ポテトサラダ』と言います。カルフェ芋を茹でて潰して、他の野菜も入れて、『マヨネーズ』で和えたものなのですが、お口に合いますか?」
「初めて食べる味だが、悪くない。うむ、悪くない」
どうやらジルヴェスターはとても気に入ったらしい。
そういえば、ルッツのところで初めてマヨネーズを作った時も、ルッツ兄弟には大喜びされた。味気なかったり、ちょっと苦みがあったりする野菜がおいしく食べられると言っていたはずだ。
ちなみに、わたしはマインとなってから自分で作ったことはない。マヨネーズは新鮮な卵と植物油とお酢と塩が必要な上に、混ぜるのがすごく大変だから、ハンドミキサーもない状態ではわたしには作れないのだ。
野菜サラダは放置で、ポテトサラダばかり食べているジルヴェスターを見たお父様が、ポテトサラダを口に入れ、何度か噛みしめながら頷いた。
「……確かに、初めて食べる味だが、悪くないな」
二人の反応を見た上で、神官長がかなり小さ目の一口分を口に入れた。顔にはほとんど出ないものの、次の一口分が大きかったので満足してくれたのだと思う。
わたしと同じように上級貴族である三人の反応をじっと窺っていたベンノがホッとしたように少し肩を下げて、自分の皿に口を付け始めた。ベンノ、ギルド長、フリーダは料理人の練習した物を何度も食べているので、おいしい顔をしているが、特に驚きの表情はない。
「養父様、そちらのサラダも食べてみてくださいな」
ポテトサラダをお替りしようとしたジルヴェスターにわたしは声をかける。まだジルヴェスターは蒸し鶏のサラダに手を付けていない。
あまり野菜は好きではないのか、少し目を細めてジルヴェスターがサラダを突いた。シャクシャクと咀嚼する音が響いた後、ジルヴェスターは何度か目を瞬き、もう一口食べる。
「ローゼマイン、こちらのサラダも非常にうまいな。何のソースをかけているのだ?」
「それは『ハーブドレッシング』です。今回は植物油と塩と柑橘類の果汁と食用の薬草を混ぜた物ですけれど、混ぜる物によって色々な味になります」
こちらでは一度煮立たせて作るソースが主流で、肉汁を使って作る物が多い。グレービーソースのような物を野菜にもかけるのだ。おいしいことはおいしいのだが、食べる頃には白く油が浮いていることが多くて、わたしはあまり好きではない。
「この野菜の上の白い物は何だ? 鶏肉のようにも思えるが、柔らかいし、味が違う」
「鶏肉で正解ですわ。下拵えに手間がかかるのですが、おいしくいただけるでしょう?」
「うむ」
野菜が好きではなさそうなジルヴェスターがサラダを全て食べ終わり、フランにお替りを頼もうとした。
「養父様、ここでお腹いっぱいになると、他の料理が食べられなくなりますよ?」
「むぅ、確かにそうだな」
わたしは他の人が手にとれるように、ふわふわパンを手に取って、一口分ちぎった。まだ温かいパンをちぎると湯気と共に焼きたてパン特有の甘い匂いがふわりと立ち上る。
口に放り込むと、おいしい匂いと一緒に柔らかな食感と温かい甘みが口の中に広がっていく。
……あぁ、フーゴの味だ。
絶妙の焼き加減と慣れた味に頬が緩んでいくわたしの視界で、勢いよくパンを手にしたのは、フリーダだった。わたしが食べるのをじっと待っていたらしい。
フリーダはまだ温かいパンを手に取った瞬間、ぎょっとしたようにパンとわたしを見比べた。柔らかさに驚いたようで、もにもにとパンを揉むように軽く手を動かして、柔らかさを確認している。
その後、一口分ちぎって口に入れた。食べている間、右手は口元を押さえたまま、軽く目を見張ったままだ。次第にその茶色の瞳が輝きを増していき、脳内で計算をしている様子が手に取るようにわかる。
「ローゼマイン様、このようにふんわりと柔らかで、噛むことがなくても甘みのあるパンは初めて頂きました。どのような秘密のレシピがございますの? ぜひ当店で扱わせていただきたく存じますわ」
案の定、フリーダが食いついてきた。天然酵母の現物を渡しただけで、フーゴ達にも作り方は教えていないから、絶対に欲しがるとは思っていたのだ。
さて、何と言って断ろうか、と考えていると、ニヤリとジルヴェスターが笑った。
「フリーダと言ったか? 残念ながら、それはできぬ相談だ。このパンはこの冬に貴族を驚かせるための秘密のレシピだからな」
そうだと言え、と深緑の目がこちらを向いてギラリと光る。わたしは元々ふわふわパンを領主の養女としての立場を強化するために使うつもりだったので、その断り文句に異存はない。
「養父様のおっしゃるとおりです。今日は養父様やお父様がいらっしゃるので特別に作らせましたけれど、このパンを広く知らせるのは冬の社交界になる予定ですわ」
「そうでしたの」
残念です、とニコリと笑ってフリーダが言いながら、パンをもう一口食べる。今日の料理人にイルゼはいないはずなので、きっとイルゼにも食べさせたいと思っているのだろう。
「うまいことはうまいが……」
お替りをした3つ目のパンを手に取って、半分にちぎって口に入れたお父様は、んん~、と眉を寄せて唸る。
「柔らかすぎて、私には物足りないようだ。食べても、食べても、食べ足りない気がする」
噛むことで満足感や満腹感が出るので、そういう意見もあるだろう。お父様は硬めのパンが好きと脳内に書き込んでおいた。お父様の勢いで満足するまで食べられたら、食費が大変なことになりそうだ。
「これはコンソメスープです」
部屋の中にワゴンが入ってきた瞬間から、意識を引き付ける匂いが漂ってくる。ワゴンに大きめのスープ壺が乗せられて、運び込まれてきたのは、じっくり煮込んで旨味が凝縮されたコンソメスープだ。
野菜も何も入っていない、ただひたすらに透き通った琥珀のスープ。一度野菜を煮込んで、煮汁を捨てるのが当然であるこの辺りでは絶対に味わえないスープである。
「良い香りだが、何も入っていないぞ?」
フランに注いでもらったスープを見て、ジルヴェスターが目を丸くした。ここではスープはくたくたになるまで茹でられた野菜が入っている物だと決まっている。具材の見えないスープなど存在しない。
「入っていない方が、味がよりわかるのです。おいしくてビックリすると思いますよ」
わたしは少し顔を近付けて、軽く匂いを楽しむ。口の中に唾が溜まるような濃厚な匂いがした。丁寧に、丁寧に濾されたのだと一目でわかる琥珀の液体にスプーンを入れると、表面がゆらりと揺れて、更に香りが広がっていく。
そして、スプーンを口に入れて、コンソメを流し込んだ。ぎゅっと詰まった旨味をゆっくりと舌の上で転がすようにして堪能する。濃くて味わい深いのに、後味は不思議とさっぱりしているダブルコンソメの味に、ほぅ、と思わず感嘆の溜息が漏れた。
フーゴはずいぶん頑張ってくれたようだ。経験の差だろうか、正直、エラが作ったコンソメより何倍もおいしい。
「では、私もいただこう」
ジルヴェスターが一口食べて、目を見開き、すぐにもう一口食べて、眉を寄せた。それから、もう一口食べて、首を傾げながら、口をむぐむぐと動かす。
「これは、何の味だ?」
「肉も野菜も色々入っています。全ての旨味を凝縮したスープです。色々なお料理の味を付けるためにも使うのですよ」
神官長も不可解そうに眉を寄せたままコンソメスープを食べている。表情だけ見ると、非常においしくなさそうだが、手の進み具合を見るとおいしいとは思ってくれているようだ。
「フェルディナンド様、難しいお顔ですが、お口に合いまして?」
「む?……ふむ。これは実に美しい料理だと思う」
「美しい?」
おいしいではなく、美しいと評したことに首を傾げると、神官長は軽くナプキンで口元を拭って、説明してくれた。
「あぁ、美しい。一口飲めば、その味わいの奥深さに色々な素材が使われていることがわかるだろう? それぞれの旨味が出て、引き立て合い、凝縮されている。それにもかかわらず、スープには何も入っておらず、底まで見えるほどに透き通っているではないか。とても高度に完成された美しさがある」
まさかそんなに饒舌に語られるとは思っていなかった。相当気に入ったと考えて間違いないだろう。
「お待たせいたしました」
そんな声と同時にワゴンが入ってくる。メイン料理の一つであるマカロニグラタンが出てきた。これは陶器で作った小さなココット型で焼かれ、手で持てるように取手の付いた木の器の中にココット型が入っている。
「この茶色の器はものすごく熱いですから、絶対に触らないように気を付けてくださいませ。食べる時はこの木の部分に手を添えてくださいね」
グラタンはオーブンから出たばかりということが、誰の目にも一目でわかった。まだぐつぐつと音を立てて、ホワイトソースが沸き上がり、上にかかっているチーズが動いている。白い湯気と一緒に広がっていく焦げたチーズの匂いがたまらない。
穴の開いたマカロニがなかったので、今回は手打ちパスタで、ファルファッレを作ってもらった。これなら、ホワイトソースとの相性も良いし、穴の中のソースが熱くて不意打ちで舌を火傷することもない。完璧だ。
「ローゼマイン、これはチーズ焼きか?」
「ちょっと違いますけれど、似たような感じですね。舌を火傷しないように気を付けて食べてください」
貴族街にも鳥や野菜にチーズをかけて焼く料理はいくつかあるし、ミートソースのようなものは食べたことがある。けれど、ホワイトソースを味わったことはなかった。存在しないのか、わたしがたまたま食べていないのか、わからない。
熱々でとろりと伸びるチーズを軽くファルファッレに巻き付けるようにした後、ふぅふぅと軽く息を吹きかけて、口に入れた。濃厚な味わいで口の中に幸せが広がっていく。元々の素材の味が少しずつ違うので、出来上がった味もやはり違うが、これは麗乃時代の母のレシピだ。
「ローゼマイン」
ジルヴェスターがググッと眉を寄せた顔でわたしを睨む。
「どこが似たような物だ? チーズ焼きとは全く別の料理ではないか」
「チーズを乗せて、オーブンで焼くのですから、似ているでしょう?」
「それ以外が全く違う。このとろりとした白いものは何だ? これが気に入った」
なるべく子供が好きそうなメニューを選んだのだが、成功だったらしい。目を輝かせながら、ホワイトソースをすくって見せるジルヴェスターにわたしは小さく笑った。
「これは『ホワイトソース』と言います。バターと牛乳と小麦粉に塩で味付けしたものです」
この辺りには、やはりホワイトソースがなかったようだ。
お父様がグラタンを一口食べて、フォークを置いた。気に入らなかったかと思って、視線を向けると、真剣な顔でこちらを見てくる。
「ローゼマインが我が家にいる間、其方の料理人が作ったと言う珍しいお菓子はいくつか食べたが、料理は洗礼式で出た物以外食べてないぞ。これもローゼマインの料理人が作ったのか?」
お父様がわたしをちらりと見た。お菓子という単語に反応してジルヴェスターが、ぬ? と顔を上げたけれど、それは無視して、お父様と会話する。
「初めて連れて行った料理人に料理を任せるほど、お母様は迂闊なことはなさいません。何度もお菓子を作って提供し、信用を得て、最近やっとお菓子のレシピを交換するようになったところですもの。お料理はまだまだこれから、といったところです」
「なるほど」
お母様はお茶会で出すお菓子のレシピの交換を優先したので、まだ料理のレシピ交換はほとんどしていなかったはずだ。洗礼式もエラの担当はほとんどお菓子だったと聞いている。わたしはどの料理も食べられないまま意識を失ったのだけれど。
「護衛の交代をいたします」
先に食事を終えたコルネリウス兄様が大満足の顔で入ってきた。交代で食事を取るため、護衛騎士は早く食べることが要求されるけれど、今回は出される食事の内容が同じのはずだ。お腹を撫でているところから考えても、ガッツリ食べたらしい。
代わりに、皆が食べるのをじっと見ていただけのエックハルト兄様が表情は崩さないまま、足早に部屋を出て行った。扉の外ではダームエルとブリギッテが交代している。
エックハルト兄様と入れ替わるようにワゴンがまた入ってきた。メイン料理二つ目は肉料理だ。
「お肉料理が欲しいのではないかと思い、準備しました。『煮込みハンバーグ』です」
「ほぉ」
中身小学生男子のジルヴェスターなら、多分好きだろうと思ったのだ。予想通り、肉料理に目が輝いている。
実は、ハンバーグを作ろうと思ったら、肉をミンチにするのも手作業なので大変だ。買ってくれば良い麗乃時代とは大違いである。
しかし、フーゴ達は頑張ってくれた。包丁で叩きまくって、作ってくれたのだ。切ったらトロリもある、チーズ入りのハンバーグを。
ここではポメと呼ばれている黄色のトマト味の野菜の皮を剥いて、賽の目切りにした物をコンソメで煮込んで、そこに表面を焼いて焦げ目の付いたハンバーグを入れて、さらに煮込んで、ポメソースの煮込みハンバーグにする。
すでにお腹がいっぱいになっているわたしとフリーダのハンバーグは他の人の半分ほどの大きさだ。
皿の上に盛られた、小さく丸められているハンバーグにナイフを入れれば、透明の肉汁が流れ出し、一瞬遅れて黄色のとろりとしたチーズが零れ落ちてきた。
「何か出てきたぞ!?」
「チーズです」
ナイフを動かせば、とろけて出てきたチーズがゆらゆらと揺れる。一口の大きさに切ったハンバーグにソースとチーズを絡めて、口に入れる。
「んん~、おいしい」
上質のコンソメを使っているポメソースがたまらない。
待ちきれなかったのか、ジルヴェスターがすぐさまハンバーグを切って、口に入れた。大きく目を見開いて、何度か頷く。
「おおぉぉ……。これはうまい。今までで一番気に入った」
「養父様なら、きっとそうおっしゃると思っていました。気に入っていただけて嬉しいです」
お父様と神官長は無言で食べている。お父様は大きな口でガツガツと。神官長は流れるような優雅なナイフ捌きで悠然と。でも、皿からハンバーグがなくなるのが早い。
「フェルディナンド様、いかがでした?」
「これはソースに先程のスープを使っているのだな? 味わい深くて実に良い。このように応用が利くとは……」
神官長は本当にコンソメが気に入ったようだ。滔々とコンソメスープの美しさを語り始めた。
……あぁ、うん。美しいね。もぐもぐ、ハンバーグおいしぃ。
メイン料理が終わったところで、ジルヴェスターは至福の表情になっていたが、これで終わりではない。まだデザートが残っている。
わたしもすでに満腹だが、デザートは別腹。行ける。まだ行けるよ。
「こちらがデザートになります」
給仕達が皿を下げ、お茶の支度に動き回る中に、最初のワゴンを押して入ってきたのは、レオンだった。ワゴンの上には5センチくらいのスクエアに切られている季節のフルーツを飾ったショートケーキが並んでいる。
真っ白の生クリームが盛り上がっている中央に、赤く輝くルトレーベが鎮座している様は、完全にイチゴのショートケーキだ。
実は、このスポンジケーキを成功させるのは、非常に難しい。何が難しいと言われると、オーブンの扱いだ。温度調節が容易ではないので、なかなか大成功の味にはならない。成功したら、とてもおいしいけれど。
今回のケーキの切り方と大きさを見る限りでは、多分、端の方が焼けすぎて硬くなったに違いない。おいしく食べられる部分だけを持ってきたのだと思う。
次のワゴンが入ってきた。スポンジケーキに失敗した時のために、予め作っておくことになっていたケーキだ。わたしの好みでミルクレープにした。クレープの間に薄く生クリームを挟んで重ねていくケーキである。
見た目の美しさを出すために、フェリジーネというオレンジの果汁を砂糖で煮詰めたソースを一番上に塗って照りを出している。このフェリジーネが爽やかな夏の果実の香りと味を添えてくれるのだ。
最後に入ってきたワゴンに乗せられているのが、甘いものがそれほど得意ではない男性用に蒸留酒をたっぷり使ったカトルカールとお茶の葉が入ったカトルカール。これは前もってイルゼが焼いたもので、一日寝かせられているので、味もしっとり馴染んでおいしくなっているはずだ。
「お好きな物をお選びください」
給仕をするレオンがずらりとワゴンを並べて、ジルヴェスターにどれが良いのか、尋ねると、ジルヴェスターが一つ一つのワゴンに乗せられたケーキを睨みながら、真剣に悩み始めた。
多分、心の中では「全部だ。全て寄越せ」と言っているに違いない。これを普通に声に出してくれればレオンは従えるが、頼まれもしていないのに給仕が声をかけることはできない。
すでにお茶の準備が終わったというのに選べないジルヴェスターを見つめて、レオンが途方に暮れた表情になる。視線だけでわたしに助けを求めた。
「養父様、それほど悩まなくても、気になる物を選べば良いのですよ? 全て選んでも、お皿に盛れるように、予め小さ目に切り分けてあるのですから」
「そうか! では、全てだ」
晴れがましい顔でそう言って、ジルヴェスターは満足そうに鼻を鳴らす。本当に中身が小学生男子だ。
まぁ、最初に給仕される領主が「全部」と答えたことで、興味がある他の者も全部味を見ることが簡単になったので、良しとしよう。
わたしは、この間エラにショートケーキを作ってもらったので、予定通りにミルクレープを選んだ。神官長とお父様は全種類、ベンノはカトルカールを両方、ギルド長とフリーダはショートケーキを選んでいた。
お茶を飲みながら、ケーキを少しずつ堪能する。控えめな甘みの中にあるフェリジーネの風味が心地よい。
味見の段階でどのお菓子も料理も食べているわたしやベンノ達の間には、食後のまったりとした空気が漂っていて、何とも言えない満足感を共有していた。
一つ一つ食べ比べて、眉を上げたり、目を閉じて堪能したりしているジルヴェスターや難しい顔で少しずつケーキを食べている神官長、あっという間に全て食べてしまったお父様とは空気が違う。
おいしかったね。初めてのお客様に満足してもらえてよかったね……という感じのやりきった気分が漂っている。
全てのデザートを平らげて、お茶を飲んだジルヴェスターが満足の笑みを浮かべた。
「本日の昼食は実に有意義であった。正直、下町の食事処に何が出せるか、と思っていたが、予想を裏切る美味であった」
「恐れ入ります」
無茶ぶりをされまくったベンノの口から出た言葉には万感の思いが込められている。
ギルド長とフリーダも領主との食事会という大イベントを成功させることができたことに会心の笑みを浮かべていた。
「このイタリアンレストランの今後に期待する」
そう言った後、すぅっとジルヴェスターが表情を引き締める。雰囲気が変わったことに気付いたのか、皆が一斉に背筋を伸ばした。
「では、ベンノ。先日の視察についての報告を聞こう。人払いを頼む」