Ascendence of a Bookworm: I'll Stop at Nothing to Become a Librarian RAW novel - Chapter (231)
選別の扉
神官長の言葉にリヒトが「御前、失礼いたします」と言って、一度退場していく。
数人の男達に脇を固められる形で、町長が舞台の上へと連れて来られた。
やつれているし、ボロボロの服をまとっているので、哀れな様子に見えるけれど、平民ならば普通の格好だ。動きが何だかよろよろとしているけれど、殴られたり、蹴られたりした傷がパッと見た感じでは見当たらないので、冬の間、それほどひどい扱いはされていなかったようだ。
わたしの前に跪き、少しばかり顔を上げて、ほんの一瞬だけわたしを見て、顔を伏せる。
そのほんの一瞬に見せた目が、妙にぎらついていた。わずかに細めた目からは明確な侮りを感じる。慈悲深い、と言われている幼い子供ならば、どうにでも言いくるめられるというような嘲りが視線に含まれているのがわかった。
……前のわたしなら、町長の侮った視線に気付かなかったね。
ここ一年くらい、貴族社会で揉まれて、表情変化の少ない神官長や笑顔で本心を悟らせない養母様の顔色を読めるように見ていたことで、多少なりとも成長しているようだ。こんなことで成長を実感するのはあまり嬉しいことではないが、気付かないままに流すことにならなくてよかったとは思う。
「神殿長、私は知らなかったのです」
顔を伏せたまま、町長が悲痛な声を出し、自己弁護を始めた。小神殿を攻撃することが反逆罪になるとは知らなかった、とつらつらと長く語り始める。
知らなかったというのは嘘だ。町長が知らないはずがない。フランが収穫祭でリヒトに小神殿の襲撃についての話をすると、リヒトは顔色を変えたと言ったのだ。補佐する立場のリヒトが知っていることを町長が知らないはずがない。前神殿長に揉み消してもらうつもりだっただけで、「まずいことだ」と知っているから、リヒトの不在時に行ったのだ。
わたしは知らず知らずのうちに眉が寄っていくのを感じていた。
おそらくわたしの一歩後ろで神官長はもっと凶悪な顔になっていると思う。首筋がぞわぞわとするのは気のせいではないだろう。
「しきりに知らなかったと言うが、それが何だ?」
神官長が町長の自己弁護をバッサリと切り捨てた。
町長は、上を見上げてうっと一瞬言葉に詰まった後、神官長よりもわたしの方が取り込みやすいと思ったのだろう、視線をわたしに固定した。神官長の方を見ようとせずに、わたしに向かって言葉を重ねる。
「ハッセを窮地から救ってくださったお優しい神殿長、全ては、ただただ町を守るためであったのです。無知であったことは重々承知の上ですが、どうか私の行動にお慈悲を……」
町長は一応人をまとめる立場にいただけあって、声の発声や民を動かす言葉選びを知っているのだろう。広場の人々も「神殿長、できればお慈悲を」と嘆願し始めた。
……まずいな。
そう思った。わたしは、できることならば町長一人の犠牲でハッセの民を救いたいのだ。下手に町長の味方をする者が増えたら、処分対象が増えてしまう。
「貴女は孤児にさえ憐れみの心を向けるではありませんか!」
町長はそこからわたしがハッセの孤児を憐れみ、慈悲の心を向けたことをつらつらと語り、孤児に向ける慈悲を自分にも向けて欲しいと懇願し始めた。
リヒトが「もう黙れ」と言いたげな顔で、町長に向かってわずかに体を動かす。町長を止めるのかと思ったが、リヒトが上を見上げて、真っ青な顔になり、その手を止めた。
多分、神官長に睨まれたのだと思う。
次の瞬間、誰かの指先に軽く背中を叩かれた。すいっと振り返って見上げると、神官長の目が冴え冴えと厳しい光を放ちつつ、口元だけを笑みの形に歪めている。「さっさと終わらせろ」という無言の圧力がかかってきて、わたしはひくっと口元を引きつらせた。
……さて、どうしよう?
わたしは先程作り上げた聖女らしさを残しつつ、町長を処分するのが妥当だという方向に持っていなければならない。
わたしは口だけでなく、手振り身振りを加えて訴え始めた町長をしばらく見つめ、そっと視線を伏せた。
「……町長、わたくしの慈悲を、とおっしゃいますけれど、貴方は日常的に孤児達へ暴力を振るっていらっしゃいましたよね? わたくしが引き取った時、トールもリックも傷だらけでした」
売り物にする予定だったノーラやマルテは比較的栄養状態も良かったけれど、トールとリックは栄養状態も悪く、日常的に暴力を受けている傷やあざがいたるところにあった。
わたしが「弱者に暴力を振るう貴方に、わたくしの慈悲が必要でしょうか?」と問いかけると、町長は目に見えて焦り始めた。何とか丸め込み、わたしから譲歩を引き出そうと躍起になって言葉を重ねてくる。
「あれは、その、仕置きです。悪いことをしなければ、私もそのようなことはいたしません。悪いことをすれば罰を受けるものでしょう」
「孤児達に暴力を振るって仕置きしなければならないような悪いことが、わたくしにはよくわからないのです。……例えば、トールやリックが貴方の家族に攻撃を仕掛けるのは、悪いことになるのですか?」
わたしが頬に手を当てて、殊更おっとりと首を傾げてみると、世間知らずの子供を言い包めようと、揉み手をするような勢いで町長が何度も頷いた。
じりじりと膝でいざり寄りながら、訴えてくるギラギラとした目が少し怖い。
「それは明らかい悪いことです。孤児が私の家族に暴力を振るえば、一体何をしているのか、と怒りますし、暴力を振るって罰を与えるのは当然のことです。誰も私を責めませんし、孤児達には養われているという自分の立場をわからせなければなりません」
町長の向こうでリヒトがきつく目を閉じて、ガックリと項垂れた。リヒトの周囲に跪いたままの農村の村長達も苦い顔になっている。
わたしは真っ直ぐに町長を見たまま、最後の問いかけをした。
「それは、二人が、貴方の家族だとは知らなかったと言っても、ですか?」
「二人が私の家族を知らぬはずがありません。そのような嘘は通用いたしませんよ」
「……そうですか」
わたしはゆっくりと息を吐き、「残念です」と呟きながら、神官長を振り返るようにして見上げた。
「神官長、これが町長の言い分です」
目を細め、唇の端を上げた神官長が「なるほど。よくわかった」と言いながら、一歩前に出て、わたしと並んだ。
神官長が一歩前に出たことで、わたしは逆に一歩下がって、発言権を神官長に譲る。
「其方の言い分によると、領主が、娘である神殿長のために作った小神殿に攻撃を仕掛けた者を罰するのは当然だということだな。白の建物は貴族の住まうところで、領主の力によって作られる物。それを知らぬ者はおらぬ」
「いえ、私は本当に知らなくて……」
相手をするのが神官長だとわかった途端、町長は後ずさりを始めた。顔色が悪くなっていて、先程のような饒舌さはなくなっている。一歩下がったわたしに、視線を向けて必死で助けを求めているが、それには応えない。
じりじりと下がる町長を、神官長は一歩動いて更に追い詰める。
「町長という、貴族と接するはずの立場にいて、知らぬはずがないのだ。其方が知らなかったのは、罪を隠し、取り繕ってくれるはずの前神殿長が亡くなっているということだけだ。其方は知っていて、町の者に小神殿を襲わせた」
ぎょっとしたように町長が目を見開いた。「そんなことは……」と言い逃れようとするけれど、町長の助命を嘆願していた広場の人達の目が冷たいものになっている。
もしかすると、ハッセの者には「知らなかった」としか言っていなかったのだろうか。
「まぁ、知っていようといなかろうと、関係はない。ハッセの民が行ったのは、領主一族への攻撃であり、反逆。それは罰せられるべきであり、罰を決めた領主を責めることは誰もしない。平民は貴族に生かされている存在だと叩き込まねばならぬ。其方の言い分の通りだ」
「ですが……」
「嘘で固められた言い訳は聞くに堪えぬ。これ以上口を開くな」
ぴしゃりと反論を封じると、神官長はくるりと振り向いてわたしの隣まで戻る。そして、今度は町長を見下ろしていた厳しい眼差しのまま、わたしをじろりと見下ろした。
「ローゼマイン」
「はい」
怒られる、と察したわたしは背筋を伸ばして、顎を引く。
わざとらしいほどの溜息を吐き、神官長は悪役にピッタリの顔で目を細め、ひやりとするような声を出した。
「其方はハッセの民は己のしでかした事の重大さを理解し、深く反省していると領主に減刑を懇願した。……けれど、全く理解しているようには見えぬ」
神官長の視線が、わたしから町長へと向けられ、最終的には広場全体へと巡らされていく。神官長の視線を受けると同時に、皆が口を引き結んで黙り込む。
「ローゼマイン、ハッセの者にエーレンフェストの聖女と呼ばれる其方の慈悲が必要か?」
わたしが発表した連帯責任の軽減さえ、簡単に取り消されそうな雰囲気に、広場が凍りつき、水を打ったように静まり返った。
次に神官長が何を言うのか、誰もが身動きするのさえ躊躇うほどの重い沈黙がその場を支配する。
息を呑むことさえ困難に思えるほどの重圧感を覚える雰囲気の中、ぐぐっとリヒトが重い頭を持ち上げるようにゆっくりと顔を上げた。
「神官長、神殿長。できれば、私の発言をお許しください」
震える声で許可を求めるリヒトの顔色は真っ青になっている。緊張のあまりの脂汗だろうか。髪の生え際がじっとりしているように見えた。
「許す」
「恐れ入ります」
神官長の許可に礼を述べ、リヒトが口を開いた。
「神官長、町長に命じられ、我々がしてしまった事の重大さは、住民一同よく理解しております。本来ならば、町ごと消されていたかもしれなかったところを救ってくださった聖女の慈悲も身に染みております。……その、町長がわかっていなかっただけで、住民はよくわかっているのです」
リヒトが神官長の圧力に震えながら、それでも、ハッセの民を庇う。その様子にジーンと胸を打たれていたわたしは、トンと背中を押された。
隣に立ち、同じようにリヒトを真面目な顔で見下ろしている神官長を見上げると、「お前の役は何だ?」と問うような呆れた視線が降ってくる。
……そうだ。わたし、聖女だった。
リヒトの言動に感動している場合ではない。わたしはくるりと身を翻し、神官長に対抗するように向かい合うと、急いでリヒトを神官長から庇うように両手を広げた。
「神官長、リヒトもこう申しております。住民はわかっているはずですわ」
「……神殿長」
ものすごく感動したような声が背後のリヒトや村長達と広場の両方から上がった。
尊敬と感動の視線に罪悪感を刺激される。居た堪れない。「わたしには聖女の役なんて無理」と叫んで、この場から逃げ出したい。
しかし、魔王のような顔をした神官長と向き合いながら、逃げ出すわけにはいかない。これはわたしの課題でもあるのだから。
向き合うわたしに神官長はゆっくりと首を振った。
「ローゼマイン、優しさは時に甘さとなる。反逆の芽は早々に摘んでおきなさい」
「神官長、ハッセの民は反逆など考えておりません。大丈夫です。そうですよね、皆様?」
わたしが振り返るようにして、背後のリヒト達や広場の者に呼びかけると、「もちろんです」とすぐさまリヒトの声が上がった。
広場からも賛同の声が上がり、わぁっと声が湧き上がってくる。
「皆、このように申しております。ですから……」
このまま話を丸く収めようとした瞬間、神官長がすぅっと目を細めた。
「では、それを証明してもらおう」
「え?」
……すみません。展開が読めません。わたし、何をすればよいですか?
どうすれば良いのかわからなくて、内心おろおろしながら神官長を見上げると、神官長はシュタープを取り出した。
「この際、反逆の芽は徹底的に摘んでおく」
そう宣言した神官長が「ゲッティルト」と呟き、シュタープを大きく動かす。
舞台のすぐ下、広場では一番前に当たる居場所に、向こうが透けて見える琥珀が出現した。
……シュツェーリアの盾?
自分が祈って作るシュツェーリアの盾と同じ模様が付いている。
ただ、わたしが作り出すシュツェーリアの盾は円いけれど、神官長が出した物は厚みのない薄い四角で、ちょうど大人が二人ほど並んで通れるくらいの扉のように見えた。
「これを潜り抜けよ」
「これは……?」
「真実反省しているならば、この選別の扉を潜り抜けられるはずだ」
リヒトが困惑したように視線をわたしに向ける。
シュツェーリアの盾ならば、害意や悪意を抱いていなければ、通れるはずだ。わたしはリヒトの目を見て、一度頷いた。
「リヒトならば、大丈夫です」
わたしの言葉に、リヒトは目に強い光を浮かべながら、足を踏み出した。舞台を降り、琥珀の四角形の前に立つ。
少し遠巻きにしながらも、広場の者達は一体何がどうなるのか、と固唾を呑んで、見守っている。
緊張し、怖々とした表情だったが、リヒトは何事もなくスッと通り過ぎる。
「ほら、神官長。大丈夫でしょう?」
「ふむ、リヒトは信用できそうだが、これはどうか?」
神官長はそう言って、冷ややかな目で町長を見下ろす。
リヒトは町長を村長達と数人がかりで舞台下へと連れて行き、選別の扉を通そうとした。
「ぅわっ!?」
わたしにとっては予想通りだったが、町長は通り抜けられず、強い風によって弾き飛ばされた。次の瞬間、エックハルト兄様のシュタープから出た光の帯が町長を縛り上げる。
「フェルディナンド様、反逆者を捕獲いたしました」
「ご苦労」
広場に集まった人々が息を呑んだ音が聞こえた。リヒトが通り抜けられたけれど、町長は通れなかった選別の扉を怖々とした目で見つめる。
おそらく小神殿を襲った町民達には、同じような力が働いていることがわかったはずだ。明らかに顔色の悪い者もいる。
「リヒト、ハッセの民、全員に潜らせろ。この際、危険人物は全て処分する」
「神官長」
そこまでしなくても、とわたしが神官長の袖を軽く引いたけれど、神官長は厳しい目で広場に集う者と光の帯に拘束されて転がっている町長を見比べた。
「……この中にどれだけあのような者がいるかわからぬ。ハッセ全員をまとめて処分したくないならば、選別は必要だろう? 」
「わ、わたくしはハッセの民を信じています。選別など……」
必要ありません、と言うより先に神官長がニヤリと笑う。
「ならば、選別されたところで問題なかろう」
反論できず、わたしは「問題ありませんわ。ねぇ、リヒト?」と丸投げするしかできなかったけれど、リヒトは目を細め、むしろ、笑顔で選別を受け入れた。
「はい、神殿長。なんら、問題ありません。……仮に、町長と同じように弾かれる者がいれば、排除した方が良いのです。その者のために、ハッセはまた窮地に陥るかもしれません。我々はこれ以上、領主から疑いの目を向けられるわけにはいかないのです」
反逆に繋がるかもしれない危険人物を選別することに、リヒトは何の忌避感も示さなかった。これ以上、領主一族の不興を買うわけにはいかない。ハッセ全体が潰されることは回避しなければならない、と言って、むしろ、乗り気だった。
「エーレンフェストの聖女の慈悲を受けられる者の選別だ。この通り、私は潜り抜けた。反逆者として処分されたくなければ、これを潜り抜けるのだ!」
リヒトはそう言って、広場に集う者全員に選別の扉を潜らせていく。
村長を初めとした農村単位で通っていくのだが、農村の者は町長からの影響も少なければ、襲撃に関わっているわけでもないので、呆気ないほどに何事もなく通り過ぎていった。
問題は小神殿の襲撃に参加した町民を抱えるハッセの町の者だった。町長と同じように弾かれるのではないか、と選別の門を潜るのを躊躇う者がいたのだ。
「通らなくても問題ない。町長と同じように縛り上げておけ」
「はっ!」
神官長の言葉にエックハルト兄様がシュタープを取り出す。それを見て、悲鳴を上げながら慌てた様子で、町民達は選別の門へと駆け出した。
「ぁわっ!?」
「ぎゃあっ!?」
ほとんどが通り過ぎる中、数人が門に弾かれた。すぐさまエックハルト兄様の光の帯が彼らを拘束する。
全員が選別を受けた後、扉は消され、拘束された6人が舞台の上へと上げられた。
「門に弾かれた者は我らに害意を抱く者だ。この場で処分する」
「構いません。彼らは根強い町長派でした。弁護のしようもございません。むしろ、選別の扉により、我々の潔白を証明してくださったことに感謝しております」
リヒトはそう言って、神官長とわたしの前に跪く。
わたしの心臓がドクンと音を立てた。ここでこれから処分が行われるという現実に、血の気が引いていく。
神官長は最初から町長を処分すると言っていたから、処分が行われるのはわかっていたことだ。それでも、心臓が嫌な音を立てていて、背中を冷たい汗が伝う。
「ローゼマイン、きちんと見ておけ」
「……はい」
リヒトはもちろん、広場に集った者も、自分達を窮地に陥れた者の処分に何も感じていないように見えた。何も感じていないのではない。嫌悪感や忌避感が見られないと言った方が正しいだろうか。
反逆者の汚名を被る羽目になった被害者と加害者という図で、加害者が処分されるのは当然だというような雰囲気になっている。
「ユストクス」
「かしこまりました、フェルディナンド様」
神官長に指名されたユストクスが舞台に持ち込んでいた大きな箱へと手を伸ばし、カチリと音を立てて鍵を開けた。
パタリと側面が前に倒れてきたことで、箱の中が見えた。まるで書類ケースのように浅い引き出しが五段ほどあるように見える。けれど、引き出しの中に何が入っているのかは見えない。
「神官長、あの箱は何ですか?」
「ハッセの登録証が入っている」
登録証というのは、洗礼式の時に血判を押して、領民登録するメダルのことらしい。エーレンフェストの平民の分は、登録も婚姻も葬式による削除も全て神殿が請け負っているので神殿に保管されているけれど、それ以外の直轄地では、秋の収穫祭で全ての登録を行い、町長から削除の連絡を受ける。そして、神官と徴税官からの報告に従って、城で文官が登録証の処理を行っているのだそうだ。
「今日はどれだけの処分が行われるかわからないので、ここに全て持ち込んだが、本来は城から出す物ではない」
……役所から戸籍簿を持ち出しているようなものかな?
それは管理する文官が側を離れるわけにいかないし、厳重に守らなければならないだろう。
ユストクスはするりと一枚の紙を取り出すと、エックハルト兄様に声をかけた。
「エックハルト、誰も近付けぬようにしっかり見張っていてくれ」
「うむ」
エックハルト兄様がシュタープを取り出し、剣の形へと変化させて、構える。近付く者は切り捨てる、というような構えに、どれほど重要な物なのかがわかる。
「始めろ、ユストクス」
「かしこまりました」
ユストクスがシュタープを握ると、「メッサー」と唱えた。シュタープがナイフの形に変わる。そのナイフと一枚の紙を手に、反逆者となった者の前に進み出た。