Ascendence of a Bookworm: I'll Stop at Nothing to Become a Librarian RAW novel - Chapter (255)
ディルクの魔力と従属契約
ハッセでの用件を終えて、神殿に戻ると、少しばかり深刻な顔をしたフリッツが待っていた。揺るぎない穏やかさで、いつも静かに笑っているフリッツにしては珍しい。
「おかえりなさいませ、ローゼマイン様。ディルクのことで急いでお耳に入れたいことがございます」
焦りが見えるフリッツの言葉に、わたしはハッとした。そういえば、もう一年くらいディルクの魔力に関しては放置している。
去年はタウの実でこっそりディルクの魔力を軽く吸い取ったけれど、これから先、同じことが何度も起こるはずだ。ディルクの扱いがどうなるかということも、神官長と話し合っておかなければならないだろう。
「神官長。わたくし、できれば、神官長にも一緒に聞いていただきたく存じます。お部屋にお邪魔してもよろしいでしょうか?」
ディルクに関することはビンデバルト伯爵に関係するので、大っぴらに話ができないし、わたしだけで勝手をすると、また怒られるに決まっている。
「あぁ、わかった。準備しておこう」
わたしは少しばかり早足のフリッツと共に自室に戻る。
そして、ニコラとモニカに手伝ってもらって、外出着から普段着に着替えると、わたしはくるりと一度部屋の中を見回した。連れて行く者と残す者を脳内で分けて、仕事を割り振っておかなければならない。
「ブリギッテは少し休憩していてくださる? ニコラ、ブリギッテにお茶を入れてあげてちょうだい。モニカは本日のハッセで預かった孤児の名簿を作成して、ヴィルマに報告をお願いします。ザームはモニカの書類作成に間違いがないか、よく見てあげてくださいね」
「かしこまりました」
全員に指示を出し終わると、わたしはフランとフリッツとダームエルを連れて、神官長の部屋へと向かった。
「あぁ、来たか」
「神官長、人払いをお願いいたします。護衛騎士はダームエルとエックハルト、側仕えはフランとフリッツを残して退室させていただけませんか?」
「……そうだな」
わたしが名を呼んだメンバーの顔を見回した神官長が「またしても、面倒事か」と小さく呟きながら軽く手を振った。
それを見た神官長の側仕えが一斉に動き始める。お茶の準備をしていた側仕えはフランに続きを譲り、書類を片付けていた側仕えは手を止めて、静かに退室していった。
フリッツが全員出たのを確認して、ぴっちりと扉を閉める。
「さて、ローゼマイン。何があった?」
フランのお茶を一口飲んだ神官長の言葉に、わたしはフリッツへと視線を向ける。フリッツは一度コクリと頷くと、口を開いた。
「先程ヴィルマから言付かったのですが、ディルクの魔力がここ最近急に増えているようです。対応をお願いしたいと言われております」
「ディルク?」
眉を寄せた神官長の呟きにわたしは、すぐさまディルクについて補足する。
「ビンデバルト伯爵に従属契約を結ばれた身食いの赤子なのですけれど……」
「あぁ。そろそろ魔力が溜まる時期か」
ディルクのことは憶えていなくても身食いの赤子という言葉で、すぐに用件がわかったようだ。わたしは大きく頷いた。
「そうです。どうしましょう? 奉納させますか? 魔力の増えすぎは生死に関わるので、早く対処したいのです」
「ふむ、今は少しでも魔力がある方が良いからな」
神官長はスッと立ち上がって、魔力を通さない革手袋をはめると、戸棚から黒い魔石を持ってきた。それを革袋に入れて、わたしに向かって差しだす。
「洗礼式前の子供を孤児院から出すことはできぬ。この魔石で魔力を吸収してくると良い。君が触れると君の魔力を吸い取るので、自分では触らぬように気を付けなさい。フランかヴィルマか、側仕えにやらせればよかろう。赤子の肌に触れさせれば、吸収してくれるはずだ」
「ありがとうございます。フラン、これを」
わたしは神官長から魔石の入った革袋を預かると、すぐさまフランに差し出した。わたしが持って管理するよりフランに預けた方が確実だ。
「……それから、わたくしにとっての本題はこれからなのですけれど、ディルクの従属契約の破棄はどうなりましたか?」
わたしは革袋をフランに渡すと、神官長にディルクの扱いを尋ねた。もうビンデバルト伯爵が捕えられてから一年半がたとうとしている。さすがに、忙しくてそれどころではないという状況は終わっているはずだ。
あぁ、と小さく言った後、神官長は難しい顔になった。こめかみを指先でトントンと叩きながら、自分の思考に入っていく。
「今のところ、特に手を付けていないが、どうしたものかな。これまでは放置しておいても特に問題なかったのだが、これから先を考えると、君に変更しておいた方が良いのか? だが、それはまた弱みを作ることにも……」
「あの、神官長? 破棄できたかどうかを伺っているのですけれど……」
ブツブツと独り言を言いながら、何やら考え込んでいる神官長に声をかけると、神官長は眉間に皺を刻んだ難しい顔のまま、わたしを見た。
「今までは契約を放置しておくのが最善だった」
「何故ですか?」
「すでに契約済みなので、他の貴族と契約する心配がないではないか。現状を維持していれば余計なことに気を回す必要がなかったのだ」
他領の犯罪者と繋がりがある赤子を他の貴族に取られる心配もなく、生活の面倒を見ることにわずらわされることもなく、孤児院に預けておける現状が一番楽だった、と神官長は過去形で言った。
「……何か状況が変わったのですか?」
「ゲオルギーネだ」
「え?」
アーレンスバッハに戻ったゲオルギーネが一体何だというのだろうか。ディルクとゲオルギーネが全く繋がらず、わたしは首を傾げた。
「彼女がアーレンスバッハの第一夫人となるのは、我々にとっては不本意、かつ、予想外だった。しばらくは第一夫人としての仕事に忙殺されるだろうが、多少余裕ができてエーレンフェストについて調べればビンデバルト伯爵のことが明らかになる」
「ビンデバルト伯爵はアーレンスバッハの貴族なのですか?」
そういえば、エーレンフェストの南の方に影響力を持っている人だったな、とわたしは祈念式の時の襲撃を思い返してみた。
「前神殿長のことを知らなかったくらいだ。事件当時、ゲオルギーネは第三夫人だったので、おそらく事件に関しては知らされていなかったのだろう。自国の貴族が他領で暴れたなどという醜聞をアーレンスバッハの領主が積極的に広めるとは思えぬからな。けれど、政治に関わる第一夫人として調べれば、様々なことがわかる。彼女は知ることができる立場になった」
「なるほど」
一応わかったような顔で頷いてみるが、正直なところ、全くわからない。ゲオルギーネがビンデバルト伯爵やディルクのことを知られたとして、何が変化するのだろうか。
「ハァ……。君が神殿長であり、孤児院長であることは周知の事実だ。ビンデバルト伯爵の契約を盾に、ディルクを寄越せと言われたり、孤児院を調べられたりするかもしれない」
「身食いの孤児を相手に、大きい領地の領主夫人がそんなことをしますか?」
わたしの見解を聞いた神官長は「君には情報収集能力が全くないな」と肩を竦めて、わたしを睨んだ。
「君はゲオルギーネが恨み、憎んでいるジルヴェスターの養女だ。そして、何より、結婚後もこっそりと交流を持つ程に大事な身内である前神殿長を死に追いやった原因の一つでもある。それをゲオルギーネは今回の来訪で知った」
「え!?」
わたしが勝手な行動をしないように監視するという名目で、神殿に引きこもっていた神官長が何故滞在中のゲオルギーネの行動を知っているのか。目を白黒させるわたしに、神官長は更に詳細な情報を教えてくれる。
「領主の母が失脚して勢いを失っていたアーレンスバッハと交流が多い派閥の者が開いたお茶会では、ダールドルフ子爵夫人が色々な噂をゲオルギーネに吹き込んだそうだ」
「ダールドルフ子爵夫人?」
「護衛任務の任務を果たせず、君に傷を付けてトロンベを増殖させた騎士の母親だ。表立って君に接触するのではなく、お茶会の噂話として知っていることを述べているだけなので、罪に問えないところが実に面倒だ」
保身のためには重要でも、そんな怖い情報、知りたくなかった。ひいぃ、と息を呑むわたしに、神官長は更にいろいろと教えてくれる。
「これから先、失脚した領主の母親に代わって、アーレンスバッハから派閥に影響を与えることで、ゲオルギーネのエーレンフェストでの発言力も大きくなる。そんな中、アーレンスバッハの貴族であるビンデバルト伯爵と従属契約をしていた身食いは、アーレンスバッハのものだと言われれば、反論は難しい」
アーレンスバッハからの圧力、ビンデバルト伯爵の親族からの要請、ゲオルギーネに根回しされたエーレンフェストの貴族など、ディルクを奪おうと思えば簡単に奪える者はたくさんいるらしい。
「孤児を取り上げて、孤児院に関して君にとっては不利なことをでっちあげるだけで、今まで作り上げてきた聖女伝説は威力が落ちる。どのような不利に働くか、今の時点では予想できないのだ」
「でしたら、わたくしと契約し直しせば、取り上げられはしないでしょう? 最初はわたくしと契約すれば良いとおっしゃっていたではありませんか。ビンデバルト伯爵との従属契約を破棄して、わたくしと契約し直しましょう」
そうすれば、表向きは手出ししにくいはずだ。誰がどこから手を出してくるかわからない状況よりは守りやすくなるだろう。ディルクをそのような危険な状態にしておきたくない。
「契約はできるし、した方がディルクを守るという点では楽だ。だが、君に近付こうと考えたり、逆に、恨みを持ったりした場合、ディルクの存在は君の弱みになり得る」
「ディルクはもうすでに身内みたいなものですから、とっくの昔に弱みになっています。守ることを前提に考えてください」
ディルクを助けたいと思ったわたしの祝福の光はディルクへと飛んでいったのだ。わたしにとっては、すでに身内扱いになっている。
わたしの言葉に、神官長はぎゅっときつく目を瞑り、「どこまで身内を増やすつもりだ、この馬鹿者」と呪うような低い声で呟いた。
「守るために契約するのは簡単だが、当初と違って、君の環境も変わっているだろう? 君と契約してしまうと、あの赤子は孤児院にはいられない。君の下で育てることになるが、どこで育てるつもりだ?」
城には入れられないし、実家という扱いになっているとはいえ、お母様にお願いすることもできない。結局は神殿長室で面倒を見ることになるが、側仕えの負担が大きくなるだけだ、と神官長に指摘された。
以前、ディルクはビンデバルト伯爵と契約したので、孤児院を出て神殿長室で育てられることになっていた。今は引き取り手の前神殿長が死亡し、契約主のビンデバルト伯爵も捕えられていて育てられる環境にいないので、育てる者がいない子として孤児院で預かっているのだ。
当然のことだが、わたしが契約すれば、わたしが引き取らなければならない。
「まさか、子育て用に側仕えを増やすつもりか?」
「う……。確かに、そういう面を考えるとギリギリまで孤児院に置いておきたいですね」
何より、わたしが引き取ることになれば、孤児院から出ることが許されていないデリアと引き離すことになる。ディルクを弟として大事にしているデリアと引き離すのはギリギリまで避けたい。せめて、男子棟と女子棟に分かれなければならない洗礼式までは。
「うーん、ディルクの所在に関しては現状維持で、契約をわたしに移すことはできませんか?」
「そのような都合の良い方法はない。……いや、待て。ないこともない」
「本当ですか!?」
さすが神官長! とわたしが手を打って喜ぶと、神官長は非常に嫌そうに顔をしかめた。
「ジルヴェスターの真似をするのは少々気に食わないが、記載済みの契約書を持たせておいて、危険が迫り、いざとなった時に、血判を押すことで契約できるようにしておけば、ギリギリまで利用されるのを防ぎながら、孤児院で育てることができるのではないか?」
「……なるほど」
そういえば、養父様の契約用の魔術具には土壇場で助けられた。一年半ほど前のことが遠い過去の出来事のようだ。
「伯爵の契約は解除しておくので、従属契約の書類に君の名を署名して、ディルク周辺の信用できる者に持たせておきなさい」
「はい」
神官長が作ってくれた契約書にわたしはサインして折りたたむ。
ただの従属契約に、普段から身に付けておけるような魔術具を作ることはしないようで、渡されたのは紙きれ一枚である。わたしが代筆してあるディルクの名前のところに血判を押せば、効力が発揮されるようになっている。
「お世話になりました。魔力に関してはこれからも神官長に相談して、魔石で時折吸収することにします」
「それがよかろう」
話し合いを終えたわたしは神官長の部屋から出ると、早速孤児院へと向かった。話を持ち掛けてきたフリッツの表情を考えると、結構ひどい状況ではないかと思ったからだ。
「ヴィルマ」
孤児院へと赴くと、わたしの姿を見つけたヴィルマが小走りに駆け寄ってくる。
「ローゼマイン様、最近、ディルクが泣き始めると、顔にブツブツが出るようになってきたのです。それで……」
おろおろしながら訴えるヴィルマにわたしは、ちらりとフランを振り返った。フランは黒い魔石が入った革袋を持って軽く頷く。
「ヴィルマ、わたくしは先程神官長と相談して参りました。大丈夫ですから、ディルクをこちらへ」
「かしこまりました。デリア、デリア! ディルクをこちらへ連れてきてちょうだい」
ヴィルマの呼びかけに、奥の方からデリアの「はい」と返事が聞こえた。
すぐに、ディルクと手を繋いで、デリアがこちらへやってくるのが見え始める。しばらく見ないうちにディルクはずいぶん大きくなっていた。オムツでぐるぐるにされて重そうなお尻を振りながら、いつ転んでもおかしくないくらい危なっかしいちょこちょこした動きで走れるようになっている。
……カミルもこれくらい大きくなっているのかな?
秋の成人式で遠目には見たけれど、勝手に動き回らないようにトゥーリに後ろから抱きしめられて固定されていたので、わたしはカミルが歩くところは見ていない。
「……ディルクはずいぶん成長していますね」
「えぇ、毎日が驚きの連続ですわ」
くすりとヴィルマが笑い、ディルクを見た後は心配そうに瞳を曇らせる。
「ヴィルマ、心配しなくても大丈夫です。神官長にお話して、魔力を吸収する魔石をお借りしてきました。これで、ディルクの魔力を吸い取れば症状は治まりますから」
「恐れ入ります」
ホッとしたように笑ったヴィルマのところへディルクがよたよたと走ってしがみついた。褒めろ、と言わんばかりにヴィルマを見上げている。
「う~、あ~」
わたしはカミルを見ているような、ものすごく微笑ましい気分でその場に少ししゃがんで、ディルクを覗き込んだ。その途端、ディルクは人見知りをするようにデリアにしがみつき、嫌々と首を振ってわたしから逃れる。カミルにも泣かれていたことを思い出して、ちょっとショックを受けた。
「ローゼマイン様、お久しぶりです。ディルクのこと、お願いします」
デリアがしがみつくディルクを抱きしめるようにしながら、わたしの前に跪く。
わたしが軽く頷いてフランに視線を向けると、フランは魔石を取り出して、ディルクの前にしゃがんだ。次の瞬間、ディルクはフランを怖がるようにデリアの後ろに隠れて、泣きべそをかき始めた。
「もー、ディルク。泣かないで。顔にぶつぶつが……」
そう言って、ディルクをなだめていたデリアがフランの持っている魔石を見て、さっと顔色を変えた。同時に、ディルクを守るようにきつく抱きしめる。
前神殿長に魔力を吸い出された状況を思い出したのだと思う。デリアの行動は、姉というより、小さなお母さんだ。
「大丈夫ですわ、デリア。前神殿長のように根こそぎ奪おうと思わなければ、あのような危険な状態にはなりません。それよりも、魔力が足りすぎている今の状態の方が危険なのです。ディルクもフランを怖がっていますから、デリアに吸収してもらえば良いわ。デリアならば、ディルクの顔色を見ながら吸収できるでしょう?」
フランが差し出した黒い魔石を一瞬躊躇するように睨んだ後、デリアはそっと手に取った。そして、恐る恐るという表情で、ディルクの手に触れさせる。
「あ~」
魔力が流れているのだろう。ディルクは不思議そうに目を瞬きながらデリアを見る。
わたしも溜まった魔力が流れていく感触はよく知っている。すぅっと体が軽くなる感じがして、結構気持ち良いのだ。
ディルクも心地良いのか、ご機嫌にデリアへと手を伸ばしていた。
「……そろそろかしら?」
ディルクが少し嫌そうに顔を背けるようになってきた。それを機に、デリアはディルクから魔石を離し、フランへと返す。
「ローゼマイン様、ありがとうございました。これで安心して生活できます」
そして、嬉しそうに笑って、わたしを見た。わたしはデリアに軽く頷いて応えた後、少し表情を引き締める。
「デリア、わたくしは先程ディルクの従属契約について、神官長と話をしました。そのことについて二人にも話をしたいのですけれど、よろしいかしら?」
わたしの言葉にデリアが軽く目を見張って、姿勢を正し、ヴィルマが真剣な眼差しになってコクリと頷いた。
「ビンデバルト伯爵とディルクの従属契約は破棄されることが決定しました。これから先は、ただの身食いの子供として孤児院にいることになります」
「よかった、ディルク」
「ただし、ビンデバルト伯爵の関係者から何か言って来たり、魔力目当てのエーレンフェストの貴族が手を出してきたりすることがないとは言い切れません」
デリアとヴィルマの顔が強張り、わたしを見た。デリアの手がディルクを守るように肩を抱き寄せる。それはわたしを守ろうとした家族の手に酷似しているように見えた。
懐かしさと恋しさに胸の痛みを感じながら、わたしは自分で持っていたディルクの従属契約書を二人に見えるように差し出す。
「これは、わたくしとの従属契約書です。契約を交わしてしまえば、ディルクは孤児院にいられなくなります。けれど、ディルクの身を守るためには多少の役には立つでしょう。これをデリアに預けます」
「……ローゼマイン様、預けるというのはどういうことですか?」
契約するのではなく、預けるということが理解できないというように、ヴィルマが目を瞬いた。
「わたくしはデリアをディルクの姉だと思っているので、この契約書をデリアに預けるのです。何か危険が及んだ時にはデリアが判断して、ディルクの血判をこの名前のところに押してください。それで契約は完了します。契約が完了すれば、わたくしは主としてディルクを守ると約束します」
驚いたようにデリアがわたしを見た。契約書とディルクとわたしを見比べ、ゆっくりと頷く。その唇には懐かしそうな笑みが浮かんでいた。
「……ローゼマイン様はお約束を守ってくださると、あたしは知っています。もう疑ったり、甘言に乗ったりはしませんから」
以前とは違った信頼の籠ったデリアの水色の瞳が、真っ直ぐにわたしを見つめてくる。
デリアが側仕えの頃にこれだけの信頼があれば、孤児院にデリアを縛り付けるようなことにはならなったのに、と少し残念に思う。
それと同時に、これから先、デリアとは新しい関係を築くことができそうだと感じた。