Ascendence of a Bookworm: I'll Stop at Nothing to Become a Librarian RAW novel - Chapter (504)
領地対抗戦の準備
ゲオルギーネと中央のどこかが繋がっている可能性が浮上してきたことで不安になったわたしにレオノーレがニコリと微笑みかける。
「ローゼマイン様、不安になるのはわかりますけれど、対応はアウブがお考えになることです。領主候補生であるローゼマイン様が考えなければならないのは領地対抗戦のことではございませんか? 寝込んでいらっしゃる間にずいぶんと近付いてまいりましたよ」
レオノーレの言葉にブリュンヒルデも加勢するように頷いた。
「えぇ。奉納式でツェントと繋がりができましたし、三つの大領地との共同研究もございます。去年よりもお客様が増えるでしょうから準備は大変でしょう」
「ローゼマイン、その二人の言う通りだ。判断は父上に任せ、我々は領地対抗戦の準備に取り掛かろうではないか。アーレンスバッハとの共同研究はどうなっている?」
ヴィルフリートの質問にわたしは少し気持ちを切り替える。皆の言う通り、目の前の課題を片付けていかなければならない。
「アーレンスバッハとの共同研究は届いたお手紙を読んで、リヒャルダの外出許可が出てから動きます。基本的にはアーレンスバッハで展示や発表をすることになっているので、わたくしが手を出すところは少ないでしょう」
寝込んでいる間にエーレンフェストの境界門を経由したお手紙が届いた。メインはレティーツィアからのお手紙だったが、中にはフェルディナンドの手紙も同封されている。テンションと一緒に熱が上がるため、フェルディナンドからのお手紙は体調が良くなってから、とお預けにされているのだ。
「ドレヴァンヒェルとの共同研究はどうなっていますか?」
ヴィルフリートとシャルロッテからドレヴァンヒェルとの共同研究についての進捗状況が説明された。ダンケルフェルガーとの共同研究の打ち合わせをしたヴィルフリートが主となって、ドレヴァンヒェルと発表の打ち合わせを行ったそうだ。
「エーレンフェストの魔紙の性質や品質向上の仕方、これまでの利用方法などが共通の研究内容として発表される」
「そして、魔術具に利用して、新しい発明となった部分に関してはそれぞれの領地で発表することになりました」
ダンケルフェルガーとの共同研究と同じような分け方だ。大領地に研究成果の全てが奪われず、それぞれの領地で発表できるのは良い。
「ドレヴァンヒェルだけで発表することにならず幸いでしたね。どのような新しい発明がエーレンフェストにあるのですか? 今まで報告を受けていないので、よくわからないのですけれど」
自動で音楽を奏でる楽器ができないか、とアイデアを出したわたしはマリアンネに視線を向けた。マリアンネは気まずそうに視線を下げる。
「……音楽を奏でる楽器はドレヴァンヒェルが研究に着手しています。わたくし達も研究はしてみたのですけれど、あちらの方が優れています」
アイデアを奪われた結果となったようだ。マリアンネとイグナーツが申し訳なさそうに説明してくれた。エーレンフェストの研究として発表できるのは、ドレヴァンヒェルの劣化版ばかりだそうだ。せっかく大領地との共同研究という大舞台を譲ってもらったのに、あまり良い結果が出せなかった、と肩を落としているのがわかる。
「お姉様、あまり彼等を責めないでくださいませ。大領地との共同研究自体が初めてで、彼等なりに頑張った成果をドレヴァンヒェルが上回っているだけなのです」
二人を庇うシャルロッテに「別に責めるつもりなどありません」と首を振った。
わたしは魔紙の品質の上げ方を知り、エーレンフェストで作られる紙の価値を上げたかったので、共同で発表できる基本の部分で必要最低限は満たしているのだ。
「でも、注目を集められる発明が全くないのも寂しいですね。せっかくですから、自動的に書箱に戻る本を作りましょう。ナンセーブ紙の品質をできる限りで結構です。上げてください。本を動かせる品質のナンセーブ紙ができれば、魔法陣自体はすでにあるのです」
ライムントに教えてもらった魔法陣と組み合わせれば、他領の重い本は動かせなくても、エーレンフェストの薄くて軽い本ならば動かせると思う。少し離れた場所に置いた本が自動的に書箱に入るのであれば、デモンストレーションをしても目を引くのではないだろうか。
「後はそうですね……。ドレヴァンヒェルが品質を上げて音を奏でる楽器を作っているのでしたら、こちらは平民でも使えそうなくらいに魔力を節約した音楽を奏でる魔術具を作ってみるというのはどうでしょう?」
下町にも石屋があって、クズ魔石ならば平民でも簡単に手に入ると聞いている。クズ魔石でオルゴールのように音を奏でることができれば、ふらっとやって来る旅の吟遊詩人を使いにくい高級志向のイタリアンレストランでも音楽を奏でることができるだろう。
ミュージックボックスのように客がお金を出して魔石をその場で買って、好きな曲を聴くことができるようにすれば、イタリアンレストラン側の懐を痛めることなく音楽を楽しむことができるようになるはずだ。
……まぁ、オルゴールとかは別に魔術具じゃなくても作れるんだけど、今、注文したらヨハンが死んじゃいそうだからね。
印刷関係が落ち着けば注文してみても良いかもしれないけれど、長期出張で一年間の半分以上を別の土地で金属活字や印刷機の作り方を教えながら過ごしているヨハンには難しいだろう。何より、わたしは音楽よりも印刷の普及を優先したい。
「平民でも楽譜と魔石を取り付ければ使えるようにするのです。できれば、小さいクズ魔石一つで一曲、二曲が奏でられるようにしたいですね」
ライムントやザックに相談する時の気分で、思い浮かぶことを次々と口に出していると、ヴィルフリートが軽く手を上げて遮った。
「ローゼマイン、突然そのように言われても二人が困っているぞ」
よく見ると、マリアンネとイグナーツが少し顔色を変えている。けれど、三年生のわたしでもいくつかやり方が思い浮かぶのだから、上級文官見習いの二人にそれほど難しいことを言ったつもりはない。わたしは思わず自分の文官見習い達を振り返った。
「なるべく単純な魔法陣を使ったり、補助の魔法陣を加えたりすることで魔力の節約はできますし、楽譜を書いて魔石を滑らせれば音が出ることはわかっているのですから、それほど難しくはないですよね?」
わたしの視線を受け、書字板にメモを取っていたローデリヒとフィリーネが少し考え込む。
「ローゼマイン様がおっしゃったのはライムントに教えてもらった魔法陣の応用ですよね? それをエイフォン紙と組み合わせるのでしょう? 平民が使える物ということで難しく考えてしまうかもしれませんけれど、作りとしては単純だと思います」
「楽譜を書くためのインクの品質を上げておけば、魔石の魔力が節約できませんか?」
ヒルシュール研究室でライムントとわたしの研究を近くで見ているローデリヒとフィリーネが思いつくことを口にしていくと、マリアンネとイグナーツは完全に顔色を変えた。
「……やってみます」
これが完成すればオリジナルの発明や発見が全くない研究にはならないだろう。どんな結果になるのか、楽しみである。
「ダンケルフェルガーとの共同研究はどうなっているのでしょう? お姉様が寝込んでいる間に進めているようでしたけれど……」
シャルロッテの質問にフィリーネとミュリエラが進み出た。先に説明を始めたのはフィリーネだ。
「ダンケルフェルガーとの共通部分はすでにまとめ終わっています。後はエーレンフェストの儀式について、ですね。シャルロッテ様がお茶会で集めてくださった儀式参加者の感想も付け加える予定です。それから、昨日報告があったのですけれど、儀式参加者の中に新しく眷属より御加護を賜った上級文官見習いがいらっしゃるので、そちらも急いで研究発表に加えます」
「奉納式から今までの間に御加護を賜った方がいるのですか?」
シャルロッテの驚きの声にミュリエラがニコリと微笑んだ。
「ヨースブレンナーのリュールラディ様です。奉納式に出席した時点でまだ御加護を得るための儀式を終えていらっしゃらない三年生はリュールラディ様だけだったようですね。周囲の勧めで最終試験までずっとお祈りをしたそうです」
上級貴族は比較的早くに講義を終えるものだ。そのため、奉納式に参加できるレベルの上級文官見習いはリュールラディ以外、すでに儀式を終えていたらしい。まだ儀式をしていなかった彼女は周囲の勧めもあって、ギリギリまでお祈りをしてみることにしたそうだ。
「ドレヴァンヒェルでもしていたように、リュールラディ様もお守りを作って真摯にお祈りをしたそうです。……芽生えの女神ブルーアンファへ」
「……ずいぶんと珍しい女神に祈っていたのですね」
お母様の恋物語では非常によく活躍している芽吹きの女神 ブルーアンファだが、御加護をいただくために祈りを捧げる対象としてはとてもマイナーだと思う。ドレヴァンヒェルが揃ってお守りを準備したように、文官ならば英知の女神 メスティオノーラが一番メジャーになるはずだ。
わたしの感想にミュリエラが苦笑しながら教えてくれた。
「素敵な恋物語に出会えるように、と熱心にお祈りしていたようです」
……自分の恋の芽生えをお祈りしていたんじゃないんだ。
自分の恋より恋物語を求めるリュールラディに、わたしは何となく仲間意識を持ってしまった。多分、リュールラディはわたしと同じように恋より本に生きる残念な子に違いない。
「自分の欲求に忠実、いえ、一点集中でお祈りをしたせいでしょうか。それとも、上級貴族でお祈りの時に込める魔力が多かったせいでしょうか。元々水の適性を持っていたため、授かりやすかったのかもしれません。リュールラディ様はこの短期間でブルーアンファの御加護を賜りました。これは素晴らしい成果だと思います」
魔力を奉納しつつ、真摯に祈りを捧げることで他領の上級貴族でも加護が得られることが証明されたのだ。確かにエーレンフェストの研究には大きな成果である。リュールラディには詳しく話を聞いて、研究の結果に加えたいところだ。
「周囲の方々は、他の神々の御加護を得てほしかったようですけれど、御本人はとても満足されていらっしゃいます。ぜひともローゼマイン様にお礼を申し上げたいと喜んでいらっしゃいました」
ちょっと変わっている気はするけれど、本好きに悪い子はいない。リュールラディもきっと良い子なのだろう。お茶会で少し話をしただけなので、顔はよく覚えていないけれど、貸してくれた本は覚えている。
古い言葉で書かれた恋物語だった。お母様のお話以上に神様が出てきて、男性が女性を褒める形容にも神様の例えが使われていて、行動を示しているのか、形容に使われているのか、解読が非常に難しかったはずだ。
……筋金入りの恋物語好きさんだよね。ミュリエラと気が合いそう。
そう思ったところで考え直す。すでに仲良しに違いない。だからこそ、新しく加護を得た情報をミュリエラが得ているのだ。
「ローゼマイン様、こちらの研究に協力していただくお礼として、リュールラディ様へ新しい貴族院の恋物語をお貸ししてもよろしいでしょうか?」
おずおずとミュリエラが切り出してきた。確か彼女にお茶会で貸したのは、恋物語よりの騎士物語で、貴族院の恋物語ではなかったはずだ。新作の本はどうしても上位領地の領主候補生を優先するので、中位領地の上級貴族であるリュールラディにはなかなか新作が回らない。きっと貴族院の恋物語の新作を楽しみにしていたのだろう。
新作を楽しみにする気持ちはよくわかる。
本を読んで、友達と感想を言い合って一緒に盛り上がる楽しさも知っている。
麗乃時代にはありふれていた光景だった。
ふわっと心が温かくなった。
ミュリエラとリュールラディが一緒に本を覗き込んで笑い合う光景がふっと頭に浮かぶ。
それは本を作ってきた自分にとって、本当に幸せな光景だった。
「ヨースブレンナーも領地対抗戦の準備に忙しい中を協力していただくのですもの。もちろん、よろしくてよ。きっとブルーアンファの御加護を実感してくださるでしょう」
共同研究に関する話を終えた後、エーレンフェストに向けて質問の手紙はヴィルフリートに書いてもらうことが決まった。話し合いを終えたわたしは部屋に戻る。
「フィリーネ、アーレンスバッハから届いたお手紙を出してくださいな」
アーレンスバッハのレティーツィアから届いた手紙は、フェルディナンドからの課題らしい。彼女は回りくどい貴族的な言い回しのお手紙を書くための練習をしているそうだ。そして、同時に、わたしにも課題が出されている。レティーツィアのお手本となるような返事をしなければならないのだ。
……領地対抗戦の準備で忙しいのに、貴族言葉のお返事なんて面倒な課題。
ちょっと膨れて見せるものの、久し振りのお返事なのでテンションは上がる。寝込んでいる間は隠し部屋に籠ることもできないので、普通のインクで書かれている部分はフィリーネに読んでもらった。
表には研究発表におけるグラフの扱いやライムントに出した指示、それから、領地対抗戦から卒業式の予定について書かれていた。領地対抗戦の夜、フェルディナンドはエーレンフェストのお茶会室に宿泊予定なのだ。
「リヒャルダ、フェルディナンド様がお茶会室を使うための許可は養父様から出ているのですよね?」
フィリーネがお手紙を取りに行っている間、わたしはリヒャルダと話をする。フェルディナンド、ユストクス、エックハルト兄様、アーレンスバッハの側近の四人がお茶会室で泊まる予定だそうだ。
「エーレンフェストで一度検閲されていますから、アウブの許可も同時に出ていますよ。ジルヴェスター様は寮にお部屋を準備したいとお考えでしたけれど、アーレンスバッハの側近が一緒ではどうしようもございませんからね。長椅子の準備が大変です」
フェルディナンドはアーレンスバッハで過ごしているけれど、まだ結婚を済ませていないので、厳密にはエーレンフェストに所属しているというややこしい状態だ。そのため、エーレンフェストの寮で過ごすように、とディートリンデから指示があったそうだ。
……その理由は、お母様の貴族院の恋物語について話を聞いたディートリンデ様が、卒業式当日の朝にエスコート相手が迎えに来てくれるシチュエーションに憧れを持ったからなんだって。
すでに執務に関わっているフェルディナンドから情報が流出することを恐れたアーレンスバッハの貴族達は反対したらしいが、ディートリンデは「フェルディナンド様はわたくしの望みを叶えてくださるとおっしゃったでしょう?」と捧げられた魔石をちらつかせ、頑として譲らなかったようだ。
「……フェルディナンド様がこちらにいらっしゃるのは大歓迎なのですけれど、お茶会室に長椅子で寝泊まりされるのでは疲れが取れないと思いませんか?」
「情報流出を疑われてアーレンスバッハでの立場が悪くなるのを避けるためですから、仕方がございませんよ」
アーレンスバッハの側近でも出入りできるのはお茶会室だけだ。ちなみに、エーレンフェストで許可が出なければ、ヒルシュール研究室で一晩泊まることになるそうだ。研究室で宿泊することになれば、間違いなくヒルシュールと研究話で徹夜になるので、できれば避けたいと書かれていた。
……研究話が盛り上がって、久し振りに研究を始めたら、卒業式のエスコートなんて頭から吹き飛びそうだもんね。
「長椅子の他には何が必要かしら? お茶会室の長椅子で一晩を過ごすことになるのでしたら、フェルディナンド様が少しでも居心地良く寛げるようにしたいのです」
わたしが考えていると、リヒャルダが苦笑した。
「衝立や荷物を入れるための木箱の準備も必要だと思いますけれど、その辺りの準備は側仕えにお任せくださいませ。それより、姫様はお返事を書く際に、お料理を追加するために保存箱を持って来るように、と追記するのを忘れないようにしてくださいね。城の料理人に作らせて、運ばせますから」
リヒャルダも息子のユストクスと会える数少ない機会が楽しみなのだろう。とても張り切っているように見える。学生達は領地対抗戦の準備で忙しいので、フェルディナンドを迎える準備はリヒャルダを始め、学生達に同行してきている側仕えを動員することになるのだ。
「ローゼマイン様、こちらがアーレンスバッハからのお手紙です」
「ありがとう、フィリーネ。フィリーネ達は研究発表の準備をお願いね」
「はい。頑張ってグラフも覚えます」
フェルディナンドからの返事には、グラフを使用しても構わないけれど、わたしの文官見習い達が完全に理解できる範囲の物だけにするように、と書かれていた。領主候補生であるわたしは社交を優先しなければならないため、発表は文官見習い達が行うことになる。グラフに関する質問を受けても対応できるようにしておかなければならない。
付け加えるならば、やはりグラフを使う発表は画期的な物になるようで、本来の研究よりもグラフの方が注目を集めてしまう危険性もあるそうだ。
……王族が参加した儀式より注目されることはないと思うんだけどね。
そう思いながら、わたしは手紙を抱えて隠し部屋へ向かう。
「わたくし、しばらく隠し部屋に籠りますね」
一度はフィリーネに読んでもらったけれど、表に書かれた返事を読み返す。アーレンスバッハとの共同研究に関しても色々と書かれている。かなり時間はかかったけれど、フラウレルム経由の報告書もフェルディナンドの手元に届いたようだ。
……でも、共同研究の内容よりもシュバルツ達の研究に関する質問の方が多いんだよね。
よほど研究に飢えているらしい。シュバルツ達の研究はヒルシュールに丸投げしているので、わたくしには詳しいことがわからない。リヒャルダの外出許可が出たら、研究の進み具合の確認をして返事をした方が良いかもしれない。
ちなみに、光るインクでは「王族を図書館に案内したのか? 君は入らなかっただろうな? それから、ダンケルフェルガーやドレヴァンヒェルとの共同研究はどうなっている? ぶつりと君からの手紙が途切れたが、報告できないようなことをしているのではあるまいな」と書かれていた。脳内ではこめかみをトントンしているフェルディナンドの様子がすでに浮かんでいる。
……まずい。
よく考えてみれば、王族を書庫に案内した頃から手紙を出していなかった気がする。ちょっとしたことがどんどん大きくなるので、どう手紙に書けば良いのかわからなかったのだ。
……確かに怒られたくないから、という気持ちもちょっとだけあったけど。
「うーん、今正直に書いて領地対抗戦で怒られるか、領地対抗戦で会った時に説明して怒られるか……。どっちにしても怒られるよね。とりあえず、褒められそうなことを優先して書いておこう」
再会したら、まず、褒めてもらう。それから、怒られそうな内容を説明しよう。そうしなければ、再会からお別れまでずっとお小言になってしまうに違いない。
わたしは光るインクを使わずに、皆が知っている内容の中でも褒められそうなことを書いておいた。貴族院で奉納式を行って魔力を王族に寄付したとか、シュタープを二本使えるようになったとか、ダンケルフェルガーとのディッターを頑張ったこととか、当たり障りのないところだ。
「これでよし。出会い頭に怒られることはないよね? うん」
明日にはヒルシュール研究室に行って、ライムントと研究発表の最終的な打ち合わせをしたり、シュバルツ達の研究の写本を返してもらったりしなければならない。
「もうあんまり日がないもんね。頑張らなきゃ」