Ascendence of a Bookworm: I'll Stop at Nothing to Become a Librarian RAW novel - Chapter (542)
養父様とおじい様の再取得 後編
「養父様が知っての通りだと思いますけれど……? わたくしにとってフェルディナンド様は保護者です。後見人だと思っていますけれど、他に何かございますか?」
何を問われているのかわからなくて、わたしは首を傾げた。今更フェルディナンドとわたしの関係を尋ねられても困る。他になんと答えれば良いのか。
わたしの回答に養父様と、後ろに護衛騎士として控えていたお父様が望んでいた答えを得たように、フッと表情を緩めた。
「其方にとってはそうであろうし、フェルディナンドにとっても其方は被保護者であろう」
「えぇ。そうですね。それ以外に一体何だとおっしゃるのでしょう?」
わたしが問うと、養父様は「うーむ」と言いにくそうに口籠った後、側近達を含めてゆっくりと見回す。
「貴族の基準で考えると其方等は……お互いに踏み込みすぎているように思えるそうだ」
「はぁ、そうなのですか」
何となく頷いてはみるものの、全くわからない。貴族の基準が。わたしが全く理解できていないことは通じたようで、養父様とお父様が顔を見合わせ、言いにくそうに口を開いた。
「実は、其方がフェルディナンドに恋情を抱いているという噂がある」
「それは初耳ですし、身に覚えがありませんね」
「……え?」
何故か周囲がざわめいた。正直なところ、どうして側近達にまでそのような反応をされるのかわからない。フェルディナンドのことは貴族の中で一番信頼しているし、家族同然に大事だと思っている。「トゥーリやルッツと同じくらい好き」とは言えるけれど、恋情と言われると首を傾げつつ、否定するしかないのだ。
「どうしてそのようなことを言われるようになったのでしょうね?」
「あ、それは……後見人と被後見人という関係で、館を相続するのはそれほど奇異なことではないのだが、使用人や家具が入れ替えられることなく使用することは少ない。何より、フェルディナンドの部屋をそのまま保存していて貴重品の管理をしていたり、要望に合わせて荷物をアーレンスバッハへ送ったりするのは……その、踏み込みすぎていると言わざるを得ないのではないか、と聞いたことがある」
お父様がひどく苦い顔になってそう言った。館の管理をして、貴重品を預かり、要望に合わせて準備をするのは女性の家族の役割で、他人のやることではないそうだ。
「え……? でも、ユストクスもエックハルト兄様もエーレンフェストに貴重品を残していますし、リヒャルダやお母様が要望に合わせて送っているのですよね? フェルディナンド様には管理して送ってくれる母親がいらっしゃらないので、館を管理している側仕えに要望を伝えて準備してもらっているのですけれど、それが問題なのですか?」
別にわたしがフェルディナンドの荷物の準備をしているわけではない。管理をしているのはラザファムで、わたしはラザファムに伝言するだけのオルドナンツだ。どうして突然そんなことを言われるようになるのか、全く理解できない。フェルディナンドが去ってから季節が二つ過ぎようとしているけれど、これまではそんなことを言われなかった。
「フェルディナンドの場合は緊急で呼ばれたために荷物の準備が間に合わず、季節が変わってから送ることになったが、本来ならば、他領へ婚姻で向かう者は荷物を残さずに持って向かうのだ」
そういえば、エーレンフェストとフレーベルタークの境界門で受け取ったクラリッサの荷物は、必要な物が全て積まれていると言っていたはずだ。どうでもいいことだけれど、衣装は流行りに合わせて誂えるので少なめだが、流行が関係ない下着はたくさん準備するものらしい。
「荷物を実家に残してくるのは離婚を望んでいるようで良くないと言われているからな」
「そうなのですか!? では、フェルディナンド様の結婚は大丈夫なのでしょうか? 春にも荷物を送りましたけれど、要求された必要分しか送ってないので、お部屋にまだ残っているのですけれど」
さすがに「環境が整ったら呼び寄せる予定のラザファムも健気に待ってるんだけど……」とは言わなかったけれど、荷物が残っている宣言に養父様もお父様も目を見開いた。
「フェルディナンドの荷物は私が管理した方が良いかもしれぬ……。さすがにこれ以上其方に任せるわけにはいかぬからな」
「どうしてですか?」
「其方が管理する上で一番問題になるのは、フェルディナンドがアーレンスバッハへ向かったことで、周囲の認識としてフェルディナンドが後見人から外れてしまったことだ。すでに季節が変わり、周囲の認識が変わるくらいに時間が過ぎている。其方はもうフェルディナンドの被後見人ではない、と見なされていると思った方が良い」
後見人が残した館を相続するまでは問題ないが、その後も関係が変化していないことに問題があるらしい。自分達の認識は変わっていなかったが、周囲の認識が変わっていることに気付いた、とお父様が言った。
「周囲の忠告によって気付かされた我々同様に、其方にとっては突然すぎると思うかもしれぬ。だが、其方の外見が成長しているのだ。少し背が伸びて、見た目が貴族院へ入学する年頃に見えるようになってきた。事情を知っている我々が目溢しできたとしても、周囲の目が保護者を慕う幼い子供を見る目ではなくなってきている」
わたしは自分の手足を見下ろした。ユレーヴェから目覚めて、自覚がないままに裾の長さが変わったし、「貴族院へ行く年になったのだから」と何度か言われたけれど、周囲の扱いはほとんど変わらなかった。それは二年間ユレーヴェに浸かっていて、わたしの外見が洗礼式前後のままだったからだろう。
今もヴィルフリートやシャルロッテとはまだまだ差があって、彼等より子供にしか見えないけれど、周囲の目は変わってきているらしい。わたしは成長を単純に喜んでいたけれど、こんな変化が出てくるとは理解していなかった。
「あ~、それから、アーレンスバッハへ向かったフェルディナンドを心配しすぎているという声もある。その心配の半分も婚約者に向けられていないのではないか、と」
言いにくそうな養父様の言葉だったけれど、わたしは「その声は間違っていませんね」と頷いた。
「フェルディナンド様とヴィルフリート兄様のどちらが心配かと尋ねられれば、フェルディナンド様の方がよほど心配ですもの」
わたしがそう答えると、うっ、と言葉に詰まったようにお父様がわたしを見た。そして、養父様は「むぅ」と頭を押さえる。何かおかしいことを言っただろうか。
額を押さえるお父様と考え込むように腕を組む養父様を見つめる。養父様は何とも言えない表情で私を見た。
「……少しは婚約者の心配もしてやってくれぬか? 孤軍奮闘という様子でライゼガングに立ち向かっているのだが」
「これでも多少は心配していますよ。でも、フェルディナンド様よりヴィルフリート兄様の優先順位が低いのはどうしようもありません」
「何故だ?」
養父様に問われて、わたしは養父様を真っ直ぐに見た。
「ヴィルフリート兄様は一応婚約者ですけれど、フェルディナンド様は仕事の多くを肩代わりしてくれていた保護者で、本や知識や貴族社会で生きていく常識を与えてくれた師匠で、わたくしを一番心配してくださっていた主治医ですもの」
これまでに与えられてきたものが違う。接してきた時間が違う。何故ヴィルフリートとフェルディナンドを比べるのかわからない。同列になるはずがない。
「孤軍奮闘とおっしゃいますけれど、ヴィルフリート兄様にはこうして気にかけて心配してくれる両親がいて、何かあった時に協力を頼めるシャルロッテやメルヒオールもいます。神殿業務に差し支えない範囲であれば、わたくしだってお手伝いできるではありませんか。フェルディナンド様と同じように心配する必要がありますか?」
フェルディナンドはアーレンスバッハで隠し部屋も工房もなく、信用できる側近が二人しかいない状態で、周囲の全てに緊張しながら執務漬けで過ごしている。おまけに、忙しいと食事を疎かにしたり、睡眠時間を削ったり、毒を警戒して慣れない料理はあまり手を出したがらなかったりするのだ。周囲を警戒するので他人と打ち解けるのは苦手っぽいし、婚約者はヴェローニカにそっくりなディートリンデである。心配でしかない。
「ヴィルフリート兄様がフェルディナンド様のように寝食を放棄して、回復薬を飲みながらエーレンフェストの仕事の大半をこなしていて、休めと言っても聞かずに仕事をしている、という状態であれば、フェルディナンド様と同じように心配しますよ。でも、ヴィルフリート兄様は普通に過ごしているのですよね?」
わたしの言葉に養父様はもちろん、側近達も絶句した。お父様がぐりぐりと眉間を押さえながら「其方の心配はそのような基準で優先順位が決まっているのか……」と呟く。
「……何かおかしいですか、お父様?」
「いや、普通は自分との関係性というか、親密さというか、そういうもので優先順位が変わるであろう? 保護者よりも婚約者と親密になってくる年頃ではないか」
「つまり、お父様がお母様と親密になってきた年頃ということですか?」
「あ、いや、違う。忘れなさい」
咳払いしてそっぽ向いてしまったけれど、どうやらお父様とお母様が親密になってきたのはわたしくらいの年頃だったようだ。正直なところ、同じことを求められても困る。大学卒業付近まで生きた麗乃時代の記憶があるせいだろう。ヴィルフリートは兄という立場であっても年下に見える。同い年という意識にならないせいか、どう見ても恋愛対象には見えないのだ。
……せめて、麗乃の享年くらいにはなってほしいなぁ。
「それでもライゼガングとの関係などを考えれば、ヴィルフリートが心配になるものではないか?」
「ですから、全く心配していないわけではありませんよ。ヴィルフリート兄様の側近に情報共有をしてみようとしたり、お守りを作ったりはしましたもの。けれど、情報共有は拒絶されましたし、お守りに関してもヴィルフリート兄様からは何の反応もないのです」
受け取ったというオルドナンツが飛んでくることもなかったし、側近を通じて喜んでいたという報告もない。喜んでくれたのか、必要のない余計なお世話だったのかわからないので、次を作る気にはならないし、接触がないので忙しい日常の中でヴィルフリートのことを思い出すことさえ最近では少なくなっている。
「それはヴィルフリートも悪いな」
「あとは、そうですね。ライゼガングの支持など、アウブになる時までに得られていれば良いので急ぐ必要はないでしょう、と助言することも考えたのです。でも、祈念式でひどい言葉を言われたらしいヴィルフリート兄様の神経を逆撫でする、と側近達に止められました」
わたしが側近達を見ながらそう言うと、養父様とお父様は揃って溜息を吐いた。
「それは側近達も止めるであろう」
「うむ。その判断は間違っていない……」
側近達の判断自体は間違ってないらしい。何となく皆からヴィルフリートの詳細を知らせたくない。近付かない方が良い、という空気は感じるけれど、本当にそれが正しいのだろうか。わたしはコルネリウス兄様達から得た曖昧な情報を伝え、養父様に尋ねてみる。
「養父様、ヴィルフリート兄様は今どのような状態なのですか? わたくしは側近達の言う通り、ヴィルフリート兄様に近付かない方が良いのですか?」
養父様はしばらく考え込んでいた。お父様も、養父様の側近も難しい顔をしている。
「……今は、そうだな。ヴィルフリートにはどれほど不愉快でも、気に入らなくても呑み込まねばならぬ現実がある。同時に、ローゼマインにも呑み込まねばならぬ現実がある。二人が自分達の現状を見つめられるようになるまでは近付かぬ方が良いだろう」
「わたくしが呑み込まなければならない現実、ですか?」
首を傾げると、養父様は深緑の目でわたしをじっと見つめた。
「フェルディナンドはもう其方の後見人ではなく、他領の者だ。アウブ・アーレンスバッハが亡くなり、礎を染め始めたディートリンデ様の支えであって、其方の支えではなくなった。其方の婚約者はヴィルフリートだ。フェルディナンドの心配をするのが悪いことだとは言わぬ。私も心配はしているからな。だが、心配して世話を焼くことで、すがって甘えていてはならない時が来ている。其方はこれからの生を共にしていくヴィルフリートと支え合えるようにならなければならないのだ」
それは養父様が最初に言った通り、呑み込みたくないけれど、呑み込まなければならない現実だった。距離が離れても変わらない関係でいたかった。何かあったら愚痴を手紙に書いたり、知りたいことをこっそりと教えてもらったり、フェルディナンドに甘えられる関係を断ち切りたくなかった。
「ローゼマイン、フェルディナンドから過保護に守られていた期間は心地良かったであろう? 常に行く先を示してくれていたので、歩きやすかったであろう? いなくなった途端に周囲と噛み合わなくなったり、同じことをしているつもりでも周りの反応が変わったりしたことはないか?」
「あります。……フェルディナンド様ならば止めるだろうと思うところで、誰も止めてくれなくて戸惑ったこともあります」
わたしの言葉に養父様が表情を緩めた。
「私も同じだ。あれがいなくなったことで、自分がいかに考えてこなかったのか、嫌という程突きつけられた。王命の結婚でアーレンスバッハへ向かったフェルディナンドがエーレンフェストに戻ってくることはない。それは覆しようがない現実だ」
粛清の結果、養父様が大変な状態になっているのはクラリッサに聞いて知っている。「アウブ・エーレンフェストは見通しが甘すぎたように思えます」とクラリッサが言っていたけれど、本来ならば粛清の時はフェルディナンドがいるはずだった。ライゼガングを黙らせる秘策を抱えていたフェルディナンドは、ある程度の後始末まで終えてからアーレンスバッハへ向かうはずだったのだ。
様々なことを調整してくれていたフェルディナンドがいないことで起こっている歪みは自力で直していかなければならない。それはフェルディナンドに頼りきりだったわたしと養父様の大きな課題だ。
「ローゼマイン、ヴィルフリートは其方がエーレンフェストに留まるために必要な鎖だ。もっとお互いに向き合わねばならぬ。婚約者であるヴィルフリートとの仲を深めて、余所からの干渉を防げるようになっておくことは大事だぞ」
すぐに現実を呑み込むのが難しくても自分で消化していかなければならない、と言われて、わたしはゆっくりと頷いた。
「……でも、何をすればヴィルフリート兄様との仲が深まるのでしょうね?」
「とりあえず、最初は振りで良い。フェルディナンドよりもヴィルフリートの心配をするところから始めろ。婚約者である自分よりもフェルディナンドの方が大事にされているとヴィルフリートに思わせている現状の改善からだ」
養父様からの課題に、わたしは「……はぁい」と小さく返事をする。心配する振りというのは、どうすればよいのだろうか。食事の時間になったら仕事を終えるようにオルドナンツを飛ばしたり、隠し部屋から引っ張り出したり、側仕えに睡眠時間を確認したりすればよいのだろうか。
……オルドナンツで「こんな時間に仕事などしていない」と返事をされれば「もっと頑張ってください」と言いたくなりそうなんだけど。
「それで、其方の相談事とは何だ?」
わたしは養父様に問われて、孤児院の子供の話をする。魔術具がないことでやる気を失った子供のために魔術具と回復薬を準備したい、とお願いする。養父様は少し顔をしかめて、「必要ない」と言った。
「旧ヴェローニカ派の洗礼式さえ終えていない子供の命を救い、孤児院で保護するだけでも過分な配慮と言われているのだ。孤児院の子供に与えるくらいならば、自分の派閥の子供に与えるに決まっているだろう」
養父様にハルトムートから言われたのと同じようなことを言われ、わたしは同じように言い返す。
「わたくしは自分の管轄である孤児院の子供を救いたいのです。孤児院に入った子供を救うことにすれば、魔術具のない子が孤児院へ連れて来られて、知らないところで死んでしまう子供が少しでも減ると思うのですけれど」
「貴族となるために必要な金がない子供の面倒など見切れぬ。孤児院や子供部屋の子供達にかかる費用は、親が貯めていた金を使えばよいと其方が言ったし、私はそれを認めた。だが、魔術具を持っていない子供の分は、親が貯めていなかったことになる。その子供に魔術具を与えるための金は誰が出すのだ?」
親が貯めていた教育資金で保護された子供達は貴族として必要な物を与えられているのだ。親が貯めていなければないというのは正しい。けれど、それでは魔術具のない子供に魔術具を与えることはできない。
「えーと、貸付にしておいて、将来働くようになってから返してもらうこともできると思いますけれど……」
親を失った旧ヴェローニカ派の学生達には貴族院を卒業するまでの資金を貸していることを例に出しながらわたしが言うと、養父様は呆れた顔になった。
「見習いとして働き、貴族院でお小遣いを稼ぎながら数年分の費用を借りるのと、貴族として洗礼式を受ける前から莫大な借金を背負うのでは大きな違いがあるであろう。孤児院出身では親も親戚もないはずだ。貴族として生きていくのには更にお金がかかるのに、莫大な借金を背負ってどのように貴族として生きていくのだ?」
「えーと……」
口籠るわたしに養父様は「私は魔術具を持っていない子供に新しく与える気はない」とはっきりと宣言した。
「子供の命を救うのは構わない。魔力があり、これまで通りの補助金と自分の稼ぎで青色神官としての生活が維持できるならば、神殿で青色神官として生きていくのも良いだろう。だが、魔術具を持っていない孤児を貴族にする必要性は全く見出せぬ」
「でも……」
「ローゼマイン、本来ならば接収した旧ヴェローニカ派の持ち物は私の物で、味方の貴族達に様々な形で分配されるはずの物だ。今、救われて孤児院にいる子供達が持っている魔術具は、彼等が処分されていれば同派閥の貴族に配られる物だったのだ。これ以上を望むな。すでに私は彼等に十分以上の施しを行っている」
ついさっきおじい様から新しいことを始める時は様々な影響を考えるように、と言われたわたしはすぐに反論を思いつくことができずに俯いた。救いたいと思っても、救うのは簡単ではない。どこにどんな影響があるのか、わたしにはわからない。
……孤児院の皆を何とか救ってあげたいんだけど、どうすれば正解かなんてわからないよ。
「余計なことを始めようと考える前に、自分がしなければならぬことを考えよ。領主会議で星結びの儀式を行う準備はできているのか?」
「青色神官や巫女として護衛してくれる者も決まりましたし、図書館へ向かう人員も決まっています」
「ならば、よい。前日には城に戻っているように」
領主会議に関する話をしていると、おじい様が儀式を終えて戻ってきた。大きな肩が落ちていて、心なしかしょんぼりしているように見える。
「おじい様、いかがでした?」
わたしが尋ねると、おじい様は悔しそうに養父様を睨みながら「……17の御加護を得た」と答えた。どうやら養父様より少なかったのが悔しいようだ。
「お祈りを始めた頃は私も伯父上も同時期だが、私はアウブとして礎を染める時にかなりの魔力を奉納しているからな。多少の差はあろう。それよりもどのような神々から御加護を得たのだ?」
変わった眷属から加護を得た養父様がわくわくしながらおじい様を見つめる。おじい様は自分の手を握ったり、開いたりしながら、「むぅ」と呟いた。
「私も全属性にはなったぞ。ほとんどの戦い系の眷属から御加護を賜ったからな。どの程度強くなれるのか、訓練して調べて見なければならぬが……」
「では、師匠。早速手合わせをいたしましょう!」
アンゲリカがぱぁっと顔を輝かせ、同時にコルネリウス兄様の悲鳴のような声を上げた。
「その年でそれ以上に強くなってどうするつもりですか、おじい様!?」