Ascendence of a Bookworm: I'll Stop at Nothing to Become a Librarian RAW novel - Chapter (92)
神官長の言い分とわたしの決意
一言も口にできないまま却下され、わたしは神官長が何を言っているのか、全く理解できなかった。あの孤児院の惨状を知った上で「改善する理由がない」と言われるとは、全く考えていなかったのだ。
「改善する理由がない、というのはどういうことですか? 幼い子供が飢えて今にも死にそうな状態なのです。とても人を育てる環境ではない場所で……」
ちゃんと状態が伝わっていないのではないか。わたしは不安になって、神官長に今日見た光景を説明しようとした。
しかし、神官長は軽く手を上げて、わたしの説明を遮る。
「働いている灰色神官や巫女、見習いならばともかく、洗礼前の孤児に使う余計な金はないということだ。君はあのような両親のもとで生まれ育ったから知らないのかもしれないが、神殿は洗礼前の子供を人とは認めていない。洗礼式を受け、市民登録をされて初めて、人として扱われる」
洗礼式が終わるまで仕事に就く事もできないことから、そういう事情があるかもしれないと何となく考えた事はあった。けれど、人とは認めないからといって、あの扱いで良いわけはないと思う。
「……では、あの子達は死んでも構わない、ということですか?」
「あぁ、それもまた神の導きだろう。忌憚ない話をすれば、人数は減る方が助かる」
否定して欲しかったのに、あっさりと肯定されてしまった。わたしが唖然としているうちに、神官長は今の孤児院に残っている灰色神官や巫女について説明を始めた。
「青の衣は今の倍以上の人数がいた。側仕えや側仕え見習いも単純に計算して倍だ。青の衣一人に平均5~6人の側仕えがいるとして、彼らが貴族社会へと戻って行った時、どれだけの側仕えが残されたかわかるか?」
十数人の青色がいなくなれば、一気に60~70人の側仕えが神殿に残されることになる。青色神官の寄付や生活費で側仕えを養ってきた神殿の構造では、経営的に破たんしてもおかしくはない。
「貴族の下働きとして、30人ほどの不要な灰色巫女や神官を売ったが、灰色神官はまだ多いくらいだ」
「その余っている神官が小さい子達の面倒を見るというわけにはいかないのでしょうか?」
「面倒を見させて、人数が増えたら困る。何のために神殿長が灰色巫女を処分したと思っている? 君は私の言っていることが理解できていないようだな」
今が一番青色神官や巫女が少ない時で、数年後にはまた増えてくるだろうから、完全に余りがいない状態は困る事になるのが目に見えている。しかし、すでに神の恵みが足りていない状態で、人数がこれ以上増えるのは避けたいと神官長は言う。
「……せめて、掃除だけでも、何とかなりませんか? あれほど不潔な状態では疫病が流行ってもおかしくありません」
「ふむ。見苦しいので、いっそ、全てを葬ってしまえと言うことか? 一考の余地はあるが、外聞はあまり良くないな」
「違いますっ! そんな意味じゃなくて……」
どうしてそうなる!? と怒鳴りたいのを呑みこんだ。
わたしと神官長では立場も考え方の基本になる常識も全く違う。言葉は通じるのに、お互いの考え方が理解し合えない。
「神官長、孤児院って何のためにあるのですか? 親がいない子供を育てるための場所ではないのですか?」
「少し違うな。誰も面倒見ない子供を貴族の施しにより、貴族に仕える者に育てるところだ」
孤児院に対する認識が違いすぎる。可哀想とか、助けてあげたいとか、そんな気持ちすら神官長には通じない。
自分の言い分を理解してもらえないことに神官長も苛立ちを感じてきたようで、軽く溜息を吐いた。
「死に行く者に対して何かしたいなら、君がすれば良い。誰もなりたがらない孤児院の院長になり、君が孤児院に関して全責任を負うか?」
予想外の言葉にわたしはぐっと息を呑んだ。孤児達を助けてあげたい気持ちはあるが、孤児院を預かって全てに関して責任を負う覚悟なんてない。そんな怖いことできない。
「……負えません」
ギュッと拳をきつく握って、わたしはゆっくりと頭を振った。
神官長は「ふむ」と一つ頷いた後、わたしを見据えて、さらに言い募る。
「では、今までの青と灰色の比率から考えて、神の恵みで満足させられる孤児院の人数はおよそ40人だ。この神殿にいる青の衣の中で自由になるお金を一番持っているのは君だが、残り40人以上いる孤児院の食事を君が準備できると言うのか?」
「……できません。工房のお金がほとんどで、わたくし個人が自由にできるお金は、ほとんどないんです」
部屋の改修や側仕えへの給料などを考えても、正直、すでにお金を使いすぎている。レシピを売ったお金で、何とかセーフというレベルだ。まだイタリアンレストランも始まっていないし、これから先、収入が入ってくる目途が立っていない。今の状況で孤児達を抱え込むなんてできるわけがない。
「責任が持てない、お金も出せない、何もできないなら黙っていなさい。中途半端な正義感で子供が口出しすることではない。君は余計な事を考えず、おとなしく自分の好む本を読んでいればいい」
神官長の言い分が正当すぎて、何も言い返せなかった。何もできないわたしに文句を言う権利などない。中途半端な事をするくらいなら、何もしない方がマシな事も多い。
「……お時間を取らせてしまい、申し訳ありませんでした」
わたしは項垂れたまま、神官長の部屋を退室した。
神官長に頼んでみて、ダメだと言われたのだから、わたしにこれ以上できる事はない。おとなしくしているしかないのだ。そう自分に言い聞かせてみても、鉛を呑みこんだように胃が重くて、ぐるぐるしている。
「マイン様、図書室に寄られませんか? 少しは気が晴れるかもしれません」
フランがスッと跪いてわたしの顔を覗きこんだ。神官長に会うことを渋っていた時と違って、気遣う言葉はとても優しく耳に届く。
「……フランは、こうなる事を知っていたのね?」
「神官長のお心を推し量るのが仕事でございました。故に、マイン様が気落ちする結果になるだろうとは思っておりました。孤児院の事はもうお忘れください」
フランに手を引かれ、図書室へ向かった。本を読んでいる間は、余計な事を考えず、本に没頭できる。
しかし、あっという間に6の鐘が鳴り、ルッツが迎えに来る時間になった。図書室を出て、自室に戻って着替えなければならない。
部屋に戻る途中では、嫌でも回廊から孤児院が見える。その瞬間、脳裏にあの光景が広がって、吐き気が込み上げてきた。
「うぐっ……」
えずいた瞬間、わたしは口元を手で押さえて、吐き出すまいと必死に耐える。慌てたフランがわたしを抱えて走り、清掃用のバケツを差し出した。
バケツに向かって嘔吐しながら、わたしはそのまま泣きだしたくなった。
あの強烈な光景を忘れられるわけがない。
ずっと本を読んでいられれば考えずにいられるかもしれない。けれど、読んでいない時間にはきっと思い浮かんでしまう。
麗乃時代は日本とアフリカくらい距離が離れていて、自分の日常生活に全く関係がなかったから、100円や200円の募金で平然としていられた。テレビ画面で見ただけなら、可哀想だねって、ご飯でも食べながら話題にして、すぐに忘れられた。
でも、自分の部屋が孤児院と繋がっていて、壁を隔てたところにあんな状態の孤児がいるとわかっていて、平然と生活なんてできない。
「マイン様、どうだった?」
無邪気にギルが結果を聞きに駆けよってくる。期待に満ちた黒に近い紫の瞳が痛くて、そっと目を伏せた。
「ごめんなさい、ギル。神官長には却下されました」
「な、なんでだよ!?」
信じられないと言うように、ギルが狼狽してわたしを見つめる。あの状態の孤児を助けるどころか、ギルの期待に応えられなかったことも辛くて、わたしは床をじっと睨んだまま、これから先のギルの言葉に対して身構えた。
「ギル、控えなさい」
「もー、バッカねぇ。期待するだけ無駄って言ったでしょ?」
フランとデリアがギルに対して制止の言葉をかけた。ギルは何か言いたかっただろうが、ぐっと唇を噛みしめて、わたしと同じように俯いた。
デリアはわたしの着替えを準備しながら、訳知り顔で肩を竦める。
「あの状況を引き起こしたのはね、子供を産んだ巫女を仕事ができない、役立たず、と言って一番に処分した神殿長ですもの。神官長に何かできるわけがないのよ」
「デリア」
「本当の事だもん。お腹の大きくなった巫女や子供を産んだばかりの巫女があそこの世話をしていたのに、これ以上増えたら困るってことで、一番に処分されたのよ? でも、客人が来た時に花を捧げる灰色巫女は必要だし、お腹が大きくなったら交換しなきゃいけないから、余分に残しておかなきゃいけないんですって」
今、洗濯や掃除の下働きとして孤児院に残されている灰色巫女や見習い巫女が全員年若くて、そこそこ見目も良い者ばかりだとデリアは言う。妊娠出産した巫女は処分され、可愛くないのは貴族の下働きに売られ、花候補だけが余裕を持って残されているらしい。
それが青色神官に必要な者を残した結果だそうだ。
男は妊娠出産をしなくて長く働けるため、よく教育された灰色神官は貴族の側仕えとして今まで高く売れていたらしい。しかし、貴族自体の数が減っているため、需要が少なくなり、売れなくなったため、今は巫女より余っていると言う。
「それって、孤児院の子供が青色神官の子ってことじゃないの? 貴族の血を引いているんじゃ?」
「……半分くらいはそうだと思いますよ? あたしもそうですから」
デリアはさらりとそう言った。
「え? では、デリアも魔力があるの?」
「魔力に差がありすぎると、子供ができにくいんですって。だから、ここで子供ができるのは青色神官でも魔力がものすごく低い人ばかりで、神殿で子供ができると貴族社会には戻れないと聞いたことがありますわ」
そして、今、神殿に残っているのは魔力が低い青色神官ばかり、と。
あまりにも自分本位な運営に頭も胃も痛くなった。
「神殿の事を決めるのは神殿長なんだから、神殿長に逆らうよりは神殿長に気に入られた方がいいのよ。さぁ、殿方は出て行って。マイン様を着替えさせるんだから」
パッパッと手を振って、フランとギルを追い出すと、デリアは手早くわたしの着替えを始める。
「もー! マイン様も自分の方が死にそうな顔をしてないで、忘れたらいいでしょ? 悩んだところで、どうせ、何もできないんですから」
デリアはそう言いながら、手早くわたしを着替えさせる。
何もできないわけではない。マイン工房の資金を全部つぎ込めば、改善はできるはずだ。
しかし、神殿長や神官長が孤児院の改善を求めていないことと、資金が切れた時に元の木阿弥になること、そして、自分が孤児院の命に対して全責任を負わなければならないことに、わたしが怖気づいて資金をつぎ込むだけの決心ができないだけだ。
「ルッツ! ルッツ!」
「マイン!?」
門に迎えに来たルッツにぎゅーっとしがみつく。その途端、堰を切ったように涙が溢れてきた。わたしの常識が通じるところに戻ってきたことに安堵したせいだろう。
ルッツは条件反射のようにわたしの頭を撫でながら、本日の送迎係であるフランに視線を向ける。
「フラン、何があったんだ?」
「足を進めながら説明いたします」
フランは門番に少しだけ視線を向けて、足を進め始めた。
帰路を急ぐ街並みを歩きながら、フランが今日起こった事を説明する。
「神官長にお願いするだけだ。通らなかったら諦めるとおっしゃっていましたが、マイン様のお心は割り切れないようですね」
「……チビが死にかけているのは、きついよなぁ。でもさ、マインにできることなんてないんだろ? 気にするな。もう忘れろ」
貧しくても比較的穏やかに生きてきたわたしにとって、あの光景は強烈すぎて、割り切れるわけがない。
「忘れられたらいいって、わたしも思ってる。知らないままなら、それでよかった。でも、自分の部屋と壁を隔てただけの向こうで、あんなことになっているとわかっていて、忘れることなんて、できるわけがないよ」
べそべそと泣きながらそう言うと、ルッツは足を止めて、わたしの顔を覗きこんだ。
「マインは孤児院の惨状が嫌なんだよな? どうなって欲しいんだ?」
わたしは今日の光景を思い浮かべる。自分の中で孤児院とはどうあるべきか考えて、口を開いた。
「……あの子達にもお腹いっぱいご飯を食べて、成長して欲しい。あんな病気になりそうな汚い、臭い、剥き出しの藁の中で寝るんじゃなくて、せめて、綺麗な布団で寝て欲しいよ」
「はぁ? お腹いっぱい食べるなんて、金持ちじゃなきゃ無理だろ? 普通に、元気に動けるくらいのご飯で十分じゃないか。オレだって家じゃ腹いっぱいのご飯なんて食べられねぇよ」
ルッツはわたしの言葉を聞いて、高望みしすぎだ、と言った。わたしも自分の家での生活を思い出して、神殿の貴族生活を中心に孤児院の運営を考えていたことにハッとする。
最近、自分が神殿でおいしい料理をお腹いっぱい食べていて、家でも家計に余裕が出てきたから忘れていたが、下町の子供だってお腹いっぱいに食べられる子供はそれほど多くない。ルッツだって、ずっとひもじい思いをしてきたし、今も兄達との食事戦争には負けている。
「そっか。お腹いっぱいじゃなくていいんだ……」
「その食事だって、全部マインが出そうとするのがおかしいだろ? まずは、自分で採ってくればいいじゃないか。腹が減っているのに、じーっと待ってて、どうするんだよ?」
神殿が特殊な施設だから、すっかり自分の常識と切り離して考えていたが、下町の子供達と同じ水準を目指せば、金銭的な負担はぐっと低くなる。買えない分の食料は森に行って、自分で採ってくればいい。
「残念ですが、孤児は神殿から出られません」
フランが困ったように、そう意見を出した。孤児は基本的に孤児院に閉じ込められている。洗礼式までは見苦しいのを貴族の目に触れさせないように。洗礼式後は多分、余計な知識や常識が入りこまないように。
フランの意見に思わず押し黙ったわたしと違い、神殿の常識にほとんど触れていないルッツは首を傾げた。
「そのさ、孤児が外に出ちゃいけないって誰が決めたんだ? いらない子扱いされてるなら、森に行ったところで大して問題にされないんじゃないのか? フランやギルだって、神殿の外に出てるわけだし」
「フランやギルは、わたしの側仕えだから、特別なんだよ」
わたしが通いで神殿に入っているから、その送り迎えが仕事になっているだけだ。青色神官のお伴で貴族街に行く灰色神官と同じ仕事という扱いで、自由に出ているわけではない。
「じゃあ、残ってるヤツら、全員をマインの側仕えにすれば? そうしたら、全員が外に出られるんだろ?」
「……え?」
予想外の提案にわたしは何度も目を瞬いて、ルッツを見上げた。
「ちょっとお待ちください。それはいくら何でも……。マイン様が全員分の衣食住を賄うことは無理でしょう?」
「外に出そうと思ったら、全員の服買わなきゃいけないけどさ、森に行く服なんて、ウチらが使ってる古着屋で安く買える分で十分じゃん」
全員分の安い古着と、何人かが森に行くためのナイフや籠の購入費を頭の中で計算してみた。さすがに、神殿の雑務を全部放り出して全員で森に行けるわけがないので、班分けしてローテーションを組ませれば、必要な道具は少なくて済むはずだ。
「……安い古着50~60着と何人かが森に行くためのナイフや籠なら、フラン達に買った服3着より安いね」
わたしの言葉にフランはぎょっと目を見開いて、自分が着ている服を見下ろした。わたしが側仕えに買った服は、上質な物だ。家で使っているわたしの普段着とは比べ物にならない。
「森に連れて行って、食べられるものを採らせて、自分の事は自分でさせればいい。金がない孤児院ってことは、つまり、貧乏なんだからさ」
ルッツの言い方は身も蓋もないが、その通りだ。与えられるのを待つだけではなく、自分の事は自分で何とかできるようにすればいい。
「今まで何度かギルやフランにはベンノのところに行ってもらったことがあるから、側仕えをお使いに出す事はできるわよね?」
「……さようでございます」
「だったら、わたしの側仕えに森までフォリンを採りに行ってもらうことができるんじゃない?」
わたしの言葉に、ルッツがキラリと目を輝かせた。
「マイン工房孤児院支店か」
「そう。孤児院をマイン工房の支店にして、何か作らせて自分達の食い扶持を稼がせることができれば、最悪、わたしがいなくなっても飢える子供は出なくなるかもしれない」
むしろ、森へ行って、食料を採ってきて、料理できるようにする方が先かな。
わたしとルッツが、どうすれば効率的か、どこから改革を始めればいいか話し合っていると、フランが言いにくそうに口を挟んできた。
「とてもいい考えだと存じます。……ですが、マイン様。それは、今までの神殿のやり方と全く違うものでございます。それだけの人数に対する責任を担うことができるのか、神官長には問われます。大丈夫なのでしょうか?」
ざっと血の気が引いて行く。
フランの言う通りだ。わたしという異分子がいきなり慣習を無視して、孤児院を引っかき回して、良い結果だけが得られるとは思えない。神殿長や神官長を初めとした青色神官と軋轢があるだろうし、工房の仕事をさせて稼ぐとなれば、どう考えてもみんな平等にはならないのだから。
「ごめん、ルッツ。わたし、責任を持つのが、怖い……」
「じゃあ、マイン。何もせずに孤児が死んでいくのを待っているのとどっちが怖い?」
「……」
どっちも怖い。あの孤児を見捨ててしまったら、ずっとこの鉛を詰め込んだような胃の重さを抱えていくことになると思う。しかし、命に対する責任を持つなんて、わたしにできるわけがない。
そっと胃の辺りを押さえたわたしにルッツは、軽く肩を竦めた。
「あのさ、マイン。難しく考えずに、やってみてダメなら、止めればいいじゃん」
「ルッツ、止めればいいって……孤児達の命がかかっているんだよ?」
わたしは思わず、むぅっとルッツを睨んだけれど、ルッツはまるでベンノのように、フンと鼻を鳴らした。
「仕事がなくなった工房や売れ行きが悪い店が潰れることは普通にあるんだぜ? でも、孤児院でやれば、工房が潰れても、工員が路頭に迷うことがないだろ?」
「……住むところは孤児院だし、少なくても神の恵みはあるもんね?」
「工房がダメだったからって、路頭に迷うヤツがいないのに、マインが責任を持たなきゃいけないようなことなんて、何があるんだよ? だいたい、マイン工房を動かす時はオレもいるんだぜ?」
多分、色々と責任を持たなければならない時があると思う。ベンノに言わせれば、工房長としての責任について、もっと違う意見が出てくるかもしれない。
でも、何だろう。
ルッツと一緒なら大丈夫だ、と思えた。
一人でやるのは怖いけど、ずっと一緒にやってきたルッツがいてくれるなら、何とかなると無条件に思えた。
「一緒にやろうぜ、マイン。助けてやりたいんだろ?」
「うん!」
ルッツが差し出してくれた手に飛び付くわたしを見て、フランが仕方なさそうに笑った。
「私もご協力いたします、マイン様」