From Slaying Metal Slimes to Being Called the King of Black Steel e RAW novel - Chapter (13)
第13話 超精密マナ測定器
中に入ると、看護師のような白い服を着た二人の男性が待っていた。
「こちらにどうぞ」と促され、悠真は部屋の中央に置かれた椅子に座る。そこにはCT検査で使うような大型の機械が縦に置かれていた。
輪っかが上から降りてくる仕組みのようだ。
「それでは測定しますので、じっとしていて下さい」
男性がそう言うと、もう一人の男性が機械を操作し、装置が動き始めた。
悠真は緊張して顔を引きつらせる。こんな大掛かりな物だとは思っていなかったからだ。
なるほど、これは確かに電気店で売ってるドライヤー型の測定器とは訳が違う。
そう思って悠真は安心する。これなら自分のマナ指数が正確に計れるだろうと。足元まで下がった丸い輪っかは、その後ゆっくり上部へと戻ってゆく。
「はい、もう大丈夫ですよ」
測定は思ったより早く終わり、悠真は席を立つ。部屋の脇に置かれたプリンターからA4サイズの紙が出てきて、男性がそれを手に取った。
「結果が出ました。こちらですね」
渡された紙にはいくつかの項目が書かれていたが、その全てがゼロと示されている。悠真は眉を寄せた。
「これって……」
「ええ、マナ指数に関してはゼロですね。この装置は0.01単位まで測定できますので間違いないかと」
結果はドライヤー型の測定器と同じだった。どうやら本当に金属スライムが弱すぎてマナが入らないようだ。
悠真は「ありがとうございました」と言い、がっかりして部屋を出た。
◇◇◇
「今の子、マナがあると思って来たんだろうな」
マナ指数計測室にいる二人の職員が、笑いながら話をする。
「ああ、最近多いからな。低階層の魔物を倒して、マナ指数が上がってると思ってる素人さん」
「さすがにこの‶青のダンジョン″にいるスライム程度、いくら倒してもマナには反映されないんだけど……それを言うとがっかりされるから言えないし」
「ははは、確かに」
そんな会話をしてる中、機器の調整を行っていた職員が異変に気づく。
「ん? あれ……」
「どうした?」
「いや、それがおかしいんだ。機器の調子が悪いのか……反応しなくなってる」
「ええ!? この装置が壊れたことなんて一度も無いだろ。どうしたんだよ急に?」
二人は慌ててマナ測定器を直そうとするが、数億円はくだらない精密機器はその後なんの反応も示さない。
初めての事態に、二人の職員の顔から血の気が引いていく。
そんなことが起きているなどつゆ知らず、悠真はダンジョンに続く扉の前に立っていた。
「せっかく来たんだから、一応入ってみるか」
扉を開き中へ進む。大きなドーム状の空間、屋根は半透明のガラスになっており、日の光が差し込む。
それでも空間全体が薄暗く感じるのは、床に空いた穴が漆黒の闇を晒していたからだろう。悠真はごくりと唾を飲み込む。
「はーい、こちらがダンジョンの入口ですよー! 入る方は準備をしっかりして下りていってくださいねー」
都の職員か、制服を着た女性が手を振って案内をしている。親子連れがなにかを聞いた後、中央にある穴を下りていった。
悠真が足を進めると、そこにはしっかりとした階段があり、かなり下まで続いている。覗き込むと足がすくんだ。
――ダンジョンってこんなに大きいのか? 庭にあるのとは大違いだ。
「初めての方ですか?」
「え? ええ」
おっかなびっくりで穴を見ていた悠真に、職員の女性は声をかけてくる。よほど挙動不審に見えたのだろう。
悠真は一階までの入館証を見せる。
「1Fまでですね。大丈夫ですよ、危なくないですから。ところで魔物を倒す武器は持ってこられましたか?」
「い、いえ、なにも持って来てないんですけど」
マナ測定を目的で来たため、魔物を倒すことは考えていなかった。
悠真はどうしようかと頭を掻いていると、女性の職員は「それじゃあこちらから」と、脇に置いてあったワゴンを見せてくれる。
そこにはハンマーや、小型のナイフ、斧や棍棒が並んでいた。
「こちらの物でしたら貸出もしておりますので、どうぞお持ち下さい」
「いいんですか?」
「ええ、帰りに返してくれればいいですよ」
笑顔で話してくれる職員さんに甘えて「じゃあ」と、ハンマーを手に取る。
悠真は改めて階段の上に立ち、ふぅと息を吐いてから、ゆっくりと足を踏み出して階段を下っていった。