From Slaying Metal Slimes to Being Called the King of Black Steel e RAW novel - Chapter (15)
第15話 魔鉱石
青のダンジョンから帰って来た悠真は、勉強机に座り、腕を組んで唸っていた。
「う~ん、どうしたものか……」
机の上に置かれた‶魔鉱石″を、じっと見つめる。
「これを使ってみたいけど、俺のマナ指数ゼロなんだよな」
目の前の‶魔鉱石″はダンジョンのマナ測定器で計っていない。魔鉱石にマナが内包されていれば、悠真に使うことはできない。
「あんなに弱い普通のスライムでも0.2カラットのアクアマリンを出してたし」
ネットで調べたところ、アクアマリンの0.2カラットは0.2のマナ指数があるそうだ。だとしたらこの魔鉱石も、多少のマナを含んでいてもおかしくない。
だが更に調べると、マナ指数ゼロの魔鉱石もあるという。
「もしゼロなら使えるのかな?」
せっかく121日もかけて手に入れた物だ。使ってみたい。
実際に使えるかどうかは食べてみるのが手っ取り早いが、もしダメならウ〇コになって出てきてしまう。
二センチの鉄の玉がお尻から出てくることが心配だった悠真は『大便太さ』で検索してみる。すると便の太さは三~四センチぐらいが通常と出てきた。
「だったら二センチの魔鉱石はなんとかなるか」
悠真は覚悟を決め、魔鉱石を飲み込むことにした。石をアルコールで消毒し、意を決して口に含む。
ペットボトルに入った麦茶でゴクリと流し込んだ。
「うん……どうだろう?」
特になにも感じない。やっぱり失敗だったか、そう思っていると腹部が次第に熱を帯びる。
「これは――」
熱は全身を駆け巡る。今まで感じたことのない感覚。
だが恐怖や不快感は無い。どこか心地良さすらある。三十秒ほど経つと、不思議な感覚は自然と収まった。
「なんだったんだ、今の……魔鉱石を取り込んだってことなのか?」
手をグーパーと握ったり、体を動かしてみるが特に変わった様子はない。
確か魔鉱石は身体能力を強化すると言われていたな。悠真は階段を下り、サンダルを履いて裏庭に出る。
外は寒く、吐く息は白くなる。スウェットの上下だけではさすがに寒いなと思っていると、犬小屋にいたマメゾウが飛び出してきた。
「わん、わん!」
「ちょっと試すだけだから、静かにしててくれよ」
足元はサンダルだが、悠真は軽く走ってみる。やはり何か変わってる感じはない。
その場でステップを踏み、シャドーボクシングをしてみるが結果は同じだ。
「身体強化するって言っても、変化が小さすぎて分からないのかな?」
ちょっと期待していただけに悠真は肩を落とし、ガッカリした。
まあいいかと思い部屋に帰ろうとした時、側にいたマメゾウに変化が起こる。
「うぅ~~」
「ん? どうした、マメゾウ?」
「わんわんわんわんっ!」
急に烈火の如く吠え出した。悠真が近づくと、マメゾウは吠えながら一歩、二歩と後ずさる。
どうしたんだよ、と困惑する悠真は、差し出した自分の左手を見てギョッとする。
手の色が真っ黒になっていたからだ。
「なんだコレ!?」
両手を見るがやはり真っ黒。袖をまくっても腕が黒ずんでいるため、全身に回っているのかと悠真は青ざめる。
「もーう、どうしたの? マメゾウ」
庭の異変に気づいた母親が、台所から声をかける。
――マズイ! こんな姿、見られたら大変なことになる。
悠真は慌てて家に入り、母親と鉢合わせする寸前で階段を駆け上がった。
「ハァハァ……ビックリした……」
部屋に入りドアを閉めた悠真は、その場にへたり込む。しばらく呆然としていたがヨロヨロと立ち上がり、壁にかけてある鏡に自分の顔を映した。
心配した通り顔も黒くなっている。あまりの変貌ぶりに言葉を失うが、灯りの下でよく見ると、完全な黒ではなくメタルグレーのような色をしている。
「これ……金属スライムと同じ色か?」
髪の毛も一本一本が細い針金みたくなっていて、眼球さえ金属の色を帯びている。
腕を叩けば、キンキンと金属音が鳴り、痛みはまったく感じない。
「これがあの‶魔鉱石″の能力……全身を硬くできるってことなのかな? いや、それよりこれ元に戻るのか? このままなんてことないよな?」
悠真は自分の頬をツンツンと指でつつきながら不安になる。戻れ! 戻れ! と強く念じるが、一向に戻る気配はない。
時間が経てば戻るのか? と思い待つことにするが、ただ待つのもなんなので、いつも使っている金槌とガスバーナー、冷却スプレーを持ってくる。
「少し試してみるか」
まずは金槌を持ち、自分の腕に振り下ろす。キンッと音が鳴るだけで痛くもかゆくもない。力を入れて叩いても結果は一緒だ。
今度はガスバーナーのトリガーを引いて着火する。腕にゆっくりと近づけると、
「熱っ! やっぱり火には弱いか……金属スライムと同じだ」
冷却スプレーも使ってみるが普通に冷たかった。やはり物理的な攻撃以外は防げないようだ。そんなことをしている内に体は元に戻っていった。
「五分ぐらいで終わりか……まあ、戻って良かったけど」
体を金属のようにする魔鉱石。確かに身体強化の一種でおもしろいとは思ったが。
「これ、どう役に立つんだ?」