From Slaying Metal Slimes to Being Called the King of Black Steel e RAW novel - Chapter (21)
第21話 特殊な能力
三連続で魔鉱石がドロップした後、悠真はさらに二日様子を見た。
結果は予想通り、魔鉱石が金属スライムから産出される。
間違いない――
「あの‶金の魔鉱石″はドロップ率を100%にできるのかもしれない。『運』の要素に作用してるのかな? よく分からないが、凄いぞコレ!」
だが問題もある。この効果が
魔
鉱
石
だけなのか、あるいは
魔
宝
石
もドロップさせる効果があるのか分からないということだ。
魔宝石は売れば金になる。
もし魔宝石のドロップ率も100%にできるなら、いくらでも稼ぐことができる。
だとしたら、ルイが手に入れたって言う‶魔宝石″より凄いものかもしれない。
悠真はかつてないほど興奮していた。
明日は土曜で学校は休みだし、調べるとしたら――
「あそこしかないな」
◇◇◇
武蔵野にある‶青のダンジョン″。
その一層に、悠真の姿があった。今回は持参した金槌と、魔宝石を入れるためのリュックサックを背負って準備は万端だ。
相変わらず人はたくさんいるが、悠真は気にせずスライムを探すことにした。
五分ほどで一匹目が見つかる。プルプルと震える普通のスライム。
もはやスライム自体がお宝に見えてきた。
悠真は満面の笑みを浮かべ、金槌を振り下ろす。
小一時間で三匹のスライムを討伐した。その結果ドロップした魔宝石は――
ゼロ!
やっぱりダメだったか……。
悠真はがっかりしてダンジョンにある岩に座り、呆然とする。期待していただけにショックは大きかった。
青い顔をしていたのか、周りにいた人が心配そうに見つめてくる。
希望が泡のように消えていく。
‶金の魔鉱石″の効果の対象になるのは魔鉱石のみ。すなわち『黒のダンジョン』でしか使えない能力。恐らく、それで間違いないだろう。
利益にならない‶魔鉱石″など、いくらドロップしても意味がない。
体を硬くする‶黒い魔鉱石″も、二、三個あれば充分だ。悠真は蒼白な顔を上げ、辺りを見回す。
楽しそうにスライムを倒す親子や、イチャイチャとくっつきながらダンジョンを回るカップル。目に映る何もかもが恨めしく思えた。
周りから褒められるルイを見て嫉妬していた。羨ましかった。
もし、‶魔宝石″が100%ドロップするなんて夢のような力が手に入ったら、ルイに追いつけると思ったのに。
やっぱり、ずっと努力していたルイと肩を並べようとすること自体、おこがましいのだろうか。
悠真はヨロヨロと立ち上がり、もう二匹スライムを倒したが、やはり‶魔宝石″はドロップしなかった。
クソ! クソ! クソ! 役に立たない魔鉱石め! と悪態をつきながら、悠真はトボトボと『青のダンジョン』を後にした。
◇◇◇
「はあ~」
庭にあるダンジョンの中、悠真は目の前に転がる‶黒の魔鉱石″を見つめていた。
大きな溜息をつき、うんざりした気持ちになる。
青のダンジョンで絶望した翌日からも、魔鉱石は十日連続でドロップしていた。
「さすがに、もういらないよ」
力なく漏らす言葉に、マメゾウだけが「くぅ~ん」と答えてくれる。
悠真は雑に魔鉱石を拾い上げ、台所に行って水で洗い、そのまま口に含んで飲み込んだ。もはやサプリ感覚だ。
計十四個の魔鉱石を体に取り込んだ悠真は、最大一時間十分‶金属化″を維持できるようになっていた。
長く維持できるのはいいが、やはり使い道は思いつかない。
自分の部屋に戻り、学校へ行く準備を始める。楓から聞いた話では、ルイは卒業してすぐエルシード社に入って研修を受けるらしい。
新人でも年収二千万を超え、研修を終えて‶
探索者
″として活躍するようになれば、年収五千万以上も稼げるとか。
悠真も大学を受験し合格してはいたが、誰もが認める三流大学。卒業してもいい企業に就職できる可能性はかなり低い。
将来を約束されたルイ。
将来に悲観的な悠真。
この差はどこで生まれたんだろう? そんなことを悶々と考えながら、悠真は家を出て学校へと向かった。