From Slaying Metal Slimes to Being Called the King of Black Steel e RAW novel - Chapter (23)
第23話 赤い魔鉱石
「ふー、手こずったなー」
悠真が懐中電灯で穴の中を照らすと、そこには赤く輝く石が落ちていた。
「やっぱり『黒のダンジョン』ではドロップ率100%のようだ」
赤い魔鉱石を拾い上げ、まじまじと見つめる。形や重さはいつもの黒い魔鉱石と同じだが、色は鮮やかなメタルレッド。
宝石ではないが、ちょっと綺麗だなと思ってしまう。
大量のスプレー缶を片付け、悠真は自分の部屋へと戻る。
「さて、こいつをどうしたものか……」
悠真は、机の上に置かれた‶赤い魔鉱石″を見つめて腕を組む。
どうせ売れないのは分かっているため自分で使おうと考えているが、どんな能力を得られる魔鉱石か分からない。
窓の外に視線を移すと、日が傾き、斜陽に照らされた影が伸びる。
結局一日、赤スライムに掛かり切りだったなと悠真は溜息をつく。
「問題は何の能力かってことだよな」
金の魔鉱石と同じように、きっと特殊な能力が身に付くんだろう。特に体に害は無いと思うが……。
金の魔鉱石は『黒のダンジョン』のドロップ率を100%にするものだった。
赤い魔鉱石だったら『赤のダンジョン』のドロップ率を100%にできてもおかしくはない。
赤い魔宝石は取引価格も高いから、そうだったらありがたい。
だが悠真は恐らく違うだろうと思っていた。魔物からドロップしたものは、魔物の特徴を色濃く反映すると言われている。
だとしたら――
悠真は‶赤の魔鉱石″をウェットティッシュでよく拭いてから口に入れ、水道水で流し込んだ。
熱が全身を巡るような感覚。問題なく取り込めたようだ。
体を見回すが変化は無い。
「やっぱりあれかな」
悠真はガスバーナーを取り出す。左腕の袖を巻くってから、右手に持ったバーナーに火を灯す。
噴き出す炎をゆっくりと左腕に近づけていくと。
「熱っつ!!」
自分でやってビックリした。普通に熱い。
「あれ? 違ったかな」
赤いスライムは火に強かったため、もしかしたら火に対する耐性があるのかと悠真は考えていたのだが……。
「もしかして」
悠真は体に力を入れ‶金属化″の能力を発動する。もう一度ガスバーナーを点火し黒くなった自分の腕に近づけると――
「あ! 熱くないぞ!!」
噴射する炎で、いくら腕を炙っても熱くも何ともない。予想通り『火耐性』のある金属スライムの能力だ。
「‶火″は金属の弱点だからな。弱点が無くなるのはいい」
金属化しなければ効果は出ないし、そもそもどこで役に立つのかは分からないが、悠真はご機嫌になる。
しかし分からないこともあった。
これが火に対する‶耐性″なのか、それとも‶無効″なのかということだ。
「これ、調べようがないよな」
まあ、どっちでもいいか。と悠真は考え、風呂に入ることにした。
戦う訳でも、ダンジョンに入る訳でもない自分に取っては、さして重要な問題でもない。
その日は特に何事もなく、静かに夜は深まっていった。
◇◇◇
翌日、昨日とは打って変わって快晴の中、悠真は庭の穴へと向かう。
鳴声を上げているマメゾウの頭を撫で、スプレー缶を地面に並べてから、穴の中を懐中電灯で照らす。
いつも通り金属スライムがそこにいたが、悠真は顔をしかめる。
「こいつは……」
それは青いスライムだった。表面がキラキラと光を反射する‶メタルブルー″の鮮やかな色。うねうねと体をくねらせ、臨戦態勢に入っている。
「おいおい、またかよ。二日連続じゃねーか!」
今度はどんな能力だ? と思いながら、取りあえず距離を保ちつつ冷却スプレーを噴射してみる。
だが、いくら冷気を吹きかけても‶青いスライム″が止まる気配はない。
「まさかこいつ……『冷気耐性』があるのか!?」