From Slaying Metal Slimes to Being Called the King of Black Steel e RAW novel - Chapter (27)
第27話 邂逅
「まさか……新規のダンジョンか?」
ジェームスは顔をしかめる。
「ええ、そうです。新しくできたダンジョンなら報告されていないケースもあるでしょうし、そもそも見つかってないケースもあります。そのダンジョンを攻略した者がいるのではないでしょうか?」
「ちょっと待って下さい」
声を上げたのは議長のマヤだ。
「イーサン。あなたの言うことが正しかったとしても、二百階層まで辿り着ける『
探索者
』はどこにいるのですか? 優秀な
探索者
はダンジョン以上に国や軍に管理されています。そんな彼らが動いたという報告はありませんよ」
ぴしゃりと言ったマヤの言葉には説得力があった。
探索者
の育成には莫大な時間と予算がかかる。
それはここにいる誰もが知っていた。
だが、イーサンは自分が出した結論が間違っているとは考えていない。
「おっしゃることはもっともですが、我々の知らない
探索者
がいたと考えるのが妥当でしょう。その者は新たに生まれた黒のダンジョンに入り、
公爵
を倒した。そしてさらに階層攻略を進め、深層にいた
君主
を立て続けに討伐したんです」
「そんなバカな!」
ジェームスが吐き捨てるように言う。
「確かに、これは憶測にすぎません。ですが、そうとしか考えられない。この
探索者
はすでに四体の
君主
を倒している。個人なのかグループなのかは分かりませんが、少人数でしょう。大規模な
探索者同盟
が動けば情報が洩れているはずです。彼らは世界最強と言われる『炎帝アルベルト』がいる
探索者同盟
に匹敵するか、それ以上の存在―― そう考えるのが合理的ではないでしょうか?」
議場は静まり返る。ありえない話ではあるが、反論するだけの情報もなかった。
「もし、私の仮説があっているなら――」
イーサンの言葉に、学者たちはゴクリと唾を飲み込む。
「近いうち、もっと大きな変化が起こるでしょう」
◇◇◇
四つの『色付き』スライムを倒した翌朝、悠真はうきうきした気持ちで庭に向かった。
赤、青、黄色、緑ときたなら、次は白だろう。
回復魔法の耐性ってのは意味が分からないが、とにかく変わったスライムが出ることに違いない。
そう確信して穴の近くまで行くと、マメゾウがいつも以上に吠えていた。
「すぐ退治してやるから待ってろ!」
悠真はマメゾウを下がらせると、懐中電灯で穴を照らす。白いスライムが本当にいたら不気味な感じもするが、まあ倒すのに支障はないだろう。
そんな軽い気持ちでいた悠真は、意外なものが中にいたことに驚愕する。
「ええええええええええ!?」
しばらく唖然としてしまう。穴にいたのは黒い金属スライムだった。いつもの金属スライムと同じ色、それは問題じゃない。
驚くべきはその大きさ。通常の金属スライムの五倍はある。
ずっしりと
佇
むスライムのせいで、小さな穴が余計小さく見えた。
「なんだ、この馬鹿デカイの!? 金属スライムの親玉か?」
まるで子分たちの
仇
を取りに来たように、凄い迫力で穴に居座っている。
「こ、これ倒せるかな……」
悠真は少し弱気になるが「よし!」と意を決し、自分の部屋に一旦戻る。
ありったけのボンベ缶と冷却スプレーを箱に詰め込み、もう一度庭に下りてきた。
穴の横にボンベやスプレーを並べて気合を入れる。準備は万端、ここにある物を全部使っても必ず倒す。
悠真は体に力を込め、『金属化』してから穴に入った。
目の前にいるデカイ金属スライムは、ゆっくりと近づいてくる。今まで感じたことのない
威圧感
。
冷却スプレーを両手に持ち、ダブルで冷気を噴射した。
瞬間―― なにかが動く。「え?」気づいた時にはパンパンッと音が鳴り、スプレー缶が破裂した。冷気が辺りに撒き散らされる。
「なんだ!? なにが起きた?」
地面に転がっている冷却スプレーは、なにかで切り裂かれたようにバックリと割れている。
悠真が顔を上げると、そこには二本の触手をうねうねと伸ばしたスライムがいた。
触手の先端は鋭利な刃物となり、切っ先がこちらに向けられている。
「おいおいおい! 嘘だろ!?」
想像していなかった事態が目の前で起こっていた。