From Slaying Metal Slimes to Being Called the King of Black Steel e RAW novel - Chapter (33)
第33話 自己アピール
東京の大手町。ここにダンジョン企業の一つ『GIG社』がある。
悠真は親に買ってもらった面接用のリクルートスーツに身を固め、GIG社が入るオフィスビルの前にいた。
「緊張するな……初めての経験だし」
ビルに足を踏み入れ、GIG社がある五階に向かう。建物はガラスが多用されたオシャレな造りだが、ビル自体はそれほど大きくはない。
その一角にあるGIG社も、当然大きな会社ではないのだが――
「失礼します」
入室した悠真が見たのは、溢れんばかりの学生たちだ。誰もが黒髪、そして同じようなスーツに身を包んで順番待ちをしている。
――こんなにいるのかよ!?
この会社は春(4月)と秋(10月)の二回採用のため、希望者が集中するかもしれないと思っていたが、それにしても多すぎる。
なにより驚いたのは‶探索者″の採用なのに、女性が何人もいたことだ。
「マジか……思ってたのと全然違うぞ」
悠真は面接室の前に並べられた椅子に座り、そわそわした気持ちで順番を待つ。
両隣に座る学生は、いずれも大学生のようだ。物凄く頭が良さそうに見えてくる。
いかん、いかんと頭を振り、雑念を払う。これは‶探索者″の採用面接。一般職の採用じゃないんだ。
五人まとめて部屋に呼ばれ、並べてある椅子に座る。
目の前には三人の面接官。四十代から五十代だろうか。スーツをビシッと着込み、学校の教師とは違うオーラを放つ面接官に、否応なく緊張してしまう。
「それでは始めましょう。まず一人ずつ自己紹介をして頂けますか。まずは右端の方から」
真ん中にいる面接官が仕切ってゆく。この人が一番偉い人なんだろうか? 指名された女子学生が立ち上がる。
「私はオルバート女学院の四年生、
鴻崎美好
です。重い病気で苦しんでいる人々を助けたいという御社の精神に、深く感銘を受けました。就職にあたり、国家資格である『ダンジョン救命士二級』の資格も取っています。本日はよろしくお願い致します」
そう言って女子学生は深くお辞儀をする。あまりにしっかりした自己紹介に、悠真は驚きを隠せない。
――俺もあんな感じで言わなきゃいけないのか? それに『ダンジョン救命士』ってなんだ!? そんな資格があんのか?
「ありがとうございます。では、次の方」
悠真が焦っている間に、次の学生が立ち上がる。背の高い、いかにも体育会系といった感じの大学生。
悠真は五人の真ん中に座っていたため、次は自分の番だと緊張し始める。
「自分は五橋大学四年の有峰裕次郎です。大学ではダンジョン研究学部に入っていて日々勉強してきました。またエルシード社やアイザス社が主催するダンジョン体験会に四十回ほど参加しております! よろしくお願いします!!」
五橋大学なんて高学歴じゃねーか! もっと大手の企業に行けよ。と心の中で毒づく悠真だったが、自分はなにをアピールしようかと必死に考えていた。
「ははは、元気がいいね。なるほど五橋大学のダンジョン研究学部か……あそこは有名だからね。教授の中根さんを存じ上げているが、今もご健在かな?」
「はい! 今も元気に教壇に立っております」
「そうですか、それは良かった。ありがとうございます。では次の方」
いよいよ自分の番だ。悠真はゆっくりと立ち上がり、小さく息をつく。
「わ、私は鳳高校三年、三鷹悠真です。私も人の役に立ちたいと思い、御社の求人に応募しました。特別な知識や資格はありませんが、ダンジョンには多く入ったことがありますので、その経験を活かしたいです」
声が裏返りそうになるのを必死に堪え、なんとか言い切れた。
「おー高校生の方ですか。面接に来られるのは大半が大学生か社会人の方なので、よりやる気を感じられますね。ところでダンジョンに多く入ったと言われましたが、何回ぐらい入られたんですか?」
「そ、そうですね。ひゃ、百回以上は入って魔物を倒してます!」
「おお! それは凄い」
――嘘じゃない、嘘じゃないぞ! 倒してたのは金属スライムだけど。
「では‟マナ指数”もそこそこ上がっているんじゃないですか?」
「え? あ、いや……その~、マナ指数はゼロなんですが……」
「もしかして、ダンジョンに入ったと言うのは一般に開放されている低層階のことですか?」
「え~、まあ……そうですね」
隣からクスッという笑い声が聞こえてきた。右端に座っていた女子学生が、口元を押さえて笑っている。
他の学生も、笑いを堪えているように見える。
悠真は顔から火が出るほど恥ずかしくなってきた。