From Slaying Metal Slimes to Being Called the King of Black Steel e RAW novel - Chapter (34)
第34話 挫折と決意
「う~ん、一般に開放されてるダンジョンはレジャー施設と変わらないからね。経験とは見なされないかもしれないね。うん、ありがとう。では次の方――」
試験官がなにか言っていたが、悠真はその後の記憶がほとんど無くなっていた。
フラフラと会社を出て、外に設置されているベンチに腰を下ろす。ハッキリと分かっているのは、間違いなく落ちたということだけ。
「ハァ……面接ってこんなに大変なのか……甘く考えすぎてたな」
どっと疲れが押し寄せ、気分も落ち込む。父親はこうなることが分かってたから、大学を休学にしてくれたのか? 社会の厳しさを充分知っている人だ。
就活がうまくいかないことも見越してたんだろうか。
「素直に大学行った方がいいのかも……」
弱気になる悠真だったが、フルフルと首を横に振る。
あれだけ
大見得
を切って就職したいと言ったのに、簡単にダメでしたなんてとても言えない。カッコ悪すぎる。
悠真はどこでもいいから、なんとか就職しないと。そう思うが、うまくいくイメージがまったく湧かなかった。そんな時――
「ほい!」
顔の横に突然缶コーヒーが差し出される。見ると坊ちゃん刈りで目の細い男性が立っていた。
「まー、これでも飲みーや! 自分、死にそうな顔しとるで」
「あ、ありがとうございます」
訳も分からず缶コーヒーを受け取り、お礼を言った。
「ワシもGIG社の面接受けとったんや。でも、あかんあかん、間違いなく落ちとる。そんで気落ちして帰ろうと思っとたら、ワシより落ち込んどる学生がおるやないか。面接の時見かけた学生さんやから、気になってもーてな。まあ、コーヒーでも飲んで落ち着けや」
「は、はあ……それはどうも、関西の方ですか?」
「いや、千葉出身やけど」
――えせ関西人じゃねーか! と心の中で思ったが、もはや突っ込む気力もない。
「自分、高校生か? 凄いな、その年でダンジョン系の企業に就職しよーとすんの」
「え、ええ、まあ……でも、こんなに大変とは思ってませんでした。危険な仕事だから倍率は低いのかと思ってて」
「ああ~それは昔の話やな。今はダンジョンの研究も進んで、魔物を倒す武器なんかも進歩しとる。安全性が向上しとるんなら、高額の報酬に学生たちは飛びつきよる。かく言う、ワシもその一人やけどな」
「そうですか……」
「まあ、そう落ち込むなや! ワシは
天王寺
明人
。お互い運よく就職できたら、今度は現場で会おうや。自分、名前はなんちゅうんや」
天王寺と名乗った男性はニカリと笑って見つめてきた。細い目がさらに細くなる。
変わった人だなと思いつつも、妙な親近感を覚えてしまう。
「三鷹悠真です」
「悠真か。ほんなら、また会おうや悠真。じゃあの」
天王寺はそう言って去っていった。あの人ならコミュ力だけで受かりそうな気がする。そう思いながら、悠真は立ち上がり帰ることにした。
駅に向かう道すがら、大きな書店が目に入る。
――そう言えば、ネットでしかダンジョンの情報を仕入れてないな。本格的な勉強をするなら、やっぱり本を買うべきか。
「ちょっと寄っていこう」
悠真は書店の自動ドアをくぐり、店内へと入る。それなりに大きな書店だ。
ダンジョン関連のコーナーを探すと、すぐに見つけることができた。結構なスペースを
割
いているので人気なのだろう。
「う~ん、どれどれ」
平積みしている本に目を移せば、様々なタイトルが見て取れる。
『一流
探索者
が教える魔物討伐の極意』
『かんたんダンジョン活用術。低層階の魔宝石で儲ける方法』
『魔物図鑑~世にも珍しい生物たち~』
『探索の素人が、サラリーマン探索者になるために』
『ダンジョン関連企業への就職活動。100%の内定獲得術』
『キャリアコンサルタントが教えるダンジョン企業攻略法』
「凄いな、就活本まであるのか」
何冊かを手に取り、パラパラとページをめくる。やはりネットには書かれていないような情報がびっしりと詰め込まれていた。
なにより情報の出処が明確なのがいい。ネットの記事だと本当なのか嘘なのかよく分からない場合もあるからだ。
三冊ほど買うことにした。当然、就活本が中心だ。
「次の面接では恥をかかないようにしないと」