From Slaying Metal Slimes to Being Called the King of Black Steel e RAW novel - Chapter (377)
第375話 王の鉱石
悠真は
血塗られた
鉱石
を発動し、体表に赤い血脈を流す。
鋼鉄の肌から白い湯気が立ち上り、心臓は早鐘のように脈を打つ。わずかに腰を落とし、一歩を踏み出す。
大地は爆散して粉塵が舞う。
『うおおおおおおおおおお!!』
悠真が打ち出した右のフックを【黄の王】は屈んで避け、左のストレートで打ち返してくる。悠真もギリギリでかわし、一歩下がった。
互いの攻撃が止まることはない。
凄まじい速さの攻防が繰り広げられ、ぶつかり合った衝撃音は彼方まで届く。
拳と拳、蹴りと蹴り。衝突してもどちらかが押し込まれることはなかった。
完全に互角の戦い。悠真は一旦距離を取り、構え直した。
――前は圧倒されてたのに、今は戦えてる! やっぱり『ボスヴァーリン』の身体能力が効いてるんだ。
黄金の巨人は稲妻を纏いながら突っ込んで来る。以前よりも強力な雷の魔力。
魔宝石を喰いまくって強くなったのか。
勢いそのままに、左のストレートを放ってきた。両腕でガードするも、それを弾き飛ばしてくる。さらに右の拳を引いた。
やはり格闘能力は半端じゃない!
悠真はわずかに身を屈め、全身に力を込める。体の奥底がグツグツと煮えたぎり、体温が上昇していく。
――この力で決着をつけてやる!!
解放したのは『ボスヴァーリン』が使っていた
血塗られた
鉱石
の強化版。
『
血塗られた
王の鉱石
!!』
全身の鎧に、赤紫のラインが走る。マグマのようにギラギラと輝き、恐ろしいほどの魔力を放つ。
悠真が一歩踏み出すと大地が割れ、広範囲に亀裂が入る。
なにかを感じたのか、【黄の王】は一歩下がった。瞬間――悠真は地面を蹴って相手の
懐
に飛び込む。
黄金の巨人は腕をクロスしてガードするが、悠真には関係なかった。
『うらああ!!』
放った右ストレートは強力な『雷の障壁』を打ち破り、相手の腕に炸裂した。尋常ではない衝撃と轟音が大気を引き裂く。
黄金の巨人は後ろに吹っ飛ばされ、そびえ立つラシュモア山の山肌に激突した。
爆発したように土砂が舞い上がり、山の四分の一が崩れ落ちる。山の上には四人の大統領の巨大彫刻があったが、衝撃によって全て破壊された。
悠真は間髪入れず追撃をかける。
――この”
血塗られた
王の鉱石
“の能力は五分ほどしかもたない。時間内に【黄の王】を倒さなければ俺が負ける!
悠真が山に近づくと、崩壊した土砂が爆発して吹っ飛んだ。中から【黄の王】が飛び出し、こちらに向かってくる。
それでも悠真が怯むことはない。左腕を引いて迎撃態勢に入る。
黄金の巨人が放つ右ストレートに対し、カウンターの左ストレートを叩き込む。
相手の攻撃は当たらず、悠真の拳だけがまともに入った。
格闘能力は悠真が数段上回っている。
顔面にめり込んだ拳によって、黄金の巨人は弾けるように飛ばされる。回転しながら地面に叩きつけられ、ゴロゴロと転がっていく。
悠真は必死に立ち上がろうとする【黄の王】を見て確信する。
――かなりのダメージを負ってる。やっぱり”
血塗られた
王の鉱石
“なら、アイツを圧倒できるんだ!
悠真は一気に勝負を仕掛ける。猛然と走り出し、立とうとしている【黄の王】の横っ腹を蹴り上げる。
途轍もない威力の蹴り。黄金の巨人は五十メートル以上舞い上がった。
最高到達点まで行くと、そのまま自由落下してくる。
悠真は落下地点に入った。落ちてきた瞬間にぶちのめしてやる! そう考えていたが、【黄の王】は上空でバチバチと発光し始めた。眩い光に目を細める。
突如として空に現れたのは、巨大な【黄金竜】だった。
口をガバリと開き、プラズマの閃光を放ってくる。
閃光は大地に直撃し、辺りを一瞬で消滅させた。いかなる生物も
屠
る、雷撃系最強の攻撃。
だが、そこに悠真の姿はなかった。
巨大な竜が辺りを見回すと、
空
を
蹴
り
な
が
ら
向かってくる存在に気づく。
鋼鉄の巨人が
風
の
塊
を蹴り、空を駆け上っているのだ。その速度に黄金の竜は反応できない。
間近に迫った悠真は両手を組み合わせ、高々と振り上げる。
そのままハンマーのように振り下ろし、黄金竜の体に叩きつけた。
竜は飛行態勢を維持できず、地面に向かって垂直落下する。
大地に衝突した刹那――地面が爆散し地響きが起きた。
悠真も地面に着地し、顔を上げる。
モクモクと煙が噴き上がる中、竜から姿を変えた黄金の巨人が出てきた。途轍もない魔力をたぎらせている。
ダメージはあるはずだが、やる気は満々のようだ。
黄金の巨人はゆっくり足を速め、徐々に加速してこちらに向かってきた。
悠真も呼応するように走り出す。
二体の巨人が大平原で激突する。【黄の王】は雷足歩法を使って電光石火の攻撃を仕掛けてきた。
だが、悠真はそれを遙かに上回る速度で対応する。
相手が繰り出した拳を避け、こちらも正拳放つ。モロに顔面に喰らった【黄の王】は
踏鞴
を踏んであとずさる。
悠真はさらに踏み込み、両拳の連打を放った。
黄金の巨人の顔や胸、腹や腕に剛拳がめり込んでいく。
なんとか防ごうとする【黄の王】だったが、悠真の回し蹴りが首に入ると耐えることができなかった。
派手に転倒し、地面に体を打ちつける。
すぐに起き上がろうとするものの、悠真がそれを許さない。
あっと言う間に間合いを詰め、左の拳を振り下ろす。頭部にまともに入り【黄の王】は再び地面に叩きつけられた。
悠真は右足を上げ、横たわる相手の胸を踏みつける。何度も何度も踏めば地面は割れ、黄金の巨人は地中に埋まっていく。
悠真は相手に反撃する隙など与えない。
黄金の巨人の腕を取り、地中から引き抜いて大きく振りかぶる。それは片腕で行う一本背負い。相手を振り回し、そのまま地面に叩きつける。
大地が粉々に割れ、粉塵が舞う。
悠真はもう一度【黄の王】を持ち上げ、地面に向かって叩きつけた。
また大地が割れ、爆発したように地面が吹き飛ぶ。それを何度も繰り返した。
【黄の王】は反撃できない。それほどまでに、圧倒的な力の差があったのだ。
七度地面に叩きつけた【黄の王】を、悠真は上に放り投げた。落下してくる相手の腹に、前蹴りを叩き込む。
黄の王の体はくの字に折れ、数百メートル吹っ飛び山肌に激突した。