From Slaying Metal Slimes to Being Called the King of Black Steel e RAW novel - Chapter (380)
第378話 特大の魔宝石
巨人化を解いた悠真は、金属鎧の姿のまま荒廃した大地を歩く。
立ち止まった悠真の足元に、キラキラと光る石が落ちていた。ダイヤモンドのように美しい魔宝石だ。
「凄い大きさだな……ここまでデカいのは初めて見た」
悠真は屈んで魔宝石を拾い上げ、マジマジと見つめる。眩い輝きを放つ宝石だが、恐ろしいほどの魔力を帯びていた。
他の【王】の魔宝石と比べても、大きさ、魔力ともに次元が違う。
「やっぱり、【黄の王】は別格だったってことだよな」
全てを出し尽くさないと勝てない相手だった。間違いなく、今まで戦った魔物の中では最強と呼べるだろう。
悠真がそんなことを考えていた時、後ろから声が聞こえてきた。
「お~い、悠真~!」
明人の声だ。振り返ると、ゲイ・ボルグに乗って飛んでくる明人が見えた。
平原を駆けてくるルイもいる。二人とも無事で良かった。激しい戦いだっただけに、巻き込まれてもおかしくはない。
そして二人が無事ということは、アルベルトも……。
悠真が視線を移すと、明人の後ろから炎を纏ったアルベルトが飛んでくる。
三人は悠真の元へと集まった。
「やったな悠真! とうとう【黄の王】を倒せたやないか!」
明人が歩み寄り、悠真の肩をバンバンと叩く。しかし悠真は金属化していたため、明人は「痛っ!」と言って手を振っていた。
「それ、【黄の王】の魔宝石?」
ルイに問われ、悠真は頷く。
「ああ、もの凄い魔力を帯びてる。これを食えば相当の”雷魔法”が使えるんじゃないかな」
悠真が答えると、ルイの後ろにいたアルベルトが口を開く。
「凄いね。その魔宝石の”マナ”は20万を超えてるだろう。そんな魔鉱石でも体に取り込めるのかい?」
悠真は持っていた魔宝石を見つめる。
「たぶん、大丈夫じゃないかな。俺の”無色のマナ”はけっこう残ってたはずだから」
「せやったら食ってみい! お前が使えへん魔法は『雷』だけやろ? これで全魔法が使えるようになるんや、さっさと食え、食え」
強引な明人に
促
される。ルイとアルベルトの顔を見れば、明人と同じように微笑んでいた。悠真は再び魔宝石に視線を落とす。
「じゃあ……食べてみるよ」
悠真はキバの生えた口を大きく開け、光り輝く魔宝石を飲み込む。ゴクリと食道を通り、胃の中に宝石が入った。
悠真は動きを止め、ジッと反応を待つ。
すぐにバチバチと感電するような衝撃が上がってくる。悠真は腹を押さえて身を屈めた。これは今までに感じたことのない感覚だ。
各色の【王】よりも、黒のダンジョンにいた【ボスヴァーリン】の魔鉱石よりも腹に熱を感じる。
「うう……」
悠真が苦しんでいると、ルイが青ざめた顔で「大丈夫?」と聞いてくる。悠真は答えることができなかった。
ルイや明人、アルベルトの三人は心配そうに見つめてくる。
悠真は膝をつきそうになったが、一分ほどすると痛みは収まってきた。
「ふぅ~なんとかなったみたいだ」
悠真は背筋を伸ばし、腹をスリスリと撫でる。体から力が溢れてくるようだ。
「取り込めたっちゅうことやな。さっそく使ってみたらどうや? ”雷魔法”!」
「そう……だな。使ってみようか」
明人に
促
され、悠真は意識を集中する。ルイたち三人は念のため後ろに下がった。
初めて使う”雷魔法”だ。大丈夫だと思うが、周囲を巻き込む可能性もある。
三人との距離をとり、悠真はふぅーと息を吐いた。
体にグッと力を入れ、全身に魔力を流す。黒い鎧に金色の紋様が浮かび上がってきた。周囲にバチバチとプラズマが発生し、地面に転がる石が砕けていく。
「おおおおおおおおおおお!!」
細いプラズマは太い稲妻へと変わり、空に向かって昇っていく。稲妻は
幾重
にも重なり、光の柱となった。
悠真は放出される莫大な”雷の魔力”に驚く。
使っているだけなのに、体がピリピリと痛む。あまりに魔力が強すぎるため、感電してるのかもしれない。
――こんな力……ちゃんと使いこなせるのか?
不安になる悠真だが、悠真以上に戸惑っていたのはルイたちだった。
かなり距離を取っていたのに、途轍もない魔力の放出を受けてあとずさる。
「あれが【黄の王】の魔力……えげつなさすぎるで!」
目をすがめながらつぶやく明人にルイも同意する。
「確かに、あそこまで強いと使いこなすのが難しいかもしれない。それでも異次元の”雷魔法”を手に入れたことに変わりないよ」
喜ぶ二人の後ろで、アルベルトは苦笑いを浮かべていた。
「やれやれ、とんでもない魔力だね」
アルベルトは逡巡する。軍の上層部から三鷹を押さえ込めと言われていたが、とてもそんなレベルではない。
もはや魔物を遙かに超える存在だろう。
そんな三人が見据える先にいた悠真は魔力を解き、静かに息を吐く。
周囲の地面は蒸発し、半径二十メートルほどのクレーターが生まれていた。
悠真は握り込んだ自分の右手を見る。もう誰にも負けないような、そんな自信と力が溢れてくる。
悠真は手を開き、顔を上げてルイたちの元へと歩いていった。
◇◇◇
ミアたち『プロメテウス』のメンバーは、急ぎワイオミング州にあるフランシス.Eワーレン空軍基地に集まっていた。
アルベルトがこの基地に来るとの情報を受けたからだ。
【黄の王】が倒されたことは間違いない。
ミアはアルベルトが無事かどうかだけが、心配で仕方なかった。
空軍基地の施設で待っていたミアは、そわそわした気持で待合室を歩き回る。
待合室の中にいるのはミアだけではない。プロメテウスのメンバーとしてアルベルトと供に戦ってきた歴戦の
探索者
たちが顔を
揃
えている。
誰もが【黄の王】が倒れたことを喜ぶと同時に、その場で戦えなかったことを残念に思っていた。
そんな彼らの元にアルベルトが到着したとの一報が入る。
ミアたちはすぐに部屋を出て、アルベルトのいる司令室へと向かう。
途中、窓からは滑走路にある航空機が見えた。アルベルトが使っている『ドルニエ328』が停まっている。
ミアの足がより速くなった。
司令室の扉を乱暴に開けたミアは、こちらを振り向くアルベルトに目を留める。
怪我もなく、無事に帰って来たようだ。アルベルトに会えたことに安堵したミアだったが、彼女を始め、プロメテウスのメンバーは別のことに気を取られた。
アルベルトの隣にいた三鷹悠真。
彼が放っていたのは、恐怖を感じるほど強い異常な魔力だった。